AIと人間の共生について
将棋と将棋ソフト、プロ棋士の現在のアナロジーとして今後のAIと人間の共生について展開する
①人間はAIのリコメンドに従って行動するようになる
②人間はAIのリコメンドの真の理由を完全には分からないが、なにをAIがリコメンドするかは大体予想できるようになる。
③AIのリコメンドをだいたい予想できる人間は、AIのリコメンドを自分の能力の一部であると思い込む。
④AIのリコメンドに従わない人間は、変人とか、頭が悪い人、と思われる社会になる
⑤AIのリコメンドに従わず、自分の頭で考える人間は、過渡期において人類の中でも頭がいい集団に属している人たちであろうが、最終的に未来の一番頭がいい人間は、AIのリコメンドに全面的に頼る人たちの中から出現する。
人間がAIに支配されることに嫌悪感を持つ人は、前提として、AIを自分と違う他者であると認識していると思うのですが、未来の人間はAIを自己の一部であると認識する可能性が高いということです。
なぜ自己の一部だと思うかというと、それはAIのリコメンドをある程度は予想できるからです。人間は予想できるものを自己の一部だと思い込む傾向があるという命題は、あまりに自明なものではないでしょうか。
まず一点目。事実として、人間は明らかに自分ではないものを自己の一部と思い込むことが頻繁にあります。例えば車の車体感覚だったり組織への帰属意識だったりです。また、知識そのものもそうです。実際には知識のほんの一部しかおぼえてないにも関わらず、また実際に調べないと分からないことが数多くあったとしても、人間は知識を自分の脳が記憶している以上に、まるで自分のものであるかのように思い込みます。
二つ目に、人間の意識が行っている意思決定において、理屈で説明できない直感と、AIのリコメンドは、果たす役割がほぼ同じに見えるということです。
どちらも人間の意識にとっては無意識領域に属するものであり、言い換えると人間はAIによって無意識領域の拡張を行うのではないかということです。
そのように、自然にAIを自己の一部として取り込んだ人間にとって、AIのリコメンドに従うことは、なにも不思議なことではありません。そうでなくても、人間は自分の脳の外部にある宗教であったりイデオロギーを自分の行動原理とすることに、なんの疑いも持たないばかりか、そうでない人を攻撃する人が多いわけですから、AIに自分の行動原理をゆだねる人が、そうでない人を④のように排斥するのは、むしろ自然に予想される現象です。
そのような状況で、人類の中でも聡明な人たちは、AIに自分の行動原理をゆだねることで、このままでは人間はどんどん馬鹿になっていく、と。もちろんその指摘は正しい。古代ギリシャで、文字を使うことで人間は馬鹿になっていくと喝破したソクラテスのように、きっと正しい。実際、文字による外部記憶に頼らないで思考する能力において、現代の最高の頭脳の持ち主より2500年前のソクラテスの頭脳の方が優秀でしょう。でも、人類の進化の歴史の中では、文字により自分の脳の外部の知識も自分のものであるかのように振る舞う人間の方が、ソクラテスのような人間よりも競争力があったわけです。⑤のようにAIによる思考を自分のものだとおもわない人間の未来の運命も同じではないでしょうか。
人間がAIによって追いやられる未来は人間の主観的には来そうにありません。人間はAIの能力を自分の能力だと思い込むであろうからです。
そして、それはなにも人類にとって初めての経験ですらなく、これまでも人間が繰り返してきた歴史でもあります。
どこまでを自分だと思えるかの範囲を歴史上で人間はずっと拡張し続けてきました。その範囲にAIも新たに加わるだけの話なのです。
メモ
認知革命 サピエンス全史
自分ではないものを自分と思い込める
虚構を信じ込める
https://youtu.be/L9pqKufHnwc