導引機械
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『確かにいい時代になったさ、こんなに便利にな。ただ、“俺達を導いてくれる機械様”のおもり役ってのが気に障るけどね』
倫敦・ストランド街のある導引機械技師の言
<コラム:導引機械イマージュ>
重い音とともにギアが切り替わった。それとともに幾千幾万の歯車がその配置を変化させ、目的の計算結果を導き出すために、自らをプログラムへと移行させる。それを司るのは千万枚の『プログラム=カルテ』だ。機械の動く轟音の中で、カタカタパチパチと繰り返す微細な『彼』の心音が重なり合い、時間の流れを創り出している。あたかも世界が数式で構成されているかのように。時折、蒸気がバルブから吹き出す。その白く辺りを染めあげる『導引機械』の吐息は、倫敦の霧となり、テムズの河面をなで上げ、ウエストミンスターの時計台へと絡みついていく。
導引機械プレイヤー用情報
ここには導引機械についての設定などの情報が記されています。
導引機械とは何か
導引機械は、巨大な外観と超精密な内部機構を備えているという、複雑極まりない計算機械です。ほとんどのものは動力に蒸気機関と発条を用いています。
導引機械内の全ての計算は、物理的な過程を経ることで行われています。その構造は無数のギアと歯車、発条、クランクなどが複雑に組み合わされたものです。多くの導引機械には、パンチカード(『プログラム=カルテ』と呼ばれています)によるプログラム機構が組み込まれています。現在の導引機械のほとんどは、『導引機械教会』によって統一された専用言語によるプログラム機構を備えており、様々な用途に用いられています。このようなプログラムを行うことの出来る人間は、『導引機械技師』達に限られています。彼らは機械の修理やメンテナンスなども行います。
導引機械の外観には実にさまざまなものがあります。その機能によっても違いますし(もちろん高性能なもの程、大きな構造を持っています)、移動可能なモデルか、据置型かでも変わってきます。例えば近年流行している小型導引機械は、マホガニー製のライティングデスクのように見えます。デスクとして展開される開き戸を開けると、そこにはタイプライター状のキーボードと、回転ドラム式表示窓があり、簡易型の導引機械としての役割を果たすようになっています。このタイプはインテリア性と実用性を兼ねている点が人気の源となっているようです。また、貴族の屋敷の一室全てを利用したものや、壁に埋め込まれている導引機械も存在します。これだと移動の必要がない分、実用的な面に力を注げるという結果になっています。
導引機械のうち、最も有名なものの一つは『ビッグ・ベン』という愛称を持つもので、ウエストミンスター国会議事堂の地下に設置され、国会の運営に役立てられています。
このように導引機械は様々な利用が行われています。導引機械技師以外のプレイヤーキャラクターが多く目にするタイプの導引機械は、建物と一体化した巨大計算機や、街角の小型情報端末、個人商店などの小型機械です。
特に目を引くのは導引機械通信の情報端末でしょう。これは倫敦市内の銀行や街角、百貨店などに独立した空間を持つ『インフォメーションボックス(iBox)』内に設置された端末です。この端末では様々な情報を検索し、その結果をプリントアウトすることが出来ます。一般的なニュースなども、情報端末から機関通信経由で、ダイレクトに入手することが可能です。経済的なニュース、スポーツニュース、ゴシップなど、多くの情報が入手できますが、これらも、各利用者側のカードに記されたパンチ穴で、どの情報が配信されるかが管理されています。この情報端末の利用には、『導引機械情報サービス』に加入していることが必須です。
あまり一般市民には馴染みはありませんが、導引機械データベースは、最も導引機械らしい存在だと言われています。このタイプの導引機械は、例えばスコットランドヤードの『ピール卿』や、ウエストミンスター国会議事堂の『ビッグ・ベン』などが挙げられます。巨大なデータベースを検索するための巨大な導引機械が必要となっている現在、機械によってはメカニズムというよりはむしろ建築物と呼ぶ方がふさわしいものもあります。『ピール卿』には細密な点彫システムも備えられており、登録されている人物の顔のデータも引き出すことができます。このような導引機械検索を行うことの出来るキャラクターは導引機械技師に限られています。
導引機械で何が出来るのか
『導引機械』は、すでにヴィクトリア朝時代の英国社会に深く関係しており、社会生活はこの機械群を抜きにして考えることは出来なくなっています。小さなものではミシンで刺繍を行う時の調節を司るものから、果ては英国議会の行く先を占うといった巨大なものに到るまでの、ありとあらゆる形態の導引機械が存在しています。
計算は導引機械にとって得意な分野です。統計計算、推論、反復計算などの人力では時間が掛かる仕事も間違いなくこなします。これらの能力を応用し、暗号化された文章を解読するということも可能になっています。そこで企業や銀行では様々な事務処理に、ケンブリッジやオックスフォードなどの大学やその他の博物館等の学術施設では、仮説の検出のための統計検定計算や分析、シミュレーションのためにと、まるでその名の通り、『人々を導く機械』としての役割を果たしています。
