シナリオ作成のための道具立て
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TRPGをプレイする際に、絶対といって良いほど必要とされるものに、シナリオがあります。ゲームマスターは市販されている(または配布されている)シナリオを用いるか、自作によってシナリオを用意しなくてはなりません。市販されているシナリオは数が限られていますし、参加するPCの状況に合致しない場合もあります。ですから、大体のマスターはシナリオを自作する道を選択必要があります。しかし、ゲームマスターにとってシナリオを作成するという作業は、充実したものであると同時に労力の必要とされるものでもあります。このシナリオの作成の過程を簡略化するための記事がこの文書になります。
TRPGにおけるシナリオとは?
演劇やドラマの分野と異なり、TRPGの分野においてシナリオは絶対的なものではありません。なぜならば、TRPGのセッションは、用意されたシナリオに従ってゲームマスターが場面の描写を行い、その描写に基づいてプレイヤーがPCの行動を決定し、その行動がもたらした結果を、さらにゲームマスターが描写するという円環構造を持っています。つまり、どんなに綿密なシナリオを作成したとしても、PCがどのような行動を行うかは、その場になってみないとわからないのです(特に『蒸気!』ではこれは顕著です)。つまり、TRPGでは、シナリオはセッションをどうやって進めるかについての大まかな計画書に過ぎないのです。計画通り行くか行かないかはその時になってみないと解らないのです。
では逆に、TRPGにはシナリオは存在しなくても良いものでしょうか? 不確定な部分が多いのであれば、その場主義で対応する方が良いのではないでしょうか? アドリブで全てを済ませようとする人々には、そう主張する人もいるかもしれません。しかし、それは正しくはありません。そのセッションがどのような方向性を持ち、どのように展開すべきかなどがシナリオには記載されます。これはセッションの段取りと言い替えることも出来るでしょう。シナリオには、まずPCは何を行うべきなのか、どのような行動が期待され、推奨されるか、などの情報が記載されている訳です。もしセッションでシナリオ通りに行かない場合があったとしても、シナリオが用意されてあれば、その方向へと修正する方法を考え付くかもしれません。また、シナリオがPCの行動によって変化するとしても、その行動を事前に予測することが出来れば、行動に対する条件分岐をプレイ前に準備し、シナリオの進行をPCの行動に対応させることが出来るのです。
完全なシナリオの作成は、TRPGにおいては不可能です。しかし、さまざまなPCの行動に対応できるシナリオの作成は不可能ではないのです。
ストーリーとしてのシナリオ
前述のように、シナリオはPCの行動によって大きく変化する可能性があります。その点ではシナリオに含まれるストーリーは不確定で流動的なものであるといえます。しかし、例外もあるにせよ、TRPGのシナリオは流動的であるにも関わらず明確なストーリーを含んでいます。ストーリーはTRPGにとって不可欠な要素なのです。このサプリメントでは、このようなシナリオのストーリー面に注目して、作成支援を行うことにします。
シナリオの本質について
シナリオの中心にあるもの、それは一体何でしょうか? シナリオを成り立たせるストーリーの源は何なのでしょうか? それは「事件」であると考えられます。シナリオは「事件」を中心としたストーリーの展開を扱います。これがシナリオの本質に相当します。もう少し詳しく説明しましょう。
シナリオとして扱うことの出来る場面は、日常生活をはじめとして、あらゆる事に及びます。しかし、実際にプレイして面白いかという点を合わせて考えると、シナリオが扱う内容には制限が加えられることが解ります。その制限とは、基本的に「非日常を扱う」というものです。非日常とはどのようなものでしょうか? 普段の生活よりも、より多くの勇気を、知恵を、努力を、運を必要とする、そんな場面を非日常というのではないでしょうか?
