専門主義の野蛮性
狭い専門のことを知っている人間が、専門外でもすべて知っているかのような傲慢さを発揮する。
J・オルテガが、その著書『大衆の反逆』(1930年)の中で近代社会は、民主主義や科学技術を享受するが、その本質や価値に無関心な「新しい野蛮人」(知性の欠如した大衆)が増大すると予言している。 この知性の欠如した大衆の典型が科学者・大学教授であり、彼らは「専門主義の野蛮性」に陥ってい る、と鋭く問題を指摘した。
学識のある無学者の中でも、とりたてて理解しているわけでもないのに、専門外のことも同じようなものだと、知っているかのように振る舞いがちな者がいます。
このような、無知であることを知らないまま傲慢に振る舞う科学者・技術者は、きわめて野蛮で残酷な存在であり、(当時の認識では)ヨーロッパの倫理性を破壊しているのだとガセットは指摘し、彼らを「専門主義の野蛮人」と呼んだのです。
無知を自覚して、幅広く素養を身につけようとし、失敗から謙虚に学ぶ姿勢こそ、持っていなければならない倫理性だと。