さらに、様々な職業に応じて『導引機械』を利用した機械が製造されています。例えば、点刻した写真や図形を利用して複写を行う機械や、新聞雑誌の印刷の調節を行う機械などが開発され、すでに実用化されています。それらの機械を扱っている労働者の中には、導引機械が、各々の機械に含められていることすら考えもつかない者もいます。一方、導引機械を応用した機械群は、倫敦の職人達には受けが良いとはいえません。彼らにとっては、自分達の仕事を奪う悪魔として感じられているようです。ある職人はこう言います。「機械なんか信用できねぇやね。やっぱり長年の腕ってのがあるんだ。本物の紳士なら機械で作った安物なんかに手を出しちゃいけねぇ」 これは彼ら職人達の真実の心を語っているように感じられます。
目を転じると、百貨店などには導引機械情報サービスの端末が設置され、利用者は様々な情報を打ち出すことが可能になっています。導引機械を使用した情報サービスは様々な投資家が注目をしており、この分野はますます発展していくことでしょう。小型の導引機械は大きな商店でも作動しているところを見かけることができます。導引機械は日常の労働を手助けしてくれる便利な機械だと捉えられているのです。新聞には『貴女の苦労を1/2 に』とか、『最新の技術をお届けします』、『優美なシルエットで高性能を実現』といった、小型導引機械の宣伝文句が掲載されています。一部の裕福な階級では、インテリア的な視点で屋敷に導引機械を設置している人々もいます。そのような屋敷ではあくまでもインテリア的な側面が重視されており、その計算能力は余り活用されてはいないようです。
現在、導引機械は普及の時期に入っており、多くの業務は導引機械無しでは行うことの出来ない状況になっています。社会的にも完全に認知さており、『導引機械技師』は収入も良く、人気のある職業になっています。
導引機械情報サービス
倫敦の街角では、大きな通りの建物の角に、人が一人入れるほどの独立したスペースが設置されているのを見かけることがあります。これは『インフォメーションボックス』と呼ばれる、『導引機械情報サービス(Guiding Machine Infomation Service)』の端末が設置されている施設です。ここでは、導引機械通信網と、小型導引機械を利用した情報サービスが受けられます。このサービスは導引機械通信網が利用されています。インフォメーションボックスの利用者は、自分専用の利用者カード(パンチ穴の開いている三折りのカード)を開き、導引機械に設置されたスリットに差し込んで、暗証番号を打ち込みます。続いて、端末を操作することで、必要な情報を受けとることができます。これらの情報サービスの内容は各新聞社や、出版社、ロイターなどから提供を受けています。
情報サービスの会員間の機関通信はエンジンメール(略してe-mailという方が通りが良いかもしれません)と呼ばれます。これは基本的に全て暗号化されています。会員の持つカードとパスワードキーを用いないと正確な再現ができないようなシステムで、情報の機密性と安全性は一般の手紙や電報よりも強固なものです。このサービスを利用するには厳しい審査をパスする必要があり、年間の会費も割高なものです。当然ながら、エンジンメールのやり取りができることは、中流階級としては一つのステータスです。
事実、このパスワードシステムが、多くの産業資本家などの目を惹き、倫敦での整備が進んだのだとする歴史家もいます。しかし、これは違法取引などの情報も、外部に洩れないように伝達できることを意味しています。暗号鍵を当局が持つようにするという案も国会で提出されていますが、可決に至っていません。サービスを提供している『倫敦導引機械通信社』は、機関通信上の情報の解読は出来ないと主張しています。
導引機械情報サービスにおける情報共有にはバケツリレー方式による情報端末同士のやり取りが用いられています。伝統的にはこの情報のやり取りを行うのは、プログラム=カルテを徒歩や自転車で運ぶ『配信屋』で、導引機械協会に雇われ、専門の教育を受けています(教育手段は仮想人格を利用したものかもしれません)。彼らはそれぞれ決められた地区を担当しており、素早く、かつ安全な情報共有のために日々忙しく働いています。情報の倫敦全体における完全な共有には半日ほどかかりますが、比較的近い場所同士(地区内など)では数十分で情報共有が完了します。最近では気送管を使った情報共有ネットワークも普及を始めていますが、配信屋の労働組合からの強い反発があり、思うように普及していません。
導引機械マスター用情報
ここでは、マスターが導引機械をどのように扱うべきか、どのようにシナリオに取り入れるべきかが記されています。導引機械技師のキャラクターを担当するプレイヤーに対してはこの節の内容を全て伝えてください。
19世紀初頭、英国を席捲した『知性革命(Inteligence Revolution)』を経て、さらに前世紀からの産業革命の流れを受けて造り出された機械が『導引機械』です。導引機械は、その別称を『解析機械(Analytic Machine)』といい、基本的には機能的に拡大された物理計算機械です。