この非日常は多くの場合、日常の生活から外れたシチュエーション、言い替えるならば「事件」の中に存在するのです。このような「事件」にPCが関係し、その渦中での意思の決定、行動の決定を繰り返し、その結果として「事件」を解決する、解決できないまでも緩和し、日常へと戻るという一連の流れがシナリオでは準備されることになります。
では、より具体的に「事件」とは何かを見てみましょう。現実でも同じように、「事件」とは「利害関係を含むあらゆる事象」と狭義に定義されると思います。では、この「事件」がPCとどのように関わり、シナリオがどのように進行していくかを見ることにしましょう。
PCと「事件」について
前掲のように、シナリオには必ず「事件」という概念が含まれています。PCと「事件」についても、日常生活を行っていたPCが「事件」に関係し、その結果「事件」が変質し、PCが再び日常へと帰るという構造を持っている訳です。つまり、その過程を再現するのがTRPGのセッションであり、その大まかな計画書がシナリオなのだということが出来ます。
その視点から言えば、PCは基本的に「事件」とは独立した存在なのだと言うことが出来ます。勿論、PCが「事件」に直接関係している場合もありますが、それはいわば例外的な場合だといえます。あくまでもPCはシナリオの中心ではなく、シナリオに一時的に参入し、またシナリオから立ち去るという異邦人的な役割を与えられているのです。正確にはシナリオそのものではなく、シナリオで扱われる「事件」に関して、PCは基本的に部外者なのです。
「事件」そのものをもう少し詳しく見てみましょう。「事件」、つまり「利害関係を含む事象」では、その利害を受けるキャラクターが必要です。この利害を受けるのは何者でしょうか? PCでしょうか? いや、PCはあくまでも「事件」に後から参入する部外者に過ぎません。ではPCがそのような立場であるとするならば、「事件」を構成し、「事件」と直面している者は何者なのでしょうか? それが「事件」の「当事者」です。「事件」の中心で、「事件」に対して積極的に関らなくてはならない人物が「事件」の「当事者」であるキャラクターです。彼等はまさに当事者であり、自分が立っている状況から逃げ去る事は出来ません。彼等は解決されねばならない「事件」を抱えており、何らかの解決策を探しているのです。しかも彼等は自力ではその問題を解決するだけの能力を持たないのです。何とPCが活躍するのに相応しい状況なのでしょうか!(当然、PCが参入しても何の解決にならない場合もあるのですが)
基本的にPCの行動は、この「事件」の「当事者」の示す目的に依存します。つまり言い換えれば「事件」の「当事者」の持つ目的が、シナリオ中で果たさねばならない大きな目的になります。
ここまでで『シナリオは「事件」から成立している』、『「事件」には「当事者」が存在する』、『PCは「事件」と関係し、何らかの行動を行う』という前提事項が理解されたと思います。では具体的にシナリオはどのように設定されるべきでしょうか?
コラム:PCが「当事者」の場合
シナリオ作成においては常に「当事者」を設定することが必要です。しかも、その「当事者」は自力で関係する「事件」を解決するためには力が足らない必要があります。
さて、そのような前提から、PCが「当事者」となるシナリオを考えて見ましょう。この場合、PCは通常の場合と異なり、「事件」の部外者ではなくなります。PCが「当事者」になった場合は、シナリオに導入する手続きが、ほとんどPCの意思とは関係ない形になります。いわば偶然的な導入を行わざるを得ないのです。
また、PC全員が「当事者」になる場合は少ないでしょうから、その中の一人を「当事者」と見なす事になるでしょう。PCが「当事者」の場合のシナリオ作成が特に難しい訳ではなく、あくまでもこの記では例外とします。そのため、ここではPCが「当事者」である場合のシナリオ作成については扱われません。
ストーリーライン
「事件」の「当事者」が「事件」に対処し切れない状況、そしてPCがその「事件」に参入するという前提があって、初めてTRPGのシナリオがPCのために存在する事が明らかになりました。
シナリオはまた『PCのためのストーリー』を設定する事でもあります。逆説的になりますが、シナリオはPCのために用意されるものでもあるのです。「事件」という舞台も、「当事者」という狂言回しも、全てはPCが主役として立ち回るための道具立てなのです(当然ながら、それらの道具は尊重されなければなりません。舞台装置を無視して演劇が成立しないのと同様です)。また、この設定を行うということは、そのセッションでPCがどのような役割を果たさなければならないかということを、マスター自身が把握するための仕掛けでもあります。
