北海道でのクラスター対策の効果
from covid-19
北海道でのクラスター対策の効果
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00011.html
2020/3/2
http://minato.sip21c.org/2019-nCoV-im3r.html#OVERDISPERSIONCONFIRMED
2020/3/2
厚労省のサイトに,「新型コロナウイルス感染症対策の見解」と,新型コロナ いま、広げないためにというポスターが掲載されている。前者は北海道の特徴や必要な対策について突っ込んだ提言をしている。北海道を地域クラスターとして認識し,できる限り多くの人に,「軽い風邪症状(のどの痛みだけ、咳だけ、発熱だけなど)でも外出を控えること」と「規模の大小に関わらず、風通しの悪い空間で人と人が至近距離で会話する場所やイベントにできるだけ行かないこと(例えば、ライブハウス、カラオケボックス、クラブ、立食パーティー、自宅での大人数での飲み会など)」を呼びかけ,同時に「症状のない方にとって、屋外での活動や、人との接触が少ない活動をすること(例えば、散歩、ジョギング、買い物、美術鑑賞など)、手を伸ばして相手に届かない程度の距離をとって会話をすることなどは、感染のリスクが低い活動」とも書いている。最後に,全国の10代から30代に向けて(念のため書いておくと,症状があまり出なくて感染を広げる「若年層」というのはこの世代のことで,小学生ではないので,休校要請とは何の関係もない。その点,誤解やデマを広げないように注意されたい),人が集まる風通しの悪い場所を避けることも求めている。ポスターはリスコミの手段の1つとして作られたのだと思われる。
http://minato.sip21c.org/2019-nCoV-im3r.html#PREVENTION
2020/3/3
何だか軽く受け止められているが,「主な参加者が10代から30代である」(←注:この点は専門家会議の発表に基づいた推測で,詳細は論文待ち)「風通しの悪い空間」「人と人が至近距離で会話する場所」というクラスターに共通する特徴を見つけ,それを避けるように,と呼びかけることの意味は,クラスター発生を予防することにある。人々がこれを守ってくれないと効果は出ないし,守ってくれても,潜伏期間があるので,新規感染者数の減少という形で効果が見えるまでには1~2週間かかる。もちろん,クラスター発生を見つけて積極的疫学調査で接触者追跡し,感染者を隔離していくことも,感染拡大防止のためには重要だし,それも必死になされている。しかし,クラスター対策班の真骨頂は,クラスターに共通する特徴を見つけることにあったのだ。クラスターの連鎖でR0が高まるからクラスター対策すればR0<1にできるかも,という可能性は2月15日に発表された論文で示されていたし,パンデミック予測をしたProf. Lipsitchもわかっていたが,それでもパンデミックを防ぐのは難しいだろうとしていたのは,クラスターに共通する特徴を見つけてクラスター発生を予防するという発想がなかったからだと思う。ぼくもこの発表があるまで気づかなかったが,最初からそこまで読んでやっていたなら,前から天才だとは思っていたが,西浦さんは本当に凄い。メディアに数字が入っていないグラフだけ紹介されている研究は,それを考えたシミュレーションだと思う。NEJMとかJAMAとかLancetに投稿中なのではないだろうか。JCMもIFが5以上はあるが,あの結果が出たなら,ぼくだってトップジャーナルに投稿したくなるし,海外の多くの理論疫学研究者が無視できない成果となるためには,トップジャーナルに載せなくてはいけない。たぶん欧米もこのやり方に追従することを検討し始めるはずだし,本当に2週間後に北海道のエピデミックカーブが終息に向かっていたら,COVID-19に対して大きな希望となる。
本当に2週間後に北海道のエピデミックカーブが終息に向かっていたら,COVID-19に対して大きな希望となる
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00011.html
https://gyazo.com/e5795e8e0bb072d88d32a67b19e774a2
しかし、現時点で、人々が急速な感染拡大を抑制するために適切な行動へ切り替えれば、新規の感染者数は急速に減少していくと見込まれます(赤い点線)。これがうまくいけば、今後、患者数が急激に増えることはありません(青い点線)。ただし、潜伏期間があるため、患者数の減少が確認できるまでにはタイムラグがありますので、人々の行動が大きく変わってから2週間ほど経過しないと、その効果を評価することはできません。
道内の最新感染動向 | 北海道 新型コロナウイルスまとめサイト https://stopcovid19.hokkaido.dev/
https://gyazo.com/295b4b94b241c433064f4a19c7b3a986
http://minato.sip21c.org/2019-nCoV-im3r.html#CLUSTERPAPER
2020/3/9
