そのトレイルの名は「エクセキューショナー(死刑執行人)」
from 2022/07
そのトレイルの名は「エクセキューショナー(死刑執行人)」
ノースショア ベティ | クリーネストライン | パタゴニア | Patagonia |
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73歳になるベティがここをホームトレイルと呼ぶようになって30年近くになる。彼女がはじめてマウンテンバイクを買ったのは1994年、45歳のとき。オールド・ロブというあだ名しか知らない友人が、マウント・フロームにある「セブンス・シークレット」というトレイルに連れていってくれたそうだ。そして2回目のライドに選んだのは、「エクセキューショナー(死刑執行人)」。その名のとおり、下りも急勾配で木の根っこだらけの、テクニカルなフォールラインである。この2本のトレイルはいずれも上級者コースで、いまどきの高価なフルサスペンションのバイクに乗っていたとしても、大半のライダーは、とくに「エクセキューショナー」に怖気づくだろう。
それを思い出す彼女の顔がぱっと明るくなる。「すぐにハマったのよ」
ベティがマウンテンバイクの世界に入ったというのは、どう見ても型破りであるのは間違いない。50歳を数年後に控え、国際線の客室乗務員として毎週末海外に飛びながら、6歳の息子を育てるシングルマザー。それに加えて、マウンテンバイクをはじめたのが1990年代のバンクーバーのザ・ノースショアであるとは……次元の異なる強靭さである。
ノース・バンクーバーの上にそびえるマウント・フローム、マウント・シーモア、サイプレス・マウンテンの、霧に覆われた斜面に広がる「ザ・ショア」は、マウンテンバイクにとっては、ロッククライミングにとってのヨセミテ、サーフィンにとってのオアフと同等の存在である。ここ以上にこのスポーツに影響を与え、それを定義する場所はない。そして「ドーン・ウォール」や「パイプライン」がそうであるように、肝っ玉の小さい人間向けの場所ではない。
「マウンテンバイク発祥の地はカリフォルニアだって言う人もいるけど」と、地元のトレイルビルダーであるトッド・フィアンダーは言う。「マウンテンバイクの発祥はザ・ノースショアだ」