LtVPickUp~Can French gigafactory Verkor avoid Northvolt’s fate?_250415
▼ケース記事
▼記事の要約
フランスのVerkorとスウェーデンのNorthvoltは、ヨーロッパにおけるEV(電気自動車)向けバッテリー生産の覇権を争っており、それぞれが「ギガファクトリー(大規模工場)」の建設を進めています。 Verkorは13億ユーロ(約2,100億円)以上の資金調達に成功し、フランス・ダンケルクに最初のギガファクトリーを建設中。
Northvoltはすでにいくつかの工場を稼働させており、フォルクスワーゲンやBMWなどの自動車大手との提携も進めて優位に立っている。
Verkorはフランス政府の支援、ルノーとのパートナーシップ、そしてグリーンファイナンスを活用して競争力を強化。
EU全体として、アジア(特に中国)へのバッテリー依存から脱却するための戦略を進めており、この流れが両社の成長を後押し。
両社とも「持続可能で低排出な製造体制」の構築を目指しており、クリーンテックと産業主権が鍵となっている。
▼初期仮説
初期仮説(個人的にはこういう点が起業家にとっても価値だと思うので深掘りたいッス、な論点)
政府・地域経済に対する“戦略性”が、資金調達成功に直結する。
“グリーン”や”サステナビリティ”はBuzzwordで終わらず、実質的なバリュードライバーになれる。
▼事前リサーチ by ちょ
なぜサプライチェーンは分断し、各国が自前のギガファクトリーを求めるのか?
地政学リスクの増大(米中対立・台湾有事リスク)
サプライチェーンの“単一依存”が国家リスク=経済リスクになった。
半導体:台湾TSMC依存 → 米・日・欧が国内製造を急ぐ(CHIPS Actなど)
バッテリー:リチウム精製や電池セル製造 → 中国に7割以上依存
COVID後は特に、「1つの国のロックダウンが世界全体の製造を止める」経験がトリガーに。
グリーン産業競争:EV・再エネをめぐる国家間レース
バッテリーは「EVの心臓部」=エネルギー×自動車×安保が融合した“戦略物資”。
EU:Net-Zero Industry Actでクリーンテック製造を域内化へ
米国:IRA法(インフレ削減法)により米国内製造に補助金数十兆円
日本:電池、半導体を経済安全保障法の「特定重要物資」に指定
“調達”から“主権”へ:製造能力は経済主権の象徴に
ギガファクトリーは単なる工場でなく、国家が自立的に産業を回す象徴になった。
例:Verkor(仏政府が最大級支援)、Northvolt(EU+NATO系資本参入)、Tesla(独・米で自社工場)
