Rindler系での計算
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$ \, (a) 重力場が static ならばエネルギーに対応する保存量が存在し,統計力学的平衡が計算できる。
$ \, (b) ふたつの部分にわけたとき,左の箱の状態密度 $ D_L は右の状態密度$ D_R より大きい。
これらの仮定の妥当性を具体例で検証してみる。
等価原理より重力場を一様加速でおきかえる。
一様加速をしている系の座標として,リンドラー座標を使う。リンドラー座標については,たとえば, EMANさんの解説参照。 $ t=\rho \sinh \eta\,,~~x =\rho \cosh \eta
波動方程式は
$ \frac{1}{\rho^2}\frac{\partial^2 \phi }{\partial \eta^2}-\frac{1}{\rho}\frac{\partial}{\partial \rho} \rho \frac{\partial \phi}{\partial \rho}=0
固有モードは規格化定数を$ A として
$ u_m=A\exp -i[\sigma \eta - m\ln (\rho/\rho_0)]
ここで$ \sigma は周波数に,$ m は波数に対応する。
この場合の Killing Flow はローレンツブースト(=時間を含む4次元回転)である。これに対応する保存量(以下,リンドラーエネルギーと呼ぶ)は4次元角運動量で,その密度は
$ \varepsilon(\rho) =\frac{\rho}{2}\left[\frac{1}{\rho^2}\left(\frac{\partial \phi}{\partial \eta^2}\right)^2+\left(\frac{\partial \phi}{\partial \rho}\right)^2\right]
で与えられる。これが保存することは波動方程式から直接確かめられる。この保存量に基づいて,熱統計力学が構築できる。くわしくは拙論 1,2 をごらんください。 Bose 分布は
$ f(\sigma)\propto\frac{1}{\exp(\hbar\sigma /k_B \Theta)-1}
ただし$ \Theta はリンドラーエネルギーに対応する温度。$ k_B \Theta は角運動量の次元をもつ。
ボックス内のトータルのリンドラーエネルギーは$ D を状態密度として
$ E_0 = \int \sigma D(\sigma) f(\sigma)\, d\sigma\
ただし$ D はボックス全体の状態密度で単位体積あたりではない。
今,$ \rho_0 < \rho < \rho_1 のボックスに閉じ込められた輻射を考える。境界条件は$ \phi(\rho_0)=\phi(\rho_1)=0 とする。
境界条件より$ m (\ln\rho_1-\ln\rho_0)=2n\pi ($ n=1,2,\cdots )なので,1次元の場合
$ D(\sigma) = \frac{1}{2\pi}\ln{\frac{\rho_1}{\rho_0}}
これが$ \sigma によらないのは,空間一次元だから。
これを第二種永久機関のページの2つにわけたボックスに適用すると ,$ D_L > D_R が示せる。 ----
文責:中村匡(福井県立大学) 2018/06/22
Rindler系での計算