FM-fukui
ボリゾフ彗星
宇宙空間には太陽のような恒星と地球や火星などの惑星があるのはよく知られているが,実はほかにもいろいろなものがある。
たとえば,小指の先のような石ころや机ぐらいのもの,あるいはもっと大きなビルや地球の山ぐらいの石や氷の塊が漂っている。
でも,これがあまり知られてないのは,単純に小さくて暗いから。
しかし,観測技術の進歩で,かなり小さい(数キロ〜数十キロ,地球にどれくらい近いかでかわる)ものでも太陽系内なら観測されるようになってきた。
その中で,昔から観測よく観測されるのが,彗星である。
彗星は,「汚れた雪球」と考えられており,冥王星のあたりや,それよりもっと遠くから多くやってきている。
冥王星は,そういう彗星一族(エッジワース・カイパーベルト天体という)の親玉であると考えられており,そいうのがたくさん見つかってきて,それを全部惑星としてあつかうと収拾がつかなくなってきたので,2006年に惑星で亡くなった。
実は惑星と惑星以外の小天体(小惑星や彗星など)の明確な区別は科学的には重要でない。
彗星は太陽から遠いうちはガチガチに凍っているが,太陽に近づくと氷がとけて蒸発して,それが太陽に照らされて尻尾状にのび,「ほうき星」となる。
古来,彗星は肉眼で観測されているのは,本体が小さくても,この尻尾が長く明るく伸びるから。
いままで多くの彗星がみつかっているが,ほとんどすべてが太陽の重力につかまえられて,太陽のまわりを回っていると考えられていた。
2017年にみつかった「オウムアムア」は太陽系外から来たとほぼ確信できる最初の例になった。
これがなぜ太陽系外とわかるかというと,速度がかなり大きいから。計算してみると太陽の重力をふりきって,飛び去ってしまうくらい速い。
ところが,今年8月30日に,クリミアでボリゾフという人が見つけた彗星をくわしく観測してみると,めちゃくちゃ速くて(時速15万キロ)簡単に太陽系外に飛び去ってしまうことが判明した(9月14日)。ということは,来たのも太陽系外から。
余談だが,彗星は遠くにいるときは観測されないので,次々とあたらしいのが発見されている。
彗星には発見者の名前がつくので,アマチュアの彗星ハンターが活躍している。今回も発見者の名をとって「ボリゾフ彗星」となった。
前回の「オウムアムア」(これは彗星ではなくて小惑星)は太陽近辺を通り過ぎたあとで発見されたので,詳しい観測ができなかったが,「ボリゾフ彗星」はいまから太陽に近づいてくるので,詳細な観測が可能。
小惑星と彗星の違いは,尻尾があるかどうかだが,科学的に明確なせんびきは無い。
現在までの観測で,噴出物の組成が太陽系の彗星と似ていることがわかってきている。
太陽系以外の天体も,太陽系の天体に似ているって面白いと思いません?
惑星などの天体がどうやってできたかは,天文学上の大問題で,いまだに活発に研究されている。
再接近は12月初旬で,地球から3億キロまで近づく。
ただ,それでも遠すぎるため,高精度の望遠鏡が必要で肉眼では見えない。
太陽系外惑星
前回は太陽系の外から飛んできた天体の話だったが、今回はそれがどこから来たのかという話。
いわゆる「星」には、おおまかにわけて恒星と惑星がある。
恒星は太陽のように自分で光ってエネルギーを出しているのに対し、惑星はその周りを回っている地球や火星のような星。
夜空に見える星のほとんどは恒星で惑星は水金地火木土天の7つしか肉眼では見えない。海王星は望遠鏡で見える。
意外なことだが太陽系以外の恒星にも惑星が回っているかどうかは 1995 年までわからなかった。
これはひとえに惑星が暗くて小さいから。 たとえば、夜に1キロ先に車がとまっていて、ヘッドライトがついていたら、見えるだろう。
しかし、その車のそばにある小石は見えない。
もし、太陽が車のヘッドライトぐらいの大きさだったら、地球はそれから20メートルから離れたところにある小指の先くらいの小石。
そして、太陽のすぐとなりの恒星は中国くらいの距離にある。
ちなみに我々の銀河の半径はその1万倍くらい。
なので、直接に太陽系外惑星を観測するのは大変(最近はそれなりにやられている)。
