キャラクターの成功判定
この章ではゲームの中でキャラクターを扱うための基本となるルールである『成功判定』を紹介します。キャラクターの行う行為は、基本的にここで紹介されるルールを踏襲する形で統一的にデザインされています。
成功判定
一般的にテーブルトークRPGでは様々なキャラクター達が様々な場面で様々な行動を行います。その中には絶対に失敗しないような行動もあれば、絶対に失敗するような行動もあります。しかし、多くの行動は、失敗する可能性も成功する可能性もあります。このような状況で、キャラクターの取る行動が成功するか、失敗に終わるかを知るために、このゲームでは『成功判定』というルールを用います。
マスターは、『成功判定』の結果を元に、キャラクターの行動の結果や、周囲の状況を描写します。『成功判定』は、『蒸気爆発野郎!』のシステムのコアに相当するルールであり、スムースな運用をすることで、ゲームの進行にストレスが掛からないようにすることが出来ます。
成功判定は、単純にいうと、マスターとプレイヤーがサイコロを振り合い、その結果を比較するという手続きです。しかし、これだけではキャラクターの特徴などが反映されません。そこでサイコロの目には、様々な修正が加えられていきます。
成功判定までの手続き
成功判定は、プレイヤーから求める場合と、マスターから求める場合の二種類があります。それぞれの手続きを記します。
1.プレイヤー側から判定を要求する場合
PCが能動的に行為をしようとする際には、マスターに対して成功判定を求めることが出来ます。マスターは後述される方法を用いてそれぞれの行為の難易の度合を決定し、プレイヤーはキャラクターがどの程度の度合で行為を達成したかを求めます。その結果、正否の度合が求められ、マスターはキャラクターがどのような結果を導いたかを描写することになります。
2.マスター側から判定を要求する場合
偶発的な状況、またはキャラクターが予期していない状況に対して、キャラクターが適切な行動を取れたか、または抵抗できたか、耐え切ることがで来たかなどの結果を判定する場合があります。そのような場合には、マスター側から成功判定を求めることができます。判定の結果から、マスターはキャラクターがどのような行動を行い、どのような結果を導いたかを描写することになります。
サイコロの振り方
成功判定では、基本的に6面体のサイコロを二つ同時に振ります。どのキャラクターのどの行動であっても、成功判定ではサイコロを二個振ることが出来ます。
一方、PCは『超時空体』からの干渉によって『熱い魂』という特殊な能力が授けられており、三個以上のサイコロを同時に振ることができる可能性があります。『熱い魂』を用いた成功判定については、後述される『熱い魂を用いた成功判定』の項目を読んで下さい。
成功判定における「基本値」
成功判定を行う際には、上述のようにサイコロを振って結果を求めます。サイコロによって求められた結果に対してキャラクターの特徴を再現するために加算する修正を『基本値』と呼びます。基本値は『基礎能力値+関連する技能レベル+各種ボーナス』で求めます。
成功判定は三種類に大別されます。「対応する技能が無い場合」、「一般技能を用いる場合」、「専門技能を用いる場合」です。それぞれの場合において基本値を求めるための手続きが微妙に異なります。
1.対応する技能が無い場合の基本値の求め方
成功判定に対応する技能を持たない場合には、対応する技能の『基礎能力値』のみで成功判定を行う必要があります。他の解決策が用意されている場合には、対応する技能の判定方法に従います。
もしも技能が用意されていない行動の場合には、対応する基礎能力値をマスターが即興で設定します。
2.一般技能を用いる場合の基本値の求め方
キャラクターが成功判定に対応する一般技能を持っている場合には、それぞれの一般技能における『基礎能力値と技能のレベルの和』を基本値とします。キャラクターが成功判定に対応する一般技能を持っていない場合には、基礎能力値のみで判定をすることになります。
3.専門技能を用いる場合の基本値の求め方
キャラクターが成功判定に対応する専門技能を持っている場合には、それぞれの専門技能における『基礎能力値と技能のレベルの和』を基本値とします。キャラクターが成功判定に対応する専門技能を習得していない場合(技能レベルが0の場合)には、成功判定に『-4』のペナルティーが課せられます。つまり、専門技能を習得していないキャラクターでは、『基礎能力値-4』を基本値として用いることになります。ただし、この修正は、分野技能の場合の同一分野技能に対しては必要ありません(つまり、分野技能『科学』のうち、一分野でも習得していたならば、他の『科学』分野の技能についての成功判定を行う際には、このペナルティーを加える必要はありません)。
基本値は、PCもNPCも同様の手続きによって算出します。
熱い魂
PC(そして一部のNPC)は、『熱い魂』を持っています。プレイヤーキャラクターは、ゲームの開始時には『熱い魂』を、最低2ポイント持っています。
