いまや漫画は倫理である
いまや漫画は倫理である
「君の行為の格律が君の意志を通じて普遍的な自然法則になるかのように、行為せよ。」カント哲学の導入にして近代倫理の基本書。人間の道徳性や善悪、正義と意志、義務と自由、人格と尊厳、共同体と規則などを考える上で必須の手引きです。訳語を精査し、初学者の読解から学術引用までを考慮した新訳。本書の役割、そしてカント生誕300年の現在に新訳を刊行する意義について、訳者の大橋容一郎氏よりウェブマガジンにご寄稿いただきました。 いまや漫画は倫理である
そして、このように書かれた「方法論」の4年後に、いわば続編として発表されたのが、『道徳形而上学の基礎づけ』という小著だった。 そこでは、「感性界」とは別の「知性界」という世界があると見なされていること、人間理性がその世界に本気で入っていけば、生きることのだいじな指針を見つけられることなどが書かれている。
現代でいうなら、現実世界ではないアニメやゲームやポップス音楽の世界に、けっして軽視できないだいじな人生の指針が見られるということだろう。
現実の世界では軍事権力や政治道徳の退廃が横行している。
その一方で今年、宮崎駿のアニメ映画『君たちはどう生きるか』はアカデミー賞を受賞した。85年前に書かれた、コペル君を主人公とした吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』、も漫画になった。
いつの頃からか人は、道徳的に許せないことばかりが見られる現実世界よりも、漫画やアニメやポップスの歌詞のなかに、ほんとうの「青い鳥」、つまりは「あるべき世界」や「あってほしい世界」を見るようになったのではないか。いまや漫画は倫理である。
そういえば『純粋理性批判』でさえ日本では漫画になり、フランス語訳の版も出ているのだった。