経済のマイナス成長と自殺者数の増加〜COVID-19のインパクト〜
サマリー
始めに、COVID-19による世界経済への打撃シナリオをみていく。
そして、世界恐慌のケースを参考に経済的影響の解像度を高める。
最後に、社会的問題である自殺に対しての影響を示唆する。
コロナ後の経済シナリオ
COVID-19がもたらした経済的な打撃からの復旧で大事なのは1.ウイルスへの対応の迅速さと2.経済回復のための効果抜群な介入である。
一番濃い青のA1に落ち着くのではないか?と多くの人が予測している。
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WW2後くらいの打撃がありえる。世界恐慌とまではいかない。
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多くの人が予想しているシナリオにおけるGDP推移
落ち込みは22年3Qくらいから元に戻り始める予想。(もちろん地域によるが)
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次に世界恐慌時に起こったことを見ていく。
直近のバッドケースを見ておきたくて、例として採用した。
ちなみに、コロナでの経済的な打撃は世界恐慌ほどにはならない予測が多い。
世界恐慌の「後」
世界恐慌を米国の事例に振り返ってみる。
指標となる数値
国民総生産……ピーク時から半減(1929年:100⇒1933年:53.6)
生産指数……ピーク時の半減(1929年:100⇒1932年:54)
卸売物価指数……3割の下落(1929年:100⇒1933年:69.2)
失業者数……最大1283万人(1933年)
失業率……最大24.9%(1933年)
金融機関……銀行倒産件数6000行
株価……ピーク時から89.2%の下落
発生したこと
失業者が街にあふれた。単純に言えば労働者の4人に1人が失業している。恐慌では賃金の落ち込みも深刻になる。平均賃金は3割超の減少。消費者物価も2~3割下落、デフレが深刻に。
言葉の定義
景気後退(Recession)……第2四半期連続でのGDP成長率がマイナス
不況(Depression)……年10%前後のマイナス成長、あるいは3年以上のマイナス成長
恐慌(CrisisまたはPanic)……不況の状況に金融危機が伴い、金融機関の貸し渋りと貸し剥がしなど「信用収縮」「信用崩壊」が伴う
ルーズベルト大統領が、有名な「ニューディール政策」をスタートさせ、貧困にあえぐ国民を救うための「連邦緊急救済局(FERA)」を設立した。1930年代の大恐慌下での最初の救済機関であり、最低限の生活費を給付するような機関だ。『世界大恐慌――1929年に何がおこったか』(秋元英一著、講談社選書メチエ)によると、1933年10月に行われた「救済状況調査」によると、300万家族、1250万人、アメリカ全人口の10%がFERAに依存せざるをえなかった、と記録されている。
スープキッチン(貧困者に対して食料やスープを分け与える活動のこと)の近くに居留地を求めて集中した。これらの居留地はしばしば空き地に作られ、急ごしらえの掘っ立て小屋やテントが立ち並んだ。
その他参考になりそうな記事
不況と自殺率
失業率と自殺率の関係
日本では, 失業率と自殺率との間に強い相関関係がある。
https://gyazo.com/f73322a714c087ab2cf8f02223a09013
Chen, Choi and Sawada (2009) の回帰係数によると, 日本における高失業率と高自殺率の正の相関関係については, 男性について, 完全失業率の 1%ポイントの上昇が 10 万人当たり約25 人の自殺者数増加と統計的に有意な相関関係を持っている。 女性の場合には, この関係は統計的に有意ではない。
自殺は人々の合理的判断の結果として選択される行動であると考え, 個人の生涯効用の期待値が各個人の閾値を下回ったとき, 個人は自殺するとしている。(Hamermesh and Soss (1974) )
失業率が高くなると自殺の増加要因となることが予想される。 なぜならば, 失業は, 今日や明日の生活が短期的に苦しいばかりか, 将来の収入見通しが立たないという所得不確実性の増大や生涯所得の低下をも意味するからである (Suzuki 2008)。
自殺の特徴・傾向
日本の自殺の特徴は三つある。 第一に, 1997 年から 98 年にかけての 「急増」, 第二に, 98 年から 10 年以上にわたり年間の自殺者数が 3 万人を超えるという 「恒常性」, 第三に, 自殺者の時間を通じた 「若年化」である (Chen et al. 2009a)。
自殺に至る直接の原因で最も多いのがうつ病であることが知られている
うつ病の背後に, 失業や負債, 生活苦, 職場環境といった社会経済的背景・構造的問題が潜んでいる可能性
10 年間毎日およそ 90 人の人々が自殺
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女性の自殺の背景
女性の就業率と自殺率には正の相関関係があり, 特に高齢男性と若年女性 (25~44 歳) においてその傾向が強く見られる。
女性の就業率と自殺率の正の相関関係は, 配偶者の失業によってもたらされた経済的困窮や, あるいは母子世帯の貧困と自殺率との相関関係を捉えている可能性がある。
自殺による経済的な損失
自殺死亡時以降にその人が生きていたならば得られたはずの賃金総額を推計することで, 経済的損失を推計している。 この推計結果によると, 1998 年から 2007 年までの 10 年間で発生した 20 歳から65 歳の人々の自殺死亡による逸失利益は, 累計で約 22 兆円にも上る。
当然、経済的な損失のみならず、残された遺族などの心理ストレスを加味すると上記損失は下限である。
その他参考になりそうな論文
何をすべきか??
要は、迅速に経済を立ち直らせないと(または悪化させないようにしないと)、たくさん人が死んじゃう。
感染拡大を防止(または医療体制の確保)に一定の目処が立ったら、迅速に∧効果的に経済活動を再開していかないと。