この記事において、『PCのためのストーリー』とは、『PCがセッション中にどのような行動を行う事を期待されているか?』という事を示します。主人公がどのような行動を行うかという観点から言えば、TRPGをはじめとするエンターティメント作品のストーリーは、帰納的に6種類のパターンの組み合わせから成立していると仮定されます。このサプリメントではその仮定に則って、シナリオ(に存在するストーリー)の作成を解説します。この6種類のパターンに対して便宜的に命名を行うならば、「対抗」「探索」「移動」「耐久」「防護」「奪取」となります。あらゆるTRPGにおけるシナリオのストーリーは、これらのパターンの組み合わせだと言えるでしょう。
「対抗」は、PCがある対象と競い合う行為を指します。競い合う対象、内容については問いません。また、競い合うための理由も問いません。
「探索」は、PCがある対象の存在を探し求めるという行為です。探し求める対象は問いません。また、その状況も問いません。
「移動」、その名の通りPCが、ある地点からある地点へと移動する行為を指します。移動する理由、状況は問いません。
「耐久」は、PCがある状況に耐えるという行為です。耐える状況は問いません。その理由も問いません。
「防護」はPCがある対象を守るという行為を示します。対象は問いません。また理由、状況も問いません。
「奪取」はPCがある対象を手に入れるという行為です。対象は問いません。奪取のための理由、その他の全ての状況は問いません。
これらの基本となるPCの行動パターンは、シナリオのストーリーの背骨となる重要なものです。このストーリーの背骨を「ストーリーライン」と呼ぶ事にします。ここで挙げたそれぞれのストーリーラインはお互いに矛盾無く並立します。実際に作成されるシナリオは、一つのストーリーラインを用いたものから、全てのストーリーラインを組み込んだシナリオまでと、そのバリエーションは様々です。当然ながら、ストーリーラインは、組み合わせが増す毎にシナリオに関る要素が複雑化する傾向にあります。これはPCが取り組まねばならない課題が多くなるためです。
ではストーリーラインの具体的な説明に入りましょう。
ストーリーラインの解説と例
以下には6種類のストーリーラインの一つ一つについて解説が挙げられています。ここで挙げられている解説は、いくつかのストーリーラインが結合した複合的なストーリーラインについては扱っていません。これらについては、マスターが各自で探究する必要があります。ただ、複合的なストーリーラインについては、それぞれのストーリーラインの特徴を併せ持つものとします。
例示の部分で複合的なストーリーラインが挙げられている場合がありますが、その場合も具体的な解説は行われていません。それらの例についてはそれぞれのストーリーラインの特徴が同時に含まれているものとします。複数の項目に併記されなければならない様な例もありますが、編者の独断で一方のストーリーライン項目に分類されています。それらの例を用いようとする場合には、適宜特徴を組み合わせて対応してください。
「対抗」
「対抗」のストーリーラインは、ある対象と優劣を競い合うという行為がメインとなるものです。競い合う対象は問いません。例を出すならば以下のようなものがあるでしょう。
競技大会
強制排除
直接対決
復讐
反乱
賭
争奪戦(奪取)
様々な状況が考えられますが、そのメインとなる部分は『勝負の行方』です。勝敗を決するという状況が必須なものとなります。また、勝負を行う場合に必要な存在として、対抗の相手を決定せねばなりません。対抗する手段について設定する必要もあるでしょう。
「探索」
「探索」のストーリーラインは、ある対象についての情報を得るという行為がメインとなるものです。対象の内容は問いません。このタイプのストーリーラインは後述する「移動」と複合したものが多く確認されます。例を出すならば以下のようなものがあるでしょう。
謎解き
正確な知識の獲得
身辺捜査
遺失物捜査
地図作成(移動)
探検(移動)
様々な状況が考えられますが、そのメインとなる部分は『正確な情報の把握』です。様々な角度からの情報を収集し、事実の把握に勤める必要があるでしょう。また、情報収集を行う場合に必要な存在として、情報提供の相手を決定せねばなりません。正しい情報を入手するために困難に直面する場合もあります。
「移動」
「移動」のストーリーラインは、PCが今いる場所から別の場所へと移動するという行為がメインとなるものです。このタイプのストーリーラインは前述の 「探索」、後述する「防護」と複合したものが多く確認されます。例を出すならば以下のようなものがあるでしょう。
旅行
伝達
交易(防護)
追跡(探索・対抗)
逃亡(防護)
輸送(防護)
様々な状況が考えられますが、そのメインとなる部分は「移動」そのものです。移動中に遭遇する状況がメインです。また、移動する必然性や、移動のための手段、移動中に遭遇する困難、移動中に通過する場所などの設定が必要になります。
「耐久」