導引機械技師
『導引機械』という特殊な機械を修理したり改造したりする技術を持つのは、『導引機械技師』と呼ばれる特定の人々に限られています。彼らは特殊な経験を積むことによって導引機械に対する完全な知識を得ています。この修行は、『導引機械協会』の特別プログラムとして知られており、一般の人々にはその手続きが公開されることはありません。導引機械技師達も、彼らの身につけた非常に特殊な技術について詳らかにすることはありません。このようにして得たライセンスは、社会的に非常に信用の置けるものと見なされています。
導引機械技師達は、英国の主要都市に支部のある導引機械協会と提携関係にある様々な組織において、『導引機械検索』を行うことができます。導引機械検索は、様々なデータが集積される様々な組織の導引機械にアクセスし、迅速にデータを得るという技術です。このような検索資格のために、導引機械技師は社会的に需要の高い職業になっています。さらに腕が良ければ政府の組織によって雇われることもあります。導引機械協会と提携関係にある様々な組織は、導引機械を使ったデータベース検索を頼りにしています。警察の犯罪データベースや王立統計学協会のデータベースも、そのような提携関係にあるデータベースの一つです。警察も統計学協会も、導引機械技師なくては仕事がままなりません。もちろんこのような組織のデータベースを操作するためには、それぞれの組織と守秘義務を結ぶ必要があります。
また、導引機械技師は歯車プログラミング言語『バベッジ=エイダ式機械記述法』を身に付けており、導引機械を様々な用途に用いるために調整することができます。導引機械技師は導引機械協会において個人的な目的のために様々な計算プログラムを実行させることも可能です。
導引機械協会
過去に比べて導引機械を操作することは、比較的易しい作業となりましたが、この機械が大衆化する以前は、一種の専門家にのみ解放された行為としてみなされていました。その時代に、導引機械を扱う専門職の人々が創設した同業者組合が、『導引機械協会』です。この組織は、『より良いキリスト教的社会の実現のために、導引機械技術の大衆化と精錬化を行うこと』を第一の目標にかかげ、ビクトリア朝時代を通じて、排他的な、そして職人的組織として成長してきました。
『導引機械協会』は、正式名を『英国導引機械研究協会(Great Britain Guiding Machines Studying Association)』といい、全ての導引機械技師は、この協会に属さねばなりません。この協会に属していない技師は、導引機械についてほとんど全く知識を持っていないといえます。つまりこの協会はそれだけ秘密主義的な集団なのです。この協会のメンバー員になるためには、厳しいテストがあり、そのテストをパスすることによって初めて技術習得の資格を得ることが出来ます。このテストは年2回、4月と9月に行われます。大体年間の受験者数は100人を越えることは滅多になく、合格者数はその半数にも満たないといいます。テストに合格した者は1年以上を機械操作の修行のためにエジンバラ郊外にある寄宿舎で生活せねばなりません。全ての過程を終了した者に対しては、メンバー員としての証明と、銅でできた歯車型のバッチが与えられます。
現在導引機械協会は導引機械技師の養成以外にも、導引機械通信網の整備と通信網を用いた情報サービスを行うを抱えたかなり大きな組織になっています。この組織は導引機械協会と政府の共同出資によるものです。
導引機械演算コンテスト
導引機械技師の能力を高め、またユニークな機械の開発などを奨励するために、毎年『導引機械演算コンテスト』が開催されています。このコンテストは難問が多く出されることで有名で、チャレンジ精神旺盛な多くの導引機械技師達を熱狂させています。このコンテストでの優勝者は、間違いなく導引機械技師の中でトップクラスの腕とプログラミング能力を持っています。このコンテストで出題された過去の問題には以下のようなものがあります。
「n個の都市があり、都市の対ごとに距離が与えられているとき、すべての都市を通る巡回路で一番長さが短いものを求めよ(1890年出題)」
この問題はコンテストで最も難しいものの一つで、未だ完全な解は求められていません。1890年の時点で最も有効な近似値を提出した導引機械技師の名はビアトリクス・ポターという駆け出しの絵本作家です。
代表的な導引機械技師
倫敦で活躍する導引機械技師は何人もいますが、その中でもずば抜けて技術の高い技師は名前も売れ、社会的な地位も築いています。彼らはエンゲージシステムに対してより効率的かつ美しいプログラミングを行っています。
コークス・オーガスタ
ヘンリー・クックマン
ジャクソン・ハワード
データはNPCデータ集を参照して下さい。
ネタ
天導機械のあらゆるシャフトや歯車には聖句が刻み込まれてることが判明。
これによってマニ車と同様に「一回転につき一回聖句を唱える」ことで超時空体からの力を引き出している模様。
大気に刻み込む。むしろ時間の壁に刻み込んでるという感じで。