第20回 検証 ナチスは良いこともしたのか
SYUMIGAKUの第20回では、検証ナチスは良いこともしたのか、について話しました。
ナチス政権によって、雇用が創出されたり、子育て政策が推進されたりなどがあり、それがナチスは良いこともした、という議論が発生することが稀にあります。
では実際にはどのような制作を行なっていて、社会に対してプラスの影響を与えたのか、今日の社会が参考にできる要素はあるのか、について検証をしていく本を今回は紹介します。
本について
岩波ブックレット
小野寺拓也、田野大輔
【20-1】なぜナチスは良いこともした、と言われるのか?【ナチスは良いこともしたか】
議論の発端
ナチスはいいこともしている、という議論がSNSなど色んなところでされていたりする
それを否定する発言をすると、ネットでめちゃくちゃ叩かれたりする
ナチス = 絶対悪として解釈されている、その裏返しが私たちの社会はこうあるべき、という政治的な正しさ(ポリコレ)と密接に結びついている
しかし、これがナチスはいいこともした、と言いたくなる原因の一つでもある
つまり、現在のポリコレ、現体制への批判をしたいという感情も含まれている
その時には相対主義的な物事には良い面も悪い面もある、民主主義で選ばれたんだから、良いこともしていたはずだ、という主張がされる
歴史は事実、解釈、意見の3つがある
基本的に歴史を語る際に、完全に神の視点で話をすることはできないが、相互のレビューによって偏りや間違いをなくすことはできる。それがアカデミアの役割でもある
ナチスはいいこともした、といっていいのか?
母親や子供に対する政策
結婚のための融資や、子供を産むと1/4返済免除など
雇用を生み出した、軍事産業
しかし、これらは、のちの侵略戦争か が目的だったり、ユダヤ人や障害者、反政府主義者の迫害の上に成り立っていた この目的や反動要素を無視して、手段として特定の政策を賛美することに意味はない
この手段も結局これらの要素や目的なしに成り立たないものなのだとすると、全くもって意味がなくなる
ヒトラーは民主主義の中で独裁体制を作り上げたのか?
また、ナチ党は完全な民主主義のもとで、独裁体制を作り上げたということには語弊がある
保守派が共産党勢力を抑え込むために、民衆を捉えているヒトラーを支えると考えて、首相に就任させたりした また、そこから、ヒトラーはボランティアで編成されていた親衛隊によって、共産主義の人々や政治家を軒並み排除していた これによって全権委任権を得ていた
ゲッベルスは、その状況を賛美する民衆を増やすために、その当時聞こえのよい階級をなくすとか、そういうことをうまく広告して、独裁体制に対する民衆の扇動を作り出した 少女との交流の写真を使いまくってた
ユダヤ人少女も起用していた時期はあった
これによって、みんな等身大の総統がいる、という思惑を作り出し、これが暴君への支持を作り出した
そのような写真を見て、ヒトラーも人間で悪いやつじゃなかった、とか言って、ナチの政策などを肯定するのは間違いであり、ナチ党の戦略にハマってるだけである
【20-2】ナチスのおかげで経済は回復したのか?経済復興の裏に潜む外国人労働者の強制労働や収奪の歴史【ナチスは良いこともしたか】
どう検証するか?
オリジナルの政策をたくさんしたから、ナチスは世界に貢献した、と言われるが、オリジナルだからいいものというわけではないので、以下の3つの視点で検証する
本当にオリジナルだったのか?
どのような目的を持っていた?結果はどうあれ最初の目的は良かったのか
その政策がもたらした結果、良い結果を生んだのか
ナチスのおかげで経済回復したのか?
経済回復はナチスのおかげ?
世界恐慌の影響もあり、失業問題が凄がったが、高速道路、アウトバーン建設の雇用を生み出し失業問題を解決したとして、雇用の安定と経済の回復がよくあげられる アウトバーン建設や雇用創出の施策は、前政権の時から存在していたものを、あたかもオリジナルかのように見せてるだけ
様々な経済政策、雇用回復は、戦争に勝利することで回収されるという全体があった
大量に国債を発行してそれで軍需産業に投資していた
しかし、それの返済は基本的には戦争の勝利による賠償金で払う予定だった
また、経済国防政策で外部に資源を頼らないようにするというのが目的にあり、そのために他国を占領するため戦争しようとしていた
収奪の経済
占領地
占領経費として占領地に金を出させていた
フランスとか
金本位制が停止され、貿易が二国間主義に移行され、輸出入の差額で精算をしてたが、これをつけにしていた 17兆くらい
戦地では餓死が前提で、そこから収奪をすることが前提になってた
軍や兵士による外国での物資の買い付けもあった、物資がどこも不足している状況で
97兆くらいに上るらしい
ユダヤ人に対する収奪
ユダヤ人から2/3くらいでものを買い付けた、最終的には奪った、20,25%とか、関税も90とか、出国する際には身包み剥がされた
ユダヤ人を殺害したら、国債の返済も不要だし、金も国のものになった
ユダヤ人の家や家具もどんどん分け与えた、これはフランスのユダヤ人もおなじ
外国人労働者の強制労働
1936年に戦争始まってから、労働者不足になり、400万人男性を動員してから、ヤバくなった
女性の参加は反対されていたので、外国人47万人を全部動員したけど、足りなかったので、ポーランド侵攻してから、100万人持ってきた、しかし性交渉したら公開死刑
夜間の外出禁止、娯楽施設への立ち入り禁止、服にマーク
フランスからも100万、ソ連からも140万持ってきた、ソ連は最下層だった
年間死亡率がソ連は10%で、ドイツは0.4%
800万人くらい合計で持ってこられてた、ポーランドとソ連は働けなくなったら安楽死の対象になった
合計で関わったのが1300万人で、200万人くらいが死んでる
【20-3】ヒトラーは国民に1週間の地中海クルーズ旅行をプレゼントした?母親への手厚い支援など福利厚生について検証【ナチスは良いこともしたか】
福利厚生はしっかりしていた?