「耐久」のストーリーラインは、PCがある(PCに対して不利に働く)状況に耐え抜く状況を扱います。例を出すならば以下のようなものがあるでしょう。
遭難
胆だめし
現状維持
単純労働
持久戦(対抗)
世話(防護)
脱出(対抗・防護)
様々なパターンが考えられますが、そのメインとなる部分は状況に「耐久」することそのものです。何に耐えるか、どう耐えるかがシナリオのメインとなります。
また、PCが耐久をする理由や、直面する困難、状況からの脱出方法などの設定が必要になります。
「防護」
「防護」のストーリーラインは、PCがある対象を守るという状況を扱います。例を出すならば以下のようなものがあるでしょう。
ボディーガード
用心棒
警備
保護
護衛(移動)
様々なパターンが考えられますが、そのメインとなる部分は何かからある対象を『護る』ことです。何をどう護るかがシナリオのメインとなります。
また、PCが対象を防護する理由や、防護中に直面する困難、防護するための有利な状況などの設定が必要になります。
「奪取」
「奪取」のストーリーラインは、PCがある対象をある対象から奪取するという状況を扱います。例を出すならば以下のようなものがあるでしょう。
盗む
発掘
誘拐
奪還(防護)
救出(防護)
様々なパターンが考えられますが、そのメインとなる部分は何かからある対象を『奪う』ことです。何をどう奪うかがシナリオのメインとなります。
また、PCが奪取を行う理由や、直面する妨害などの設定が必要になります。
以上の様に提示されたストーリーラインは、あくまでもPCがシナリオ中で求められる行動の基本となるパターンであり、シナリオの大雑把な方向性です。逆にいえば、これだけを決定したとしても、実際のプレイ場面では余り役に立ちません(全然役に立たないという訳では有りません。ただ扱っている話題のレベルがマクロ過ぎるために有効ではないという意味です)。
また、この記事で扱う範囲で言えば、1回のシナリオにおいて用いられるストーリーラインは不変であると考えます。本来ならば、シナリオにおけるストーリーはPCの行動如何によって変更させる事もあるのですが、ここではストーリーラインは変更されないという前提で話を進めます。このサプリメントを利用して、ストーリーラインを途中で変更するシナリオを作成する場合は2種類のシナリオを連続でプレイすると考えた方が良いと思います。
さて、ここまででストーリーラインを選択することが出来ますが、ストーリーラインを決定したとしても、現在の時点では主人公であるPCが行う事以外には何も決まりません。しかし、これがシナリオを作成する際に最も重要な手掛かりとなります。最後までこの手掛かりを頼りにシナリオは組まれていくことになります。次章において、具体的にシナリオを設定していく場合も、このストーリーラインは常に念頭に置かれる要素です。
ここまでの手順で、シナリオとはどのようなものであるかがおぼろげに見えて来ました。つまりシナリオとは『PCがある行動パターンに従った絡み方をする事で「事件」が変質する』という、一つの真実が明らかになった訳です。
シナリオを作成しようとする際には、扱われるストーリーを決定するのと同時に、もうひとつの視点からシナリオを眺める必要があります。それはPCの行動と共に重要な問題です。つまりシナリオをどうやって進行させるかという問題です。この視点を得る事で、シナリオ全体の性質を俯瞰する事が出来るようになります。次にこのシナリオの進行について解説しましょう。
シナリオの進行について
一回から数回のセッションでプレイが完了する、いわゆる「単発シナリオ」の場合、シナリオには「シナリオ進行の基本型」とでもいえるパターンが存在します。この型をきちんと理解し、利用することが出来るようになれば、シナリオを進行させる労力をかなりの部分削ることが出来るようになります。
このシナリオの基本となる進行パターンを「基本進行式」と呼称することにしましょう。
基本進行式
基本進行式は、シナリオの進行における基本パターンの一つです。このパターンは初心者にも扱いやすく、かつ応用のし易い、万能ともいえるシナリオの基本型です。これ以降、シナリオにおける大まかな場面の分割単位をフェイズと呼ぶ事にします。
基本進行式は6つの大きなフェイズから成立します。また、この6つのフェイズは必ず第1フェイズから始まり、また必ず第6フェイズで終わるという時間的不可逆性を持ちます。シナリオの進行においてフェイズ毎の段階がはっきりとしているという点も特徴的です。
では次に基本進行式とそれぞれのフェイズについて具体的な説明を行うことにしましょう。
基本進行式の構成
基本進行式は次のような6つのフェイズで構成されます。この順序はシナリオの提示順においても同様です。
プロローグ → 導入 → 追及 → 解決 → 離脱 → エピローグ
プロローグからエピローグまでの全てのフェイズが揃って1つのシナリオが構築されることになります。
