質より量
授業の初日、フロリダ大学のジュリー・ユルズマン教授は、フィルム写真のクラスの学生をふたつのグループに分けた。 教室の左側の学生は全員、「量」のグループだと彼は説明した。このグループの学生は、作った作品の量だけで採点される。授業の最終日に、各学生が提出した写真の枚数を総計する。一〇〇枚なら評価はA、九〇枚ならB、八〇枚ならC、という具合だ。 一方、教室の右側の学生はみな「質」のグループになる。彼らは作品の出来栄えだけで採点される。学期中に制作する作品は一枚だけでもいいが、Aをとるには、ほぼ完璧な写真でなければならない。 学期が終わると、教授が驚いたことに、すばらしい写真はすべて「量」グループの作品だった。学期中、このグループの学生たちは、写真を撮ったり、合成や光の工夫をしてみたり、暗室でさまざまな手法を試したり、失敗から学んだりと、とても忙しかった。何百枚もの写真を作成するなかで技術を磨いていった。そのあいだ、「質」グループはただすわって、完璧さについて考えていた。そして結局、努力を示せるものはほとんどなく、信憑性のない理論と平凡な写真ができただけだった。
*これと同じような話が、デビッド・ベイルズ&テッド・オーランド著『アーティストのためのハンドブック――制作につきまとう不安との付き合い方』(フィルムアート社、2011年)にも載っている。ここでは、許可を得たうえで少し修正した。詳細については、巻末の注釈をご覧いただきたい。