娯楽屋レギュの環境変遷
2021年3月23日にショップ娯楽屋にて開催された「★ガンナガン対戦大会★」、それは通常の2セット戦とは違う"二士三銃フォーマット"での戦いでした。(ショップ名から"娯楽屋レギュレーション"と呼ばれています。)
この記事では「レギュレーション発表から本番当日までの環境変遷」と「その過程で筆者が構成の軸に置こうとした銃士"ラン"に関する考察」に関してを中心に書いていきます。殆どが特殊レギュレーションに関する話になりますが、通常1セット/2セット戦にフィードバック出来る内容もあるかもしれません。
①.初日の結論【キルコ/マカ - ドドメ/キヨヒメ/ツエツキ】
レギュレーション発表当日の2021年1月25日に娯楽屋に乗り込んだ(上にレギュ発表1時間前にその内容を聞き出した)調整チーム2人。彼らは以前からガンナガンをプレイしており、1セット/2セット戦における共通見解をいくつか持っていました。「ナトリはツエツキの妨害が非常に重い事」「マカはツエツキを含めた構成【ドドメ/ツエツキ+サヨナラは言わないで】を強く扱える上、マカのLIFE40を詰め切るビートダウンが現状殆ど存在しない事」「現状キルコだけはマカのLIFE40を詰め切る事が出来るビートダウン【ドドメ/キヨヒメ+マキシマムリロード】を持っている事」「ナトリはキルコのビートダウンをいなす手段【ドドメ/キヨヒメ+グッドメディスン】を持っている事」でした。
以上の見解を基に行われた調整は「キルコ→マカ→ナトリ→キルコ→……の3竦み」「OVERHEAT発売直前大会でも全勝優勝をしたヒバナ」の話を中心に進みました。ちなみにこの2人は「ミラー、したくねぇなぁ……」と言う考えが強かったので、構成を1つ提案→更にそれを乗り越えそうな構成を提案→実際にやってみた→勝った方を乗り越えるそうな構成を提案……と言う形で調整を進めていました。
その内、レギュ発表前の通常2セット戦でも猛威を振るっていた【キルコ-ドドメ/キヨヒメ+マキシマムリロード】【マカ-ドドメ/ツエツキ+サヨナラは言わないで】の2つを使用できる【キルコ/マカ - ドドメ/キヨヒメ/ツエツキ】構成が娯楽屋レギュでも当然強いのでは無いか?と言う結論になり、結局その日の内にこれが覆る事はありませんでした。
また、ツエツキを使用しないアグロ構成も検討されていましたが、それはナトリを含めた構成と当たった際の裏目が大きすぎると判断されたため、しばらくはツエツキを含めた形を中心に考えられる事になります。
②.手札3銃士と「非射撃ガンナガン」について
ひと先ずの"最強"が定義された以上、それに対する対抗策——新しい構成を考える必要が出て来ます。その新しい構成に必要な銃士は「キルコの先1マキシマムリロードを止める事が可能な事」「ツエツキを構成に含めた上で、ナトリ相手に先攻を取る事が可能な事」という2つの条件を満たして無ければいけない事が分かりました。
まず、手札3銃士の3人が選択肢になる事が分かります。しかし、彼女達は「手札の質が運によってかなり上下する事」「ドドメの4装填7HITのプレイをしづらい事」と言う2つの弱点を抱えています。当然、手札が多い方が手番中に可能なプレイが多くなり、1ターンの価値もそれに応じて高くなります。
初日でもこの話題は上がっていましたが、「大会シーンを考えると手札3銃士は難しいよね。」と言う結論になり、手札3銃士を構成に含める事自体が敬遠される形になりました。しかし3人ともナトリに対して先攻を取る事が出来るので、優秀なドローソ-スを持つツエツキを扱えたり、マカに対しての勝利プランを持つ事が出来るならあるいは……と言う雰囲気もありました。
そこでマカの存在に回帰します。実は通常2セット戦でマカが強いとされていた理由は【ドドメ/ツエツキ+サヨナラ】だけでなく、【ウワン/ツエツキ+すべてをキミに】という構成の通りが非常に良かった部分にもあります。ライブラリアウトを勝ち筋とするこの構成の発見により、一時期殆どのビートダウンが息を止める結果になりました。
