五色分心分界論
橘榛名の精神の働きに就ての內觀。そして其の內觀に呼應する樣に分析される世界。
橘榛名の世界觀。
槪觀圖
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橘榛名の心裡に、矛盾した感情や判斷が同時に生じる事が屢〻あるので、其等のパターンを分析し、どう云ふ價値基準や信念から其等が引き起こされてゐるかを分類した。結果、精神の働きの六種のパターンが見出だされた。
六種のパターンには當初は色の名が與へられてゐた。
又た、橘榛名が世界の運行にパターンを見出だす時、其のパターンと六種の精神のパターンには照應する所がある樣だと理解された。世界の運行に見出だされるパターンに名を付ける事は心裡の觀測と分類とは別個に行はれ、或る時、其の照應が發見された。
圖の右方向が神性/精神性の方角、左方向が獸性/物質性の方角である。
精神は三角形(△)、物質は十文字(+)によって象徵せられる。
以下、各圓により象徵される六種の分心と五色の分界に就て述べる。
六種の分心
白色の心 = 觀測者
內觀を行ひ、環世界を觀測する。
色彩の心らが互ひに矛盾し合ひ、相爭ふ樣を觀測して苦しむ。
色彩の心らを統禦出來ない時、影響力無く唯だ振り囘される小圓の如く觀ぜられる。
實際に存在する精神 = 肉なる腦の現象は、本當は一つであり、色彩の心らは飽く迄も其の一部に過ぎない。即ち、全ての色彩の心らを包含した一塊なる精神であり、六分心を包含する大圓である。
緋色の心 = 擲(なげう)つ心
圖中では餘り離れてゐないが、遙か右方の天球から呼び掛ける心。白色の心や黃色の心の影響を受け辛い。
「理想を實現する爲ならば、躊躇はずに全てを擲て。」と命ずる。
篤信家であり、獻身的な理想主義者であると同時に、自己破壞に執著する自罰者でもある。
世の爲人の爲に働く樣方向付ける心であると同時に、自殺を命ずるのも此の心である。
「本當の皆んなの幸ひの爲ならば、私の體なんか百遍灼いても構はない。」
「生存により不可避に雪ぎ得ぬ罪を犯す定めならば、直ちに生存を已めるのが世界の利益と成る。」
黃色の心 = 執成(とりな)す心
理想を實現する爲に、色々の物に折合ひを付けようとする心。
「人を救ふ爲には、自分が救はれてゐないと行けない。」
左手側の綠藍菫の三心を宥め賺して協力を取り付けようとしてゐる。
緋色の心からは噓吐き呼ばはりされる。「理想に託けて我欲を滿たさうとしてゐる。」
綠色の心 = 留(とどま)る心
現狀に滿足し、現狀に留まらうとする心。
「只穩やかに過ごしたい。何もしたくない。」
現狀を改善する爲の努力もしたくない。理想とかどうでも良い。
したら自分が嬉しく成る樣な事もしたくない。
「人は人。私は私。」無關心。或いはどっちもどっち。
藍色の心 = 稚(いとけな)い心
何でも欲しがる心。「あれも欲しい。此れも欲しい。」
特に名譽と愛、承認が欲しい。素晴らしい優れた人であると世界中の人から襃められたい。
「やりたくない事を無理してやった私には、當然報酬がたんまり與へられるべきである。」
「私はこんなにも賢く優れた存在であるので、全世界は私に傅き便宜を圖り、私を譽め讚へるべきである。」
菫色の心 = 獸の心
人心以前の諸々の欲求と憎惡を司る心。
「美味しい物を思ふ樣食べたい。無限に寢てゐたい。肉欲を滿たしたい。」
「厭な物は厭。嫌ひな物は嫌ひ。痛い事や痛剌い事はしたくない。」
「(憎惡對象)は苦しんで死ぬべき。永遠に樂園の外の泥濘中で沼田打ち囘り齒軋りして悔やむべき。」
五色の分界
抑〻なんで「六色の分界」でないかと云ふと、環世界は分界の一つではないからである。
環世界
觀測者を取り卷く、價値判斷とか解釋とかを挾む前の在るが儘の物理的存在としての現實世界。
五色の分界は、いづれも觀測者によって觀測され解釋された環世界の一側面である。
樂園
意味を盛り過ぎてややこしい槪念と化してる。
當初の意味は、人類が辿り著くべき理想狀態。一切の苦痛と欠乏の無い世界。
「けれどもほんたうのさいはひは一體何だらう。」
帝國と文明
帝國とは、世界の良化を實現する爲に、世界を良化しようとする意志を持った人々によって結ばれる大小の組織。
文明とは、無數の帝國が重なり合って形成される、世界を良化しようとする營みの總體。人類文明。
文明と帝國に貢獻した者には、文明による恩寵が授けられる。貢獻と恩寵の交換を基盤とする。
人の世
理想と現實で板挾みに成ったどうしようも無い我々人類の世界。
上記は洞察が足りなかった。
綠色の世界は、「何も差し出す事無しにあらゆる物が與へられる世界」であった。
此れは今後の内省の道具として重要な意味を帶びた。
共和國と社會
共和國とは、個々人の利益を最大化する爲に、個々人の利益を最大化したい人々によって結ばれる大小の組織。
共和國は當初は社會と一纏めだったが、帝國と文明との對比に應ずる樣に新たに名付けられた。なので括弧が付いてる。
結局どっちも纏めて社會の語で表す事が多い。
社會とは、無數の共和國が重なり合って形成される、世閒。
互ひの利益の爲の打算と取引、或いは騙し合ひを基盤とする。
泥濘
樂園の逆。禽獸の世。
欲望の儘に奪ひ合ひ、殺し合ふ。
暴力を基盤とする。
五色の分界の概觀
文明と社會、楽園と泥濘は、それぞれ對稱をなしてをり、それぞれ正反對の世界の樣に觀測される。しかし、物の流れと云ふ點に注目すると、
來歷