日本でも感染者1人から発生する二次感染者数のばらつきが大きいことは,3月2日の時点でNHKニュースにもなっていたし,厚労省のQ&A(3月2日にはQ12だったが,今はQ14になっている)にも載っていたが,プレプリントサーバにはNishiura H et al. "Closed environments facilitate secondary transmission of coronavirus disease 2019 (COVID-19)."(2020年3月3日)としてアップロードされていた。著者はクラスター対策班のメンバーとなっている。伝播リスクが高い状況を同定するため,2020年2月26日までの11のクラスターの110症例を調べている(東京の4つのクラスター,愛知,福岡,北海道,石川,神奈川,和歌山からそれぞれ1つのクラスターを含んでいると書かれているが,残り1つはどこなんだろうか? 数え間違い? 書き忘れ?)。すべてのクラスターが室内環境(フィットネスジム,屋形船,病院,雪まつりの換気の悪いテントの食事スペースを含む)での濃厚接触と関連していたというのはNHKでの発表の通り。110症例のうち二次感染者を生み出していたのは27例(24.6%)しかいなかったというのもNHKでの発表の通り。この二次感染者数分布は,平均0.6,分散2.5で,閉鎖環境にいた感染者は,オープンエアの環境にいた感染者に比べて,18.7倍(95%CI: 6.0, 57.9)のオッズを示したこと,この分布の95パーセンタイルを超える(この場合,3人以上に感染させる)のをスーパースプレッディングイベントとすると,そういうイベント絡みの感染者は11人いて(=10%,というのは95パーセンタイルと矛盾するような気もするが,2人以上の感染者が絡むイベントがあるということだろう),そのうち9人は閉鎖環境で感染を発生させていたことから,閉鎖環境でのスーパースプレッディングイベントのオッズ比は29.8(95%CI: 5.8, 153.4)であったというのは顕著な結果だ(フィクションだが,川端裕人『エピデミック』の終盤で,フィールド疫学者島袋ケイトが真の感染源に気づいた場面で出てきたオッズ比より高い)。閉鎖環境がスーパースプレッディングイベントを起こすのは,フランスのスキーバンガローや韓国の教会や病院関係のクラスターを考えればありそうなことで,Disperson vs. Controlを考えれば,閉鎖環境での不要な濃厚接触を減らすことで,日本におけるRを1未満にするのに十分であると期待する,という主旨になっている。論文の主旨が,概ね3月2日から3日にメモした読み通りで良かった。クロ現プラスではオッズ比11というパネルが出ていたが,あれはデータが違うのだろうか。なお,たぶん,クラスター対策でこれくらい減るというシミュレーションの論文を別途投稿していると思うのだが,それはまだ見つからない
専門家会議についての報道を見たところ,3月19日までに北海道のクラスター対策がうまくいったかどうか評価するという見通しが示されたようだ。ただ,クラスター発生予防はそこで終わりではなく,ワクチンか治療薬が見つかるか,国内終息まではずっとやらなくてはいけないはず。テレビの報道は19日までは,みたいな伝え方をしているのが怖い。尾身先生が説明された,「換気が悪い」「多くの人が密集」「近距離で会話や発声あり」という条件は,クラスターが発生しやすい条件なので,この3条件が重なる場を避けることは,少なくとも,その地域の新規感染者がゼロの状態が2週間続くまでは必要になるだろう(新規感染者が1人検出されることは,おそらくその10倍は感染者がいることを意味するので)。
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の見解」 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000606000.pdf
2020/3/9
2. 現在の国内の感染状況
現時点において、感染者の数は増加傾向にあります。また、一定条件を満たす場所において、一人の感染者が複数人に感染させた事例が、全国各地で相次いで報告されています。
しかし、全体で見れば、これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約80%の方は、他の人に感染させていません。また、実効再生産数(感染症の流行が進行中の集団のある時点における、1人の感染者から二次感染させた平均の数)は日によって変動はあるものの概ね1程度で推移しています。感染者や濃厚接触者の方々、地方公共団体や保健所の皆様、厚生労働省対策本部クラスター対策班の連携と多大な努力が実り、現時点までは、クラスター(集団)の発生を比較的早期に発見できている事例も出てきています。これは、急激なペースで感染者が増加している諸外国と比べて、感染者数の増加のスピードを抑えることにつながっています。
2月 24 日に公表した専門家会議の見解において、我々は、「これから1-2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となります」と述べましたが、以上の状況を踏まえると、本日時点での日本の状況は、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ちこたえているのではないかと考えます。
しかしながら、感染者数は、一時的な増減こそあれ、当面、増加傾向が続くと予想されます。また、後述するように、感染の状況を把握するためには、約2週間程度のタイムラグを生じ、すべての感染状況が見えているわけではないので、依然として警戒を緩めることはできません。専門家会議としては、現在、北海道で行われている対策の十分な分析が完了し、さらに他の地域の状況の確認などをしたうえで、全国で行われている対策も含め、我々の考えを政府にお伝えしたいと考えています。
「3つの条件の重なりを避けて」 専門家会議が見解【全文】|特設サイト 新型コロナウイルス|NHK NEWS WEB https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/view/
「新型コロナウイルス感染症対策の見解」
「新型コロナウイルス感染症のクラスター(集団)発生のリスクが高い日常生活における場面についての考え方」