スポーツ科学のレポート
・素足の重要性
骨盤に付着する筋群の発達と足アーチが形成されているので人間は様々な運動をすることができる。そういった運動のパフォーマンスを高めるために幼児期に素足で自由に走り回れる環境で遊ばせるのがよい。足裏皮膚への直接の刺激は脳の皮膚感覚野を豊かにする。大脳と身体各部の繋がりを明らかにしたペンフィールドの大脳新皮質の局在図によれば運動野と皮膚感覚野の大部分が手、足、口の領域で占められている。遊びを通して未分化なそれらの神経機構を豊かにしていくことができる。
(感想)素足で走り回れる環境は考えてみると現代社会においてあまりないと思われる。外出時は常に靴を履いているので刺激は均一になってしまう。ある芸術家がデザインした遊び場はでこぼこがたくさんで子供が様々な皮膚の刺激を受けることができるようになっていた。裸足でも怪我のしない環境で少しずつ足裏を慣らして足裏の皮を丈夫にしていく方法が一番取り入れやすいとは考えたけれども、定期的にそういう環境に自分の子供を置くというのは難しいので、幼稚園などの教育施設で様々な皮膚刺激が得られるといいなと思った。自分は中学の時に裸足でそうらん節や応援団をやった記憶がある。
・スポーツと学習について
運動をすると筋肉や健にある自己受容器などからインパルスが感覚神経を通って大脳の高次運動野にフィードバックされる。その感覚と運動指令の対応をそこにプールしておいて次の運動に役立てる。運動の手順には大脳基底核が、円滑さには小脳が関与する。スポーツにおける運動技術はエネルギーを量という観点で効率よく利用する方向と、意図した配分という観点で効率よく利用する方向をもつ。その二方向の能力の比率はスポーツによって異なるためスポーツ技術の向上を目指すとき、その方向性に特化させても競争の観点から不利な種目があることや能力を上げようとしても上がらないもしくは体のバランスを崩してしまう年齢時期があることに注意すべきである。
(感想)ある能力に特化したいときにその適切な時期に適切なトレーニングを行う必要がある。また幼少時に能力の基礎部分が作られることも考慮する必要がある。自分の能力に自信をもってスポーツに向き合うことができればその上達も早く、スポーツとの関係をよい形で保てると考えられるが、これはとても難しいことである。
・運動と遺伝について
講義中に先生は両親が特定のスポーツ選手でとりわけ母の技能の実力が高い子供は高い成果を挙げるのではないかという仮説を立てていた。
運動能力に関係する遺伝子多型がありそれらの組み合わせでスポーツの素質は決まるが、遺伝子はたんぱく質の設計図に過ぎずその素質を生かすために持続的な努力とそれを可能にする環境も必要である。また遺伝的特性に合わせた競技種目の選択やプレースタイルの確立といった考えも必要である。例えば筋肉についていえば速筋性と遅筋性といった筋肉質は生まれながら決まっている側面が大きい。トレーニングでもある程度その性質を変えられるが大幅に変化させることはできない。スポーツで勝つためには自分の筋肉質を見極める必要がある。
(感想)スポーツにおいて自分が何らかの成果を出せず、その際の無気力感を学習してしまい運動嫌いになってしまう人がいるが、そういった人の念頭にあるスポーツ観というのは競争という側面すぎない。健康増進を目的にしてもいいし、楽しむスポーツとしてニュースポーツなどより広いスポーツに触れてみたりスポーツ観戦やスポーツ漫画を読むなど様々な手段でスポーツを日常に取り込んでいくともっと人生が豊かになるといった考え方が大事だと思う。(1504文字)
参考文献
・遊びと学習について
高橋たまき、中沢和子、森山四朗『遊びの発達学 展開編』培風館 1996年
・素足の重要性
金尚武 佛教大学スポーツ科学 8/1、8/2 の講義資料
・スポーツと学習について
大阪体育大学体育学部編 『基礎から学ぶ体育・スポーツの科学』大修館書店 2007年
平野裕一「2,スポーツパフォーマンスの制限因子 ―体力と運動技術―」放送大学大学院文化科学研究科『才能教育論―スポーツ科学からみて―』放送大学教育振興会 2002年
中込四郎、伊藤豊彦、山本祐二「Ⅲ運動の学習と指導」『よくわかるスポーツ心理学』ミネルヴァ書房 2012年
・スポーツと遺伝について
谷本道哉 編著 石井直方監修「1章 2、筋肉の質は生まれつき?」「1章 7、運動能力は遺伝するの?」『スポーツ科学の教科書』岩波ジュニア新書 702 2011 年
山本義春、渡辺哲司「3,運動能力とその発達における遺伝性」放送大学大学院文化科学研究科『才能教育論―スポーツ科学からみて―』放送大学教育振興会 2002年
・授業で取り上げた食の安全、放射線のリスクなど身体の健康について
(感想)様々な健康言説があるなかでどのような言説がより確からしいかを判定できるようになるためには、科学という分析方法の原理について学び、化学、物理学、生物学、(できれば栄養学、医学なども)基礎的な教科書を大学レベルまで一通り理解し、積み上げられたデータを適切に活用する方法を学び不適切な論証の例を覚える。言説の政策決定レベルでの正しさといった一般化された形の正しさを論証するには社会学、経済学、政治学なども学ぶ必要があるが、自分自身の健康増進が目的なら行動分析学のような方法でじぶん実験をするので充分である。しかしより一般的な議論に踏み込むのならば定量的な議論を疎かにして授業するべきではないと自分は思った。もっと時間をかけて応用の利く知識を身に着けさせる参考文献をリストアップして配るべき。
・授業で取り上げた食の安全、放射線のリスクなど身体の健康について
☆食の安全について定量的な議論で勉強になった本
成田崇信『管理栄養士パパの親子の食育BOOK』メタモル出版 2015年
岩田健太郎『食べ物のことはからだに訊け!』筑摩書房 2015年
阿部尚樹、上原万里子、中沢彰吾『食をめぐるほんとうの話』講談社 2015年
☆行動分析学についての入門書
島宗理『使える行動分析学 じぶん実験のすすめ』筑摩書房 2014年
☆放射線科学および放射線医学についての定量的議論を重視した入門書
・中学生むけ
菊池誠、小峰公子『いちから聞きたい放射線のほんとう』筑摩書房 2014年
・高校生むけ
田崎晴明『やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識』朝日新聞社 2012年
・大学生・一般向け
児玉一八、清水修二、野口邦和『放射線被曝の理科・社会』かもがわ出版 2014年
中西準子『原発事故と放射線のリスク学』日本評論社 2014年
☆近藤誠批判について
・ブログ
押川勝太郎 (医師、NPO法人宮崎がん患者共同勉強会理事長)
・書籍
勝俣範之『「抗がん剤は効かない」の罪』毎日新聞社 2014年
NATROM『「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!』メタモル出版 2014年