世界史のなかの産業革命
世界史のなかの産業革命
なぜ産業革命はイギリスで起きたのか。当時のイギリスの制度はどちらかといえば近代的であり、イギリスの文化は進取の気性を奨励するものであった。しかしながら、このような制度・文化面では、イギリスがとくに際立っていたわけではない。世界の他の地域や国々とイギリスとの大きな違いは、イギリスにおける生産投入要素価格の構造が独特であったということである。イギリスでは、比較的賃金が高く、燃料は安価であった。この価格構造は、17世紀と18世紀前半に築き上げられた貿易帝国から結果的に生み出されたものである。イギリスは、インドとカリブ海、将来合衆国となる北米の東海岸に重要な植民地を獲得した。これらの植民地は豊かで、イギリス製造業のための広大な商品市場となり、イギリスの上流階級を豊かにするに十分な巨額の利潤を生んだ。植民地との貿易の活性化が、イギリスの港湾都市における高賃金、急速な都市化、農村工業の拡大、農業革命、そして新たな都市に燃料を供給するための石炭業の発達を促した。
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中国やインド、大陸ヨーロッパではなく、イギリスで産業革命が起こり得たのはなぜか? 食事、健康などの生活水準をもとに、世界史的な視野でその起源を捉えなおし、エネルギーなどの自然環境が果たした役割も視野に、産業革命の新たな全体像を示した決定版。
目次
日本語版への序
謝 辞
第1章 前工業化経済と産業革命
産業革命を説明する
文化と経済 —— 原因それとも結果か
消費主義と勤勉
結婚と子ども
近代文化の成立
産業革命への経済的アプローチ
ヨーロッパ経済の変容 1500~1750年
近世の拡大から産業革命へ
第Ⅰ部 工業化以前の経済
第2章 前工業化イギリスの高賃金経済
賃金と価格
イギリスにおける賃金の収斂
熟練労働者
高賃金経済は生活の質にどのような意味を持つのか
高賃金と経済成長
第3章 農業革命
マクロの視点 —— 人々はどのように食料を供給されたのか
農業労働者の1人当たり産出量
なぜ産出量と生産性は上昇したのか
囲い込みは産出量と生産性を上昇させたのか
開放耕地農民はどのように農業の近代化を達成したのか
農民たちはなぜ自分たちの農法を改良したのか
結 論
第4章 低価格エネルギー経済
ロンドンの成長と石炭取引の興隆
家庭用石炭暖房の方法
北東部炭鉱地帯以外の石炭生産の増加
世界を視野に入れたイギリスのエネルギー
オランダの都市化と 「木材危機」
結 論
第5章 なぜイギリスが成功したのか
進歩と貧困のモデル
19世紀への多様な経路
イギリスが成功した要因
含意するものとさらなる疑問
補遺 近世経済の方程式
第Ⅱ部 産業革命
第6章 なぜ産業革命はイギリスで起きたのか
イギリス —— 高賃金で安価なエネルギー経済
なぜイギリスの独特な賃金・価格構造が問題となるのか —— 労働を資本で代替する
イギリスと中国にモデルを応用する
イギリスとフランスにモデルを応用する —— ピン工場の例
第2段階 —— ミクロレベルの発明の流れ
3つのマクロレベルの発明の歴史
補 遺
第7章 蒸気機関
第1段階 —— ニューコメンのマクロレベルの発明
第2段階 —— 1世紀半にわたる改良
蒸気機関の普及
第8章 綿 業
マクロレベルの技術革新、第1段階 —— ジェニー紡績機
リチャード・アークライトの発明
なぜフランスではないのか
なぜフランスではなくてイギリスで紡績機械が発明されたのか
第2段階 —— 紡績機械の改良
結 果
補遺1 ジェニー紡績機の収益率
補遺2 アークライト工場の収益率
第9章 コークス溶鉱法
マクロレベルの発明、第1段階 —— エイブラハム・ダービー1世の業績
マクロレベルの発明、第2段階 —— コークス溶鉱鉄の競争力を高める発明、
1720~55年
1755~1850年までのマクロレベルの発明への一層の改良
ヨーロッパ大陸におけるコークス溶鉱法の導入
アメリカにおけるコークス溶鉱法の導入
コークス溶鉱法はなぜイギリスで発明されたのか
重要な発明家に関する統計分析
産業的啓蒙主義と実験
経済的、社会的発展の水準
産業革命の原因としての文化
補遺 重要な発明家リスト
参考文献
訳者解説
図表一覧
索 引