引用
形式を守って文献資料を引用する
1. なぜ引用をするのか
主張 claim を支える(裏付ける)情報 = 根拠 data や、示した根拠が主張の裏付けとなる理由 = 論拠 warrant の信頼性を高めるために行う。
形式を守って引用すると、根拠/論拠(である情報)の出所(出典)を示すことができる。→ 根拠/論拠の信頼性が高いことをアピールできる
形式を守って引用すると、書き手自身の考え(アイデア/ロジック)の独自性を示すことができる。
書き手の考えと他者の考えにおいて、関連している箇所と違っている箇所を示すことは非常に大切である。
レポートや論文では、結論(主張)がどのような思考の過程を経て導き出されたのかを示すものである。 → レポート(論文)のオリジナリティを示すこと
出典:大島弥生ほか, 2005年, 『ピアで学ぶ日本語表現』ひつじ書房の一部を改変。
2. 引用の形式(やり方)
引用を行う場合、レポートや論文の文章中においてどの部分が、どこからの引用なのかはっきりと示さなくてはならない。
引用の形式(やり方)は2つある。引用元の文章をそのまま「 」(カギ括弧)に入れて引用する形式(直接引用)と引用元の文章を要約して引用する形式(間接引用)の2つである。
間接引用は文章力上級者が使う高等テクニック!
なぜなら、文章を要約する力も必要だから。
引用の形式(直接 or 間接)を問わず、レポートや論文にて引用した文献(資料)は全てリスト化し、レポート(論文)の最後に記載しなくてはならない(引用文献リスト)。
2-1. 直接引用
直接引用の形式の例を以下に示す。直接引用を行うときには、引用元の文章を書き換えたり、要約してはならない。引用文の「 」と一緒にどこからの引用なのかを示す注(引用注)も必ず付ける。
例では、山田という人が1992年に執筆した書籍(架空のものです)を引用したとする。( )や 。(読点)の位置に注意すること。
1. 「〜〜としている」を使う例
山田(1992)は、多産他死から少産少死への変化は「日本の社会構造をも大きく変えた」(p.102)としている。私はこの見解に賛成する。しかし、この変化を社会構造変化の原因と見なさない立場もある。たとえば、…。注)下線部が引用箇所(引用文)
2. 引用を示す動詞※を使う例
山田(1992)は、多産他死から少産少死への変化は「日本の社会構造をも大きく変えた」(p.102)と述べている。私はこの見解に賛成する。しかし、この変化を社会構造変化の原因と見なさない立場もある。たとえば、…。
3. 「〜〜によると、〜〜という」を使う例
山田(1992)によると、多産他死から少産少死への変化は「日本の社会構造をも大きく変えた」(p.102)という。私はこの見解に賛成する。しかし、この変化を社会構造変化の原因と見なさない立場もある。たとえば、…。
4. 文章の中に入れこむ例
多産他死から少産少死への変化は「日本の社会構造をも大きく変えた」(山田 1992, p.102)のである。私はこの見解に賛成する。しかし、この変化を社会構造変化の原因と見なさない立場もある。たとえば、…。
2-2. 間接引用
間接引用の形式の例を以下に示す。引用したい文章の量が多い場合(明確な基準はないが、引用元の文章が数行以上にわたる場合)は要約して引用する。直接引用の場合とは注引用注の付けかたが若干異なるので注意すること。
例では、山田という人が1992年に執筆した書籍(架空のもの)と、荒井という人が1998年に執筆した書籍(架空のもの)から要約して引用したとする。( )や 。(読点)の位置に注意すること。
1. 「〜〜としている」を使う例
山田(1992)は、果樹栽培が行われた理由を、平地が乏しいというF市の自然状況によるものであるとしている。これに対して、荒井(1998)は、F市の漁業者の約半数が果樹栽培に転業したとしている。これらの研究成果から、私はF市のケースをつぎのように判断する。すなわち、…。
2. 引用を示す動詞※を使う例
山田(1992)は、果樹栽培が行われた理由を、平地が乏しいというF市の自然状況によるものであると述べている。これに対して、荒井(1998)は、F市の漁業者の約半数が果樹栽培に転業したことを指摘している。これらの研究成果から、私はF市のケースをつぎのように判断する。すなわち、…。
3. 「〜〜によると、〜〜という」を使う例
山田(1992)によると、果樹栽培が行われた理由を、平地が乏しいというF市の自然状況のためであるという。一方、荒井(1998)によると、この時期にF市の漁業者の約半数が果樹栽培に転業しているという。これらの研究成果から、私はF市のケースをつぎのように判断する。すなわち、…。
4. 文章の中に入れこむ例
果樹栽培が行われたのは平地が乏しいというF市の自然状況のためである(山田 1992)。また、この時期にF市の漁業者の約半数が果樹栽培に転業している(荒井 1998)。これらの研究成果から、私はF市のケースをつぎのように判断する。すなわち、…。
※ 引用を示す動詞には、〜と書いている/分析している/説明している/指摘している/考察している/主張している/言っている/定義している/見なしている/結論づけている、などがよく使われる。
2-3. 引用文献リスト
引用した文献(資料)の著者名(発行機関名)を「あいうえお」順または「ABC」順に並べたものが引用文献リストである。
同じ著者の、複数の文献をそれぞれ引用した場合、発行年の古いものを先に挙げること。また同じ著者が同じ年に執筆した複数の文献から引用した場合、発行月の古いものから順に、「年」の後へアルファベットをつけること。
細かい「、」や「。」の付け方、ページ数の示し方など、専門分野によって例と異なる場合もあるので、各自で確認しておくこと。
荒井波子(1998)「昭和30年代の漁村における構造変化」『東京○○大学論集』33, pp.55-67.雑誌論文の場合
黒沢みなも(1998a)『農村社会学の理論』いろは書店書籍 (単行本)の場合
黒沢みなも(1998b)『農村社会学の実践』にほへ社書籍(単行本)の場合
小林みどり・大久保一郎(2001)『新しい農村漁村のライフスタイル』△△書房書籍(単行本)の場合
日本経済新聞(2013)11月1日付朝刊「農村の活性化モデルを調査 東大山田研グループが提言」新聞記事の場合
山田次郎(1992)『日本の社会構造−あらたなモデル作りをめざして−』××出版社書籍(単行本)の場合
和田マリ(2003)「地域産業の活性化」磯野三郎編『明日の地域社会のために』◇◇大学出版会書籍(単行本)のひとつの「章」の場合
書籍名や掲載雑誌名は『 』(二重カギ括弧)の中に入れ、掲載雑誌や論文集の中の論文タイトルは「 」に入れておくこと。
ここまでの出典:大島弥生ほか, 2005年, 『ピアで学ぶ日本語表現』ひつじ書房, pp.80-83 の一部を改変。
社会学を学ぶひと向け情報
社会学のレポートや卒論を書く際に、特にこれらの章を熟読しよう。