Angular Momentum Temperature
相対論流体の場合,エントロピーは4ベクターの流束になる。これは流体のエネルギー運動量 $ T_{\mu\nu} と4減速度 $ u^{\nu} を使って
$ s_{\mu}=\beta u^{\nu}T_{\mu\nu}
で表される。ここで β は流体と同じ速度で運動する温度計で計った温度の逆数(逆温度)である。
2次元リンドラー座標 $ t=\rho \sinh (a\tau),\; x=\rho \cosh (a\tau) をとると、任意の正の定数 λ に対して$ \beta=\rho\lambda,\; (u_\tau, u_\rho) = (1,0) はひとつの熱平衡状態を与える。このとき、$ \rho_0<\rho<\rho_1 の間にある流体のエントロピー変化 $ \Delta S は
$ \Delta S = \int_{\rho_0}^{\rho_1} \Delta s_{\tau} d\rho = \lambda\int \rho\Delta T_{\tau\tau} d\rho = \lambda \Delta M
となる。ここで$ M は $ \rho_0<\rho<\rho_1 にある流体の、時間を含む面内での回転に対応する4次元角運動量である。以下ではこれを単に「角運動量」と呼ぶ。
これを普通の熱力学的関係式 $ \Delta S = \beta \Delta E (今,体積変化などはないとする)と比べると λ を角運動量に対応する逆温度とみなせる。実際、これを逆温度の拡張として解釈すると都合のいい熱統計力学的な事実もいくつかある。
リンドラー系で ρ が一定の場所にある物体のエネルギーは保存しないが、角運動量は保存するので角運動量温度をつかと、リンドラー系での熱力学が計算できる。たとえば等加速度運動する Unruh-DeWitt デテクターをリンドラー系にのってみると、角運動量を熱としてやりとりする温度計と解釈できる(と思う)。
熱平衡にある流体のもつエネルギーが決まると(逆)温度が決まるように、角運動量逆温度 λ は流体のもつ角運動量で決まる。これに対してUnruh 効果の場合、逆温度はプランク定数で一意に与えられる。これは時間座標を $ \tau^*=a\tau として無次元量で計ると、リンドラー座標がパラメタなしで一意に決まるためである。
リンドラー的な等加速運動はほ調整できるパラメタがないが、これはリンドラー座標の特殊事情である。たとえばシュワルツシルト座標では質量 $ M がパラメタとしてでてくる。これに関しては別途考察が必要である(=よくわかりません)。