株式会社
失敗しても死ななくて良い
株式会社の世界史―「病理」と「戦争」の500年 - 経済・行動経済学
「お金が大好きで、お金を儲ける ことにしか興味がなく、無駄な 出費は一切しない。利益にならない 友人とは付き合わず、責任は極力 他人に押し付ける。人には厳しく、 相手を押しのけてでも自分を主張する。 もしも、こんな人間が、 あなたの周囲にいたとしたら、 あなたはどうするだろうか。」 誰だって、このような人とは、あまり付き合いたいと思わないハズです。
しかし、こんな強度の金銭フェチで、なりふり構わない上昇志向を持っているのが、法人という人格としての 「株式会社」の性格です。
「不思議なことだが、法人という 法律上に定められた人格に限って 言うならば、ほとんどの法人は
あたかも生得の気質のように、 上述した金銭フェチである、 彼のような性格を最初から 持っている。
さらに不思議なのは、 誰も、この法人というものの 病的な性格に関して、根本的な 疑いをさしはさむことはないと
いうことだ。しかも、私たちは この法人(株式会社)というもの と係わらずに生活するわけには いかない。私たちは、私が病的 と考える組織の中で、人生の多くの 時間を過ごすことを宿命付け られている。」
どのような経緯で、株式会社はこんな性格になったのか?
そして、株式会社はこの病的な性格のままで、未来永劫存続していけるのか?
本書は、株式会社の歴史を振り返り、その在り方について論じた本です。
ただし、日本の株主が創業一族だけの会社や、実質的に社長が無限で責任を負うような会社を除きます。
あくまで、所有と経営が分離して、株主が主権を有し、株式市場で公開された会社を対象とします。
あるいは、そこまで整備されていなくても、その先駆的な形態の法人を見ていきます。
著者は、文筆家、起業家で、立教大学の客員教授を務める平川克美さん。
最初は、『ヴェニスの商人』や東インド会社の設立の時期からスタートとします。 そこから、第Ⅰ部では、複式簿記の発明、アメリカ合衆国の誕生など、約500年の歴史を紐解いていきます。
続く第Ⅱ部では、株式会社の「原理」と「病理」と題して、個人の欲望との結びつきや、その倫理について考えます。
最終章では、株式会社の限界が見えてきたとして、株式会社の行く末についても論じます。
跋扈する経済的人間として、登場するのは、村上ファンドの村上世彰さん。
さらには、株式会社の「病」の発症例としては、ライブドア事件の堀江貴文さんも登場します。
本書は、立教大学社会人大学院での講義を基にして書かれているようです。
そのため、いろいろな話題を取り込みつつ進める講義を聞いているように、非常に魅力的な本になっています。