1995年に初めて系外惑星が見つかったときも、直接観測ではなく、ドップラー法と言って、惑星の運動で親の恒星がふらつくのを観測した、
実は1995年に観測技術が発達したから見つかったのではなく、予想以上に短周期だったため。
20世紀から二千ゼロ年代にそこそこの系外惑星がみつかったが、2009年に系外惑星探査専門衛星「ケプラー」があがって、一気に数千個単位で系外惑星がみつかっている。(2019年9月1日時点で4,109個)
初期にみつかった系外惑星は木星のような巨大惑星で、生命の存在には適さない。
天文学で最大の関心のひとつは地球外に生命がいるかどうか。
太陽系で可能性があるのは地球以外は火星、木星の衛星、土星の衛星。
でも、いたとしても微生物程度。
最近になって地球に近いものも見つかってきた。
地球のような惑星があったとしても、待機密度・成分や温度が生物の存在に適してなくてはならない。たとえば金星は地球ににた星だが、表面温度が400度もあってダメ。
で、最近、地球似た系外惑星がぽちぽち見つかって、地球外生命の期待が高まっている。
先日、系外惑星に水があることが判明し、もりあがっている。
生命発生には液体の水の存在が必須と思われている。
火星探査なども液体の水を探していて、少なくとも過去には大量の水があったと考えられている。
惑星がどのようにしてできたのかというのは,天文学上の大問題で,20世紀後半に「京都モデル」という標準理論が完成された。
この理論ができたころは系外惑星は見つかっていなかったので,太陽系の惑星だけ説明できればよかったが,系外惑星には,京都モデルで説明できない例が多く見つかっている。
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明日の9月13日は中秋の名月、天気予報では晴れ(予報チェックして)ですが、みなさん、今、インドの探査機が月の周りを回っているのをご存知ですか? この探査機はチャンドラヤーン2号といって、インドの月探査機としては2008年のチャンドラヤーン1号につづく2機め、国としてはロシア(旧ソ連)、アメリカ、日本、中国につづいて5番目の月探査計画になります。
チャンドラヤーン1号は月の周りを回ってカメラなどで上空から観測する探査機でしたが、2号は本体から切り離された着陸機「ビクラム」が月の極地に着陸して表面を走って探査するという意欲的な計画でした。「でした」と過去形で言ったのは、この着陸が失敗したことが、どうも確実になったと思われるからです。
この着陸機は今月7日に親機から切り離されて、月面への下降をはじめたのですが、高度2キロを通過したところで通信が途絶え、その後信号が受信できなくなったのです。その後、親機が上空から月面に着陸しているのは確認したのですが、月面に激突したのか機能停止している模様なのです。
この失敗自体は悲しいニュースなのですが、私がちょっといいな、と思ったのはこの失敗がわかってからインドのモディ首相が、インド宇宙研究機関の科学者たちに会って労をねぎらった場面。涙を流す主任をハグして「新たな夜明けはすぐ来るだろう。科学に失敗はない。あるのは挑戦と努力だけだ。」って言ったそうです。twitter で「インド+月」を検索すると英語ですが動画がヒットします。
明日、天気が良くて中秋の満月を見ることができたら、その月面にのこるインドの科学者たちの「挑戦と努力」にも、思いをはせてみてはいかがでしょうか?
追加情報
月面着陸は上空周回にくらべて格段に難しい。日本は周回のみで、現在成功したのはロシア、アメリカ、中国の3カ国
インドは中国に続いて宇宙大国になりつつあり、アメリカ、ロシア、ヨーロッパに続いて火星探査に成功。ちなみ日本は「のぞみ」という火星探査機があったが失敗。
実は日本も「ひてん」という実験機が月に行っているが、これは探査目的ではなく、実験がおわったあとの機体を意図的に月に衝突させた。
宇宙探査は一発勝負(故障しても宇宙に行って修理できない)ので失敗はつきもの。
月探査といえば、今年はアポロ月着陸50周年。ライアンゴスリング主演の「ファーストマン」という映画がヒットしたが、この秋にはアポロ11号のドキュメンタリー映画が上映される。
そのほか、追加情報はいろいろあるので必要なら連絡して。