師弟歓談:葵(源氏物語)
放課後の教室。窓の外にはやわらかな夕焼け。
ふーこ.icon
「ねえ先生、『葵(あおい)』ってさ、源氏物語の中でもなんか…ドロドロっていうか、修羅場って感じじゃね?マジで情緒ジェットコースターなんだけど」
けいこ先生.icon
「“ドロドロ”ではなく、“人の心の複雑な揺れ”と申したほうがよろしいでしょうね。でも、たしかに激しい感情が描かれている場面ではありますよ」
ふーこ.icon
「あーそれそれ、“心の揺れ”。でもさ、六条御息所の生霊とか、ちょっとホラーじゃん。平安時代ってそういうのガチで信じてたの?」
けいこ先生.icon
「ええ、当時の人々にとっては、生霊や物の怪は現実の一部でしたの。特に強い嫉妬や執着は、魂となって現れると考えられていました」
ふーこ.icon
「え、じゃあ嫉妬ヤバいと分離して攻撃しにいくってこと?怖すぎん?」
けいこ先生.icon
「“怖すぎる”というより、“それほど人の想いは強い”と受け取るべきかもしれませんね。六条御息所は、愛されない苦しみや誇りの高さゆえに、感情を抑えきれなかったのです」
ふーこ.icon
「でもさ、葵の上ってちょっと不憫じゃない?正妻なのに、なんかずっと被害者ポジっていうか…」
けいこ先生.icon
「“被害者の立場にある”と表現すると上品ですね。確かに、葵の上は気位が高く、源氏とは距離がありましたが、それでも理不尽な運命に巻き込まれた人物です」
ふーこ.icon
「うんうん、なんかクール系女子って感じなのに、報われなさすぎてつら…。てか源氏、モテすぎて逆にトラブルメーカーじゃね?」
けいこ先生.icon
「“魅力があるがゆえに周囲を巻き込んでしまう人物”と申し上げましょうか。源氏の光と影、どちらも描かれているのがこの物語の魅力です」
ふーこ.icon
「なるほどね〜。ただの恋愛話じゃなくて、人間関係の闇深ストーリーって感じか」
けいこ先生.icon
「“人間の本質に迫る物語”といえますね。愛、嫉妬、誇り、そして無常。すべてが織り込まれています」
ふーこ.icon
「うわ〜、千年前なのに人間関係バグってる感じ、今と変わんなくて草」
けいこ先生.icon
「“時代が違っても人の心は変わらない”――そのように言い換えると美しいでしょう」
ふーこ.icon
「はい出ました先生のエレガント翻訳!でもマジで納得。なんか、ちょっと葵の章ちゃんと読みたくなってきたかも」
けいこ先生.icon
「それは嬉しいですね。物語は、知れば知るほど味わいが深まりますから」
夕焼けが少しずつ紫に変わる中、ふーこは教科書をぱらぱらとめくり始めた。