抑圧的寛容
管理社会状況における寛容の逆機能を表わした H.マルクーゼの概念。
本来、諸個人の思想や表現の自由を保障する民主主義的な徳であった寛容が、高度に発達した産業社会においては無差別な寛容へと転化した状態をさす。 その寛容の対象は個人の内面の自由から体制の支配構造にまで無差別に拡大している。
そのなかで少数者の見解が寛容されるのはそれが効果を生まないからである。
そのため寛容は従来の解放のための概念というより、むしろ社会対立の争点を曖昧にして支配構造の安定をはかる抑圧的な概念に変容したといわれる。