製造=雇用・知財・自国通貨の安定にも寄与
今や「グローバルで安いところから調達」は通用しない。自国 or 同盟国での製造がキーワード。
EV産業構造の変化:バッテリーが“差別化コア”になった
昔の自動車産業と違い、EVではバッテリー性能が価値の大半を占める。
エネルギー密度、充電速度、安全性、コストすべてがバッテリー依存。よって、外注ではなく内製化・近接製造化が求められている
Q. 自社のビジネスがどの公共課題(経済安全保障・脱炭素・雇用創出など)と繋がっているかを明文化できている?
特にインフラ系はどんなroad-mapしているか
経済安全保障・産業基盤強化
関連公共課題:
サプライチェーンの強靭化(中国依存脱却)
戦略物資の国産化(半導体、電池、レアアース)
国内製造・雇用の再興
代表ロードマップ・戦略:
日本「経済安全保障推進法」2022年施行 特定重要物資(電池・半導体・医薬品等)に関する供給網強化(資金支援・特区)
脱炭素・グリーンインフラ
関連公共課題:
2050年カーボンニュートラル
再生可能エネルギーの普及・送電網の最適化
ESG投資の拡大
代表ロードマップ・戦略:
日本「グリーン成長戦略」2020年策定 脱炭素14重点産業(バッテリー、水素、CCUS等)に政府支援と官民投資促進
「EU Green Deal / Fit for 55」CO2削減義務化+インフラ補助金。産業界への移行支援パッケージ
通信・AI・インフラDX
関連公共課題:
国家デジタル基盤整備
半導体/クラウド/量子コンピューティング基盤の構築
スマートシティ・スマートファクトリー
代表ロードマップ・戦略:
日本 デジタル田園都市国家構想:地方のインフラDX、スタートアップ支援、5G・AI導入
「EU Chips Act」:半導体製造基盤強化、スタートアップ支援、研究機関連携
Q. なぜ“グリーン”や”サステナビリティ”はBuzzwordになりやすいが、バリュードライバーになりにくか
Buzzwordになりやすい理由
「言うは易し、測るは難し」
サステナビリティは定義が広すぎて、KPIやROIが曖昧。
ESGの「E」すら、“Scope 1/2/3の排出量”、“ライフサイクル評価”、“カーボンクレジット”など多義的。
投資家もスタートアップも「どう測るか」に苦戦。
定量化できないものは、VCにとってリスク高すぎる。
短期収益と中長期インパクトの“時間軸ミスマッチ”
ESGは中長期の正義、VCは短期のExitに縛られがち。
「環境によいこと」は10年後のROIに繋がっても、VCのファンドライフ(5〜7年)では回収しにくい。
短期指向の投資家からは“いいことしてるだけ”に見えがち。
グリーンウォッシング問題
スタートアップも上場企業も、ESGを“マーケ要素”として扱ってしまうケースが多い。
本質的な取り組みではなく、「パワポ映え」してるだけ。
バリュードライバーとして機能しにくいのか
収益構造に直結しにくいモデルが多い
例:カーボンフットプリントの削減=コストが増える可能性も。環境対応製品でも、プレミアム価格を払う市場が小さい。
VCの評価指標が“グリーン”に最適化されていない
特にSaaS・Fintech系VCにとって、グリーンインパクトは「感情的メリット」であり、「数値上の強み」にはならない。
グリーンテック系VCやCVC(コーポレートVC)にしか響かないケースが多い。
Q.真のバリュードライバーになるために必要なものは何か
数値で語れる「影響指標(Impact KPI)」がある。「どれだけ環境負荷を減らしたか」を、“証明可能な数字”で持っている。例:
CO₂削減量 / 顧客あたり / 単位コストあたり
省エネ率 or 電力コスト削減率
水資源使用量の削減パーセンテージ
使い方:
これらをLTVや粗利、CACとセットで出すことで、「サステナが経済合理性に繋がっている」ことをVCに示せる
サステナが“技術・コスト構造”の中に組み込まれている。ESGが“付け足し”ではなく、事業の中核技術やビジネスモデルに内包されている。例:
熱制御技術での省エネ化 → コスト削減と環境貢献が直結
電力需要の分散最適化(P2Pエネルギー) → 社会インフラ変革と高マージンが両立
ポイント:
「グリーンなことをやっている」ではなく、「グリーンであることが競争優位」になっているか?
マーケットバリューとして伝わる“即効性”がある。長期的意義ではなく、3年以内の経済的成果として語れる。例:
グリーン仕様により大手顧客(ESG配慮企業)との契約獲得に成功
補助金/税優遇での資本コスト圧縮 → 資金調達のスピードアップ
ポイント:
投資家の時間軸(Exit 5〜7年)にハマるインパクトを明示できるか?
脱炭素/ESGの“制度トレンド”を先取りした設計。「グリーンはトレンド」ではなく、「規制を読んだビジネス設計」ができている。例:
EUのCBAM(炭素国境調整メカニズム)を想定し、製造過程のCO₂を極限まで可視化
日本のグリーン成長戦略に組み込まれた業界でスケールを設計
特定の投資家にとって“戦略的テーマ”になっている。ESGがまだ一般VCに刺さらなくても、CVC・ESG専門ファンドにはど真ん中。
対応策:
「社会課題 x 技術解決」 を掲げるインパクトVC
SDGs/脱炭素コミットの強いCVC(エネルギー・物流・素材系など)
公的ファンド(NEDO、JIC、EU Green Deal資金など)
▼結論
結論(リサーチの結果、個人的にはやっぱりこういう点が起業家にとっても価値だと思うッス、な論点)
“グローバル最適”ではなく“リージョナル勝者”を狙う設計思想
製造・エネルギー系は特に「域内自立性」が重視される(例:EU域内バッテリー製造要件)
起業家にとっては、「どこに拠点を置くか」=最初の戦略意思決定
“政策とのアラインメント”がプロダクトマーケットフィットと同等に重要
ルール変更が多い時代だからこそ、“政策にフィットする設計”が爆速スケールを可能にする
“脱炭素 × 経済合理性”のロジック構築が投資家を動かす
「良いこと」ではなく「儲かること」を示す必要がある
脱炭素 = コスト削減、供給安定、ESG契約の獲得などに直結すれば強い