帰属理論
我々は、人の行動を観察して、なぜ彼・彼女はそうしたのかを説明しようとする。
われわれは自己や他者の行動、出来事について、その原因を推論し、自己や他者の内的な特性・属性に関する知識をえる。 こうした帰属過程に関する理論の総称を帰属理論とよぶ。
この帰属理論を最初に提唱したのはハイダーである。
ハイダーは、人々は断片的であれ、対人関係に関する素朴な理論や知識をもって対人関係を営んでいる。 それゆえ心理学はこの人々の素朴心理学を学び、それを再構成する必要があると考えた。
ハイダーは内的帰属(行為者の能力、性格に帰属させること)と外的帰属(環境、状況などに帰属させること)という概念を提唱。
その後、
ケリーの分散分析(ANOVA)モデル、
ジョーンズとデーヴスの対応推論理論、
ベムの自己知覚理論、
シャクターの情動のラベリング理論、
ウィナーの達成場面における成功・失敗の原因帰属の理論
などが提出されている。
成功や失敗をした場合、その原因をどこに求めるかについての理論。
原因の所在(自分の内部か外部か)と安定性(変更可能かどうか)からなる4つのパターンでとらえる考え方で、心理学者のワイナーによって提唱された。
課題そのものがやさしかったから、または難しかったから(外部に帰属/安定)
運があったから、なかったから(外部に帰属/不安定)
能力があったから、なかったから(内部に帰属/安定)
努力したから、しなかったから(内部に帰属/不安定)
なお、原因を自分の努力に帰属させる人は、内発的動機づけが高く、仮に失敗した場合でも、目標へ向けて再度挑戦していく意欲を持てるという。 説明要因は、行為者の内的な要因と外的な要因(不可抗力など)に大別されるが、その決定は、差異性、一致性、一貫性の3 つの要因に依存することが知られている。
差異性(distinctiveness)
その行為者は、異なる状況下では異なる行動をとるかどうか。
一致性(consensus)
同じ状況下にある者は、みな同じように行動するかどうか。 一貫性(consistency)
その行為者は、いつも同じ行動をとるかどうか。
また、他人の行動は、その人の性格など安定的、内発的な要因から引き起こされたと考えるのに対し、自分の行動は、環境要因によって引き起こされたと考える傾向もある(the fundamental attribution error)。 さらに、こうした「帰属」は、将来の行動やその解釈にも大きな影響を持つ。
今日では帰属過程はモデルで必ずしも説明できるものではなく、認知要因や自尊感情などによって誤りやバイアスが生じやすいものであることが明らかにされている。