HIT軽減が閃光幕しかない部分は、マカのLIFE40+レベリングと撹乱光線を使用したハンデスによりあまり問題になりません。相手は射撃をすると閃光幕によって先述の行動カードを回収される上、自身のリソースを吐く事になるのでLOが早まってしまいます。また、殆ど射撃を行わないその戦い方から「非射撃ガンナガン」と呼ばれる様になります。
そして、この構成に対して有利なのは言わずもがな、【キルコ - ドドメ/キヨヒメ+マキシマムリロード】でした。
そこで「ピックの段階でキルコを下げさせ、相手が仕方なく出してきたマカをキルコで封殺 or ナトリをツエツキで封殺する」構成プランが浮かび、それを実現可能な銃士を採用した「【キルコ/マカ - ドドメ/キヨヒメ/ツエツキ】に対する回答足りうる構成」を発見します。
③.初日への回答【ラン/マカ - ドドメ/ウワン/ツエツキ】
さて、最速のビートダウンである【キルコ - ドドメ/キヨヒメ+マキシマムリロード】にも弱点は存在します。それは「リユースを持ってしても山札の消費が激しい事」と「マキシマムリロードとキヨヒメが、ジャミングに対する大きな脆弱性を抱えている事」です。
つまるところ、ウワン/ツエツキ構成そのものは【キルコ - ドドメ/キヨヒメ+マキシマムリロード】に対しては有効で、「銃士次第では有利に戦える事」を意味します。
また、マカはビートダウンに対して強い性質を持つ反面、デメリット効果に起因したライブラリアウトに対する脆さが存在します。
【マカ - ドドメ/ツエツキ+サヨナラ】が強いとされていたのは、「リユース」によってその弱点をある程度カバーできる事にもあります。
ここまで来るとウワン/ツエツキの両方を採用した構成が現実味を帯びてきます。調整の試合もロングゲームが増えていきます。
ここで、ウワン/ツエツキ構成を強く扱える上に、技能「がんばる!!」による回復を持つ”ラン”が環境に現れます。マカが持つLIFE40を技能として、「すべてをキミに」の出力をパッシブとして持っている上に、【キルコ - ドドメ/キヨヒメ+マキシマムリロード】への抑止力すらあるそれは、回答として十分でした。
また 【マカ - ドドメ/ツエツキ+サヨナラ】も依然評価が高く、リユース+閃光幕で無限に山札を再構成するコンボも発見された事から、ドドメに対する評価も更に上がり始めます。
この時期は「試合時間25分で足りるのか?」とすら言われ、現に調整チーム内での試合は25分越えのロングゲームが増え始め、追加ターンのルールがかなり重要に思われていました。しかし、そんな地獄のコントロール環境はある日突然終わりを迎えます。
④.最速の構成【キルコ/ナトリ - カサネ/ドドメ/キヨヒメ】
ランを用いたコントロール構成はキルコを乗り越え、ナトリすらを封殺出来ると思われました。しかし「非射撃ガンナガン」を乗り越えたのは、最速で相手を殴りライフを削り切る「高速二丁銃バトル」そのものでした。
地獄のコントロール環境。その終焉を招いた要因は、【キルコ - カサネ/キヨヒメ+マキシマムリロード】の発見でした。カサネの「発破」でジャミングをケア出来る事によって、【ラン - ウワン/ツエツキ+がんばる!!】側の要求値が飛躍的に上昇しました。キルコ側は手札4+引き直し効果によって「発破」を握り込み易い事に対し、ランはほぼ初手で「ジャミング」と「スクランブル」の両方を握り込まなければなりません。幸い、気迫+起死回生のループは「ノイズジェネレーター」でケア出来ますが、マキシマムリロードからのBURN2さえ通ってしまえば キルコの山札が尽きる前にランのライフが尽きる展開になってしまいます。
キルコのメタとして機能していたはずのランが乗り越えられた事により事態は一変します。そもそもコントロール系の土俵であるロングゲームに持ち込め無い以上、【ラン/マカ - ドドメ/ウワン/ツエツキ】構成は破綻したと言えます。
この"最速の構成"に対する回答は暫くの間見つからず、調整チーム全員が渋々ミラー戦に対して意識を向き始める中、2021年2月23日に某Discord鯖にてリモート大会が開催されます。
⑤.最遅のコントロール【キルコ/ラン - キヨヒメ/ウワン/ツエツキ】