各フェイズの内容
基本進行式の各フェイズは大まかに次のような内容になっています。
プロローグ
シナリオに登場するあらゆるキャラクターが知っていることについての確認や、PC全員が持っている情報・知識についての確認、舞台の状況説明などが行われるフェイズです。このフェイズではPCが直接登場することはありません。
このフェイズの目的は、プレイヤーをゲームに導入することです。
導入
PCそれぞれに対する導入がこのフェイズで行われます。何か特別な事情が無い限りは、このフェイズ内でPC全員を導入するべきです。また、「事件」と深く関わる「当事者」との社会的な関係に基づく導入(社会的導入)が有効でしょう。
このフェイズの目的は、PC及び「当事者」をプレイに導入することです。
追及
追及フェイズは事件に対する正確な判断を行い、行動の決定を正しいものにするためのフェイズです。このフェイズはシナリオの中核に当たるフェイズであり、基本進行式においては最も時間を要するフェイズになります。このフェイズは大まかに2つの意味を持っています。
まずは情報を収集するという性格を持っています。追及フェイズには、正確な判断を行うために不可欠な情報を入手するという意味があります。また、このフェイズには、さまざまな手段で入手した情報を統合し、次の行動を決定するという性格もあります。そして、その行動が間違ったものであった場合、再び情報を入手し、行動選択をし直す必要があるでしょう。このように、事件解決の方法を探究するフェイズが追及フェイズの一つの側面となります。
ではもう一つの側面も見てみましょう。このフェイズで情報探索以上に重要なのは、いくつかの課題を解決し、「当事者」の目的を果たすという点です。「当事者」の目的は、「事件」の解決を行う事です。追及フェイズ内で入手された情報を元に、実際に行動を行い、「事件」を解決する、それがこのフェイズの目的になります。つまり、このフェイズの目的は、「事件」を解決の方法を追及し、実際に解決を行う事になります。
解決
解決フェイズは、追及フェイズにおいて事件解決の方法のための行動選択が行われた後で、処理過程として提示されるフェイズです。つまり、正しい行動選択が為されなかった場合のために、複数の解決結果を設定する必要があります。
解決フェイズの目的は、「事件」の解決の度合をチェックし、その後の展開を決定するフェイズです。
離脱
事件の解決を行ったPCはシナリオから離脱せねばなりません。解決した事件から解放されるというフェイズがこのフェイズです。当事者キャラクターの目的を果たし終ったPCは、事件そのものとは既に関係が途切れています。そのための離脱を表現するためにこのフェイズが用意されています。
エピローグ
エピローグフェイズでは、事件がその後どのような展開を見せたか、PCが解決した事件を元にどのような経験をしたかなどの、シナリオ本編以降の内容を扱います。このフェイズではプロローグと同様に、PCそのものをプレイヤーが扱うことはありません。
シナリオの進行に基本進行式を用いる場合には、「PCによる当事者NPCに対する裏切り」や「隠された本当の真実」などの複雑なシナリオ要素を導入するには少々のテクニックが必要となります。しかしシナリオを作成するに当たり、まずはこの基本進行式を身につける事が重要です。
以上に挙げられた二つの鍵、すなわちストーリーラインと基本進行式の二つを駆使する事で、シナリオの基本となる要素はほぼ全て決定する事ができます。これらのバリエーションのパターンがシナリオ作成の基本となります。では、次の章からもっと具体的なシナリオ作成の方法論に進んで行きましょう。
コラム:シナリオは絶対なのか?
実際にシナリオに従ってセッションを行えば理解されることですが、シナリオで決定されている行動をプレイヤーが選択することは少ないといえます。それでもシナリオを絶対厳守せねばならないのでしょうか?
そうではありません。キャラクターが選択した行動がシナリオに記載されていない場合でも、PCがその行動を取るのにふさわしい状況であるなら、プレイヤーの決定した行動は「正しい」行動です。シナリオに載っていないからと、その行動を阻むことはできません。その意味でシナリオを細かい部分にまでがちがちに決定してしまうのはゲームをプレイできない状況にしてしまう可能性があります。
この記事では、シナリオを作成する際に、大まかな部分から細かい部分へと設定を行っていきます。そして全ての設定が終わったとしても、まだまだシナリオは流動的な構造を持つようになっています。つまり、シナリオは大まかには絶対であるが(『蒸気!』のセッションは「回想録」という性質もありますから、最初に大まかな流れを説明してしまっても問題ありません)、しかし細かい部分は適宜流動的な決定を行わなくてはならないのです。これがTRPGのマスターをコンピュータが代用できない理由の一つです。