Relativistic Thermodynamics
「動いている物体の温度は上がるか,下がるか?」 = 「温度のローレンツ変換は?」という問題は
歴史
特殊相対性理論ができてから,すぐに Einstein や Planck が考えている。
それ後しばらくは,あまり注目されなかった。
1966 年に Ott(ドイツ語,原文読んでない)によって Einstein とは逆の結果が提案された。 それから大論争に。
たとえば,相対論教科書の定番のひとつのメラー本は,初版と第二版で相対論的熱力学のところが大幅に書き換わっている。
これは逆温度を4-vector としてあつかう。
ポイント
混乱の主たる原因は,以下の 3 点が正しく理解されていないことだと思われる。
1. 相互に相対運動する二つの物体が熱平衡になることはない。
熱平衡とは,二つ(以上)の物体がランダムにエネルギーを交換した最終結果だが,相対論ではエネルギーはエネルギー・運動量 4-vector の第ゼロ成分である。
ランダムにエネルギー・運動量を交換しつづけると,相対速度はゼロにならざるを得ない。
つまり,相対運動をしている物体間の温度は比べられない。
2. 相対論的逆温度は 4-vector である。
たとえば統計力学で温度(逆温度)はラグランジュの未定未定係数でエネルギー保存という拘束条件から出てくるパラメーターである。
ここでの導出では,エネルギーが保存量であるということしか使っていない。
ということは他の保存量でも同様に(逆)温度的なものが定義できるはずである。
たとえば,化学ポテンシャルは粒子数に対する温度的なものである。
エネルギーは,相対論ではエネルギー・運動量という 4-vector として保存するので,対する逆温度も 4-vector になる。
3. 有限の体積をもつ物体はローレンツ変換によって同時性が変わるので, 系によって違う物理的実体になる。
たとえば,「ある物体のもっているエネルギー」というのは,物体が有限の体積をもつ場合は。どの慣性系のタイムスライスかによって値が変わってくる。
とくに物体に圧力がかかっている場合,圧力は運動量フラックスを意味するので,物体に流入するフラックスは見る系によって違う。ピストンの中の気体のような思考実験をするときに,これが混乱の元になる。
数式入りの解説
まだ推敲中です。エントロピーの計算の測度なんかいいかげん。