娯楽屋での本番を想定しスイスドロー形式で実施された大会。調整チーム内で「結論は"最速の構成"だ」と言われている中でしたが、決勝卓にその姿はありませんでした。
共通見解として【キルコ/ナトリ - カサネ/ドドメ/キヨヒメ】が「ラン - ツエツキ/any」の選択肢が存在する構成とマッチアップした際、銃士をツエツキに弱いナトリでは無くキルコにし、【キルコ - カサネ/キヨヒメ+マキシマムリロード】の構成にする…と言うものがありました。
しかし、その段階で「キヨヒメの対カサネ性能」と言う根本的な部分を見落としていました。
結果として決勝卓に姿を現したのは【ラン - キヨヒメ/ツエツキ】で"最速の構成"の一つ【キルコ - カサネ/キヨヒメ+マキシマムリロード】に対抗する事を主軸とした【キルコ/ラン - キヨヒメ/ウワン/ツエツキ】構成と、当時再評価の流れにあったダタラを採用した【マカ/ナトリ - カサネ/ドドメ/ダタラ】構成でした。
結果として優勝したのは後者でしたが、メタ構成の登場により環境はまた大きく変化する…筈でした。
⑥."ナトリ・アンド・ガン"
さて、実はこの時期に調整チームは「ナトリに関する重大な事実」に気付き始めています。
基本環境で非常に強いと言われていたこの銃士は、ツエツキの登場により立場を落としたかのように思われていました。ジャミングにより技能2枚が死に札と化し、5枚の手札を活かそうものならレベリングとノイズジェネレーターが重くのしかかる…………しかし、ツエツキの妨害を掻い潜るシンプルな術がナトリ側には存在しました。
"「最速でvoltを溜め、最速でバッドメディスンを発動する。」"
「バッドメディスン」はその遅効性故にジャミングが効きませんが、「エコーバレット」によりそもそもの発動を止める事が出来る上、「ノイズジェネレーター」もヒートアップの連打を許さないため、それでもツエツキの妨害は十分に重いとされていました。
しかし、ドドメの「バラージ」はナトリがバッドメディスンを発動する上での障壁を乗り越える上で強力な1枚である事が判明しました。これでナトリ側はダウンフェイズにドドメを選ぶだけで相手にプレッシャーを与える事が出来るようになり、ツエツキを持つ側は「エコーバレット」を通す為には「スクランブル」もセットで握り込まなくてはいけない事も分かりました。
ドドメを持ったナトリが今までより容易にツエツキの妨害を乗り越えて来る事が判明した以上、「ナトリを中心とした構成」の評価が高まります。
結果、1T目30HITすら可能な最速のワンショット【ナトリ - カサネ/ドドメ+ジャストアイディア】、際限なき山札とライフを持つ最強のコントロール【ナトリ - ドドメ/キヨヒメ+グッドメディスン】。改めて注目されたこの2つの構成は「ミラー以外のほぼ全てに有利がつくのでは?」とすら言われ、【ナトリ/any - カサネ/ドドメ/キヨヒメ】が調整チームの結論として位置づけられる構成になりました。
⑦.結論構成の誕生
本番2週間前にしていよいよ、娯楽屋レギュ環境の全容が姿を現しました。それと同時に、調整チーム全員が同じ呻き声を上げます。
"「ミラー、したくねぇ………。」 ”
そう。ガンナガンの2セット戦における完全ミラーマッチは、先手側超有利のゲームなのです。理由はガンナガンの取扱説明書を読むだけでご理解頂けると思います。
ここで「ナトリミラーで先手を取るためにカサネとエンラを採用する構成」と、「ツエツキを持ちキルコを対策出来るランを用い、ナトリにも対抗する構成」の2つが考えられました。ここに来てガンナガン昔話「ミラーやだ太郎」が新章を迎えます。
⑧結論構成への抵抗
今までの結果から、【キヨヒメ/ウワン/ツエツキ】構成を持つランはキヨヒメ持ちのキルコをある程度対策可能な事が分かったので、一先ず仮想敵を【ナトリ - カサネ/ドドメ】と【ナトリ - ドドメ/キヨヒメ】の2つに絞ります。それらに対しラン側が「先1レベリング→先2レベリング」「スクランブル+エコーバレット」などで、バッドメディスンの発動ターンを遅らせながらの勝利が可能でどうかを考える事にしました。
⑨.【ラン - ツエツキ/any】はナトリに勝てるのか?
