「文化の変容」と「生物の進化」は、ほぼ同じスピードで起きている
「文化の変容」と「生物の進化」は、ほぼ同じスピードで起きている
目まぐるしく変化しているように見える現代のカルチャーだが、変容のスピードが実は生物の進化と同じくらいゆっくりであることを示す新たな論文が、英国の研究チームによって発表された。どうやら文化が変容していくメカニズムは、生物界における自然淘汰と似ているようなのだ。
チームは進化生物学者が考案した指標を用いて、文化的な変容の速度を生物の進化の速度と比較した。具体的には、ポップソングや英文学、学術論文、クルマのデザインといった文化的な変容の速さと、ガラパゴス諸島に生息するフィンチ(小型の鳥)、英国に生息する2種のガやカタツムリといった生物の進化との比較だ。
結果は驚くべきものだった。生物の進化と文化の変容は、ほぼ同じ速さで起こっていたのだ。
「ここから、ヒトの心理について深い洞察が得られます」と、インペリアル・カレッジ・ロンドンの進化生物学者、アルマン・マリー・ルロワは言う。「ヒトの選択は驚くほど保守的で、わたしたちの好みは非常にゆっくりと変化します」 文化は動植物と同じように進化するという考えは、以前からあった。しかし、先行研究のほとんどが注目していたのは、石器や矢じりといった考古学的遺物や言語の進化だった。
一方、ルロワのチームは現代文化の産物がどんなペースで変化するのかに注目し、現代と過去の文明との間の変化を解明しようと試みた。
ピーター・レイモンド・グラント(Peter Raymond Grant、1936年10月26日 - )とバーバラ・ローズマリー・グラント(Barbara Rosemary Grant、1936年10月8日 - )夫妻はイギリス人のプリンストン大学の進化生物学者である。彼らは共にガラパゴス諸島の大ダフネ島でのダーウィンフィンチ類に関する研究を行っている。彼らは共同研究者や学生と共に、1973年から毎年6ヶ月間ダフネ島に滞在し、捕まえたフィンチにタグを付け、血液サンプルを採取し開放するという手法で研究を続けている
Armand Marie Leroi
インペリアル・カレッジ・ロンドン、進化発生生物学教授
ヒトの変異