ナチスは労働者の味方?
福利厚生を安価に提供した
民族共同体の構築を目的として、階級の解体をしていった
労働組合などを解体していった
そして、労働組合を一つにして、その後経営者に従属して服従する法律を制定し、さらには労働者手帳を交付して職場移動の自由を制限した
歓喜力行団という組織で、余暇を楽しめるように、ラジオを安価に提供したり、車を安くしたり、などをやってた、ヴァルカスワーゲンなど。 フランスも同じことやってた
目的は、労働が過酷だったので、余暇でなんとか体力や精神を保持して欲しかった。余暇もふくめて管理対象にしたかった
結果改善に繋がったかというと、かなり財源を取ってたので、それに見合ったものかというと微妙。
数週間の地中海旅行という話をしてたが、結局ほとんどが日帰りだった。クルーズも車も結局軍事に使われた
いけたのも10%とかだったかな
これで労働者を掌握したのは事実だった
少子化対策と家族支援は充実してた?
手厚い家族支援
初めて少子化対策に成功したとさえいう本もある
ナチスはベースとして、女性社会進出は認めない立場をとってた
19世紀のワイマールでは進んでて、弁護士や医師や裁判官などにも女性がいたりした
母親勲章、結婚貸付で71万、4人で返済不要、母親相談所、現物出資
オリジナル?
母親の日はアメリカ
勲章はフランス、少子化への懸念でヨーロッパでは結構やられていた
母親支援はベルギーや、イタリアがやってた
ただ、他国より徹底してやっていた
目的は?
戦争を戦い抜くための民族共同体を強めること
一時戦争で負けた時に内乱が起こったことがあったので、労働者や国民の支持を得るのが大事だとわかっていた
しかし、健康的なアーリア人のみ、遺伝的健康が示さないと結婚できなかった
肯定的な結果を産んだ?
子供は増えた?
増えた、しかし、結婚率がそれより増えている
ナチス党員は独身多かった
経済回復によって結婚が増えた面が大きいとしている研究者が多い、それは軍事産業によるもの
この時期のヨーロッパで行われた少子化対策はどれもうまくいってない、結局金がかかる
国家がプライベートを変更するのは相当困難を伴う
戦争が始まると、どんどん女性が働くように政策がどんどん変わっていった
【20-4】家畜を殺すのに麻酔をするほどナチスは優しかった?動物保護と健康促進の政策の思惑【ナチスは良いこともしたか】
動物保護や健康促進をしていた?
自然や動物の保護、帝国自然保護方
有機栽培や、野良の動物の保護や、温血動物は殺す前に麻酔必要など
無駄にするな、ということで買いだめや保存方法の指導などをやってた
もともとやられていた政策だった
生活に民族のことを考えさせるという、民族共同体の組成が目的になっている
ユダヤ人は首を切って血を抜いたものを食べるとなってたから、屠殺方法として麻酔を必要とさせた、これによっても残虐なユダヤ人という印象を与えた
自然との結びつきを、ドイツのアイデンティティに結びつけた
しかし、戦争が第一優先で、それのためならどうでも良いとされた、そもそも戦争で森林を破壊している
健康、タバコ、酒、がん
がん研究センター、がんに関しては元々研究されていた
タバコと酒も、ガンの原因だと思われていた、また酒も遺伝だと考えられていた
積極的に女性などは禁止してたけど、国家としても大きな財源だったので、結局減ってはなかった
しかし、女性の肺がんは抑えられていた
タバコと酒は殺すのにはうってつけの道具だったので、支給されてたりもした
結局民族共同体を作るための施策だった
包摂と排除が両輪だった
結局、目的が包摂と排除の両輪により、民族主義的なロジックで国を一つにし、戦争に勝つことで強力な国家を築く、ために一貫して行われた政策だった