まず、【ラン - ウワン/ツエツキ】に関して考えました。これに対して【ナトリ - カサネ/ドドメ】はワンショットのプランを、【ナトリ - ドドメ/キヨヒメ】は吸熱設置やBURN付与を、それぞれ諦めなければいけない事が分かりました。しかし、バッドメディスンは発動さえすれば後は何もしなくとも決着をつける事が可能な技能です。それに対してラン側には座っているだけでナトリのリソースを削る手段は無いので、何かしらで動かなければなりません。ナトリ側が【カサネ/ドドメ】にしろ【ドドメ/キヨヒメ】にしろ、リユースを2回以上撃たれるとラン側はライブラリアウトが狙えなくなる事と、バッドメディスンの発動ターンを後4まで引き延ばせれば可能性はあるが要求値が非常に高い事を何となく理解しました。
【ラン - キヨヒメ/ツエツキ】に関しても考察しましたが、ラン側のノイズジェネレーターと吸熱装置がナトリ側のバラージ1枚で機能不全に陥る部分や、そもそもキルターンが6T目前後とかなり遅めな事を考えた際にかなり厳しい戦いになる事を理解しました。
ランがナトリに対して有利とは行かなくとも五分れるなら【キルコ/ナトリ - カサネ/ドドメ/キヨヒメ】に対するメタ構成として持っていく価値が存在しましたが、現実はそうではありませんでした。
「キルコ対策をするにしてもナトリで良い」と言う事実が存在したので、最終的に残った考察要素は「ナトリミラーに関して」のみとなり、大会直前の試合もナトリミラーが中心になりました。
⑩.2か月間の結論
ナトリミラーに関して簡単に言うと「後手側、顔保たなくね?」と言う感じでしたが、【ナトリ - カサネ/エンラ】に関しては「【ナトリ - カサネ/ドドメ】に勝つ為にはパラライズバレットが要求される事」と「【ナトリ - ドドメ/キヨヒメ】にはかなりの不利がつく事」から、娯楽屋レギュ本番に持っていくにはそれなりのリスクが伴う構成と判断されました。
結果、筆者は本番当日に【キルコ/ナトリ - カサネ/ドドメ/キヨヒメ】を持ち込みました。理由は「キルコがマカに対して有利に戦える事」「ナトリが強い事をきちんと認識出来た事」の2つです。ランを握る事をかなり最後まで考えていたからこそ、ナトリの強さを正しく判断出来たのかもしれません。ちなみに結果は2勝1敗、スイスドローの1戦目で負けてしまったので形式上では4位です。
また「★ガンナガン対戦大会★」の結果ツイートにある上から4つの構成は、約2ヶ月間の調整の結果を各々が反映したものになっています。数人しか居ない調整チームでしたが、それぞれ視点やアプローチが異なっていたように思います。ガンナガンをプレイした中では濃い期間を過ごしたように思います、直前に時間があれば合宿なんかもしようとしてましたね(笑)。
しかし、筆者個人としてはレギュレーション発表から当日までの約2ヶ月の間に辿り着けなかった構成やプレイングがあると信じていますし、もしまた大会があるのなら、見知らぬガンナー/構成と戦えることを期待しています。
カードゲームやボードゲームは、地域やコミュニティごとにデッキやプレイング…所謂「環境」というものが異なるものだと思います。Twitterを見る限りガンナガンもその例に漏れず、色々な遊ばれ方をしているように見えます。
もし、これを読んでいる貴方が「ガンナガン」にのめり込んでしまったのなら、きっとどこかで対戦する機会があるかもしれませんね。ほなまた…