原作改変
今起きてる原作改変の問題は、原因がどちらかというと契約や組織にあったのと炎上が広がりすぎて、とてもじゃないけどSNS上で言及できるとは思えない
ただその話と分離して、映画やドラマが原作と全然違うものになるのはいいのか悪いのか自分の中でも整理ついてないなあと思った
で、進撃の巨人の脚本としても最近言及されていた町山智浩がこの件で無言なのが気になって、彼の評論を一つ購入して聞いてみた
聞いた結果、町山氏がこの件に言及しないことには非常に合点がいった
町山氏は「原作改変」については賛成の立場で、原作を維持すべきというファンの立場に対してそれは意味があるのか、とまで言っている
原作を改変した結果名作になった作品の例を大量にあげており、そのプラスがあることが良いしそれがなければ原作を超えることはない、原作という枠を取っ払うべきみたいな立場
映画にとってストーリーよりもキャラクターが一番大事であり、役者という媒体を通じてキャラクターが実在し自分で考えてしゃべっているという奇跡を見ることが醍醐味である、とも言っている
映画のメディアとしての特色は役者の存在で、役者の実力によってはそのキャラクターが映画そのものを乗っ取ってしまうとも
それ自体は面白いなと思った。メディアによってキャラクターの重要度とか機能が変わってきそうだな
その主張をすでに述べている以上、これ以上喋る必要はないし、SNSでそれを発言しようものなら別の論点と接続されて大炎上待ったなしだと思われる。SNSで言及して得がない
ともあれ、自分はどちらかというと漫画を描いたりするほうなので原作に同情しやすく、そんなに同意できないなと思った
ストーリーというのは自分の人生を切り売りしている部分があり、そこからどういうメッセージを伝えるかというのは創作のモチベーションそのものだったりする。
その枠組だけ使われて別の主張を語られたらそりゃシンプルに腹立つだろって思う
改変がめちゃくちゃ腹立つからこそ、同一性保持権というものがあるんだろうと思う
そんなに原作改変が怒られる風潮なかったはず、それは過剰だよというのもまあそうかもしれないけど、現状そうなってるからそれでいいってことにはならない
あくまで映画作者や映画ファンにとって都合の良い主張だよなと思った
ブレードランナーでリドリー・スコットが原作読んでないとかも知ってウゲーって思った。まあ原作者がそれでいいならいいのだけど。でも原作のほうが面白いと自分は思う。
映画監督と原作者が対立したり批判関係にあったりするのは面白いけれど、原作者ってそれで大した収入にならないんだったらひたすらやりたい放題されたうえで搾取されてんじゃんって思ってしまう
自分はそもそも映画文化がそんなに、いや全然好きじゃないから、特殊な立場だと思う
でも二次創作とかは好きなケースがあるから同じ穴のムジナではあるかな
結局二次創作的なものが映画では普通に行われていて、それが受け入れられているし実際おもしろいので、それを世の中が許容したほうが面白くていいじゃんって話なのだと思う
今回に関しては論点の一部に原作改変というのがあったけど、問題のコアは契約の軽視なのでまあ別の問題ではある
それはそれとして自分としては二次創作なんて普通にグレーなものでそんなに大っぴらにやってないよって思う
映画が二次創作を堂々とやって商売にしてんの、作家の立場をシミュレートするとかなり腹立たしい慣習じゃない?って思った
腹立たしいからアメリカだと原作者が映画を殴っていることもあるようで、それは落とし所だと思うのだけど、日本だと殴り合いをするとみんなが止めに来たり変な助太刀が入ったりで荒れがちなので日本向きの考え方ではないなと思った
日本でそういう風潮にするなら、原作者が映画をクソってどんどん言うべきなんだろうけど、配慮してあんま言わないよね
パブリッシャー同士が仲良すぎで、批評が機能しにくいし原作者の発言も自由にならないって構造がありそう
もしかしたら日本の風土の問題であって、殴り合いとか訴訟合戦にじゃんじゃん発展したほうが、結果的には誰かが我慢するようなことも減るのかな?
まーでも日本で面白いものが生まれる土壌って、アンダーグラウンドで目こぼしされながら熟成されるみたいなケースが多い気もするなあ
まあとはいえ自分が大っぴらに原作改変をするなってSNSで主張して立場を固定してしまうのはおいしくないなとも思う
原作改変が許容されている文化圏で作られた面白いものを享受しないのは単純に損だろうと思う
町山氏が上げていた映画は面白そうだったので見てみたい
二次創作シーンも完全に同罪だけどお目溢しがあるおかげで面白いものもある
ただ言行不一致で申し訳ないけど、SNS上で言及することがあれば原作に敬意持てや!って言うと思う
同一性保持権がある以上それがルールだと思うので大っぴらにはそう言う
自分は原作者側の立場に近いので感情移入もしてしまう
自分は漫画家の作家性とか人格、その物語が生み出された背景なんかも無意識に重視しているので、メッセージそのものを変えるということはむごいな、と直感的に思ってしまう
二次創作が面白いことに異論はないけど、今の映像制作側はそれを当然としてちょっと横暴になってんじゃないのと思う
多分自分は日本の二次創作シーンがあくまで控えめなシーンであって、公式と一線を引いてることを知っているので、映画側の慣習がいびつに見えるしそのほうが面白いって言われても、こっちではそうせずにやってますけど?ってなっちゃう
まあ自分とかは映画とかテレビドラマなくなっても困らんなと普通に思っている人間なので、相当特殊な立場だと思う。とはいえ漫画原作者は映画好きが多いので間接的には映画文化のお世話になっているのだろう。
Scrapboxではこのように相当ソリッドな毒を吐いてしまうけど、お互い様のことが多いし、白黒つけていいことなんてそこまで多くないということは自覚してオブラートに包んで出力するようにしたい。
不幸にもこれを読んでしまった人はなんて偏屈なやつだって思うだろうけど、酒でも入らない限りこの主張を直接喋ることはないはず。多分
あー、これ上記の町山氏への反論にもなるなあ
俳優のために原作をどっかから拾ってくるみたいな構図を作り得てしまうのではないだろうか
っていうかハリウッドのやり方が別にいいわけではないじゃん