このポイントは、キャラクターがどれ程自信に満ちているかの指標になります。またキャラクターに対する『超時空体』からの干渉の度合も示します。そして『熱い魂』は、成功判定において特殊なサイコロの振り方を可能にし、またゲーム内でさまざまなキャラクターの演出に利用されます。『熱い魂』を用いることで、キャラクターが行おうとする行為の成功率は飛躍的に上昇しますし、セッションもエキサイティングかつスムースに進むことになります。
ここでは熱い魂を成功判定で利用する方法を説明します。
〈注釈〉
多くのキャラクターは『熱い魂』に関して、『自分を越えた何者かによって与えられた特殊な才能』と捉えています。多くのキャラクターは自分がその才能を持っていることを、神からの加護であると考えています。また、『熱い魂』を持っていることは、『超時空体』との絶え間無い干渉がなされているということでもあります。
熱い魂を用いた成功判定
『熱い魂ポイント』が1ポイント以上あるキャラクターは、成功判定の際にサイコロを追加した上で同時に振る権利を持ちます。具体的には最大で『2+熱い魂ポイント』個のサイコロを同時に振ることが可能になります。つまり、『熱い魂ポイント』が3ポイントのキャラクターは、成功判定の際に最大でサイコロ5個までを同時に振ることが出来ます。10ポイントのキャラクターなら12個まで振ることができます。
『絶望』
成功判定において『熱い魂』を利用することは、非常に強力な効果を発揮します。しかし、『熱い魂』には一つだけ落とし穴があります。それは『絶望』と呼ばれる現象です。『絶望』は自己に対する過信によって生じます。自らを過信する心が隙を生み、敵対している相手がその隙を突く、または、状況に柔軟に対応できなかった結果、成功判定に失敗してしまう、そのようなショックから『絶望』が発生します。『絶望』は、キャラクターにとっては、ただの心的な動揺だけではなく、『超時空体』からの加護の手から一時的に外れたということを自覚することでもあります。
『熱い魂』を用いた成功判定の際に、サイコロが2個以上1の目だった場合には、そのキャラクターは『絶望』状態に陥ります。『絶望』状態に陥ったキャラクターは、『超時空体』からの干渉から一時的に解放され、同時に『熱い魂ポイント』が0ポイントに低下します。
『絶望』したキャラクターは熱い魂を持ったPCまたはNPCに助けを求めることになります。
さらに絶望状態に陥ったキャラクターは、それからしばらくの間、『後遺症』を受けることになります。『後遺症』は『超時空体』との予測不可能な断絶によって引き起こされる超常現象です。具体的には様々な奇妙な現象が挙げられます。『後遺症』については、第3章『マスタリング』に記載されています。
参考:絶望率
以下の表は、キャラクターが『熱い魂』を用いた場合に、どの程度の確率で『絶望』状態になるかの目安です。
table:絶望率
熱い魂ポイント サイコロを振る数 絶望率
1 3 7.4%
2 4 13.2%
3 5 19.6%
4 6 26.3%
5 7 33.0%
熱い魂ポイントの変動
『熱い魂ポイント』は、ゲーム中においては、通常の成功判定(つまり2D6を行う成功判定)で6のゾロ目を出した場合に1ポイント上昇します。ポイントには上限はありません。また通常の成功判定で1のゾロ目を出した場合には、ポイントは1ポイント減少します。しかし、その場合の最低値は1ポイントで、決して0ポイントにはなりません(0ポイントになるのは『絶望』した時だけです)。
成功判定における「達成値」
プレイヤーがサイコロを振って求めた数値と、『基本値』との合計を、『達成値』と呼びます。達成値はキャラクターがどの程度の行為を達することができたかという指標になります。勿論値が高い方がより上手に(または素早く、丁寧に、確実に)行動できたということになります。
成功判定における「目標値」
成功判定は、キャラクター側のサイコロの目と、マスター側のサイコロの目の比較が、その基本です。キャラクター側の値は『達成値』として導かれます。次にマスター側の値を求めることになります。
マスター側も成功判定の際にはサイコロ2個を同時に振ることになります。この結果にキャラクターが行おうとしている行動の難易による修正を行います。この難易度による修正を『難易度修正』と呼びます。この修正は、状況に応じてマスターが決定します。基準となる値は表の通りです。
table:難易度修正
状 況 難易度修正
易しい 0
やや易しい 3
普通 6
やや難しい 9
難しい 12
極めて難しい 15
至難 18
マスターのサイコロの目に、修正を加えた値を『目標値』と呼びます。基本的には、成功判定の結果、キャラクターが目標値以上の達成値を得た場合に、キャラクターの行為は成功することになります。
例:成功判定の例(シドニーの疾走その1)
シドニー・ジョンソンは、疾走する馬車から飛び下りようとしています。マスターは、彼の行おうとしている行為は、『難しい』と判断しました。この時の難易度修正は『12』です。マスターの振ったサイコロの目は4と6で、合計『10』でした。合計すると目標値は『22』です。シドニー・ジョンソンの能力値の【運動】の値は『5』です。しかも悲しい事に、彼には役に立ちそうな技能は一つもないのです……。
成功レベル
成功判定の結果、どの程度の結果が求められたかを決定するのが『成功レベル』です。成功レベルの求め方は、『達成値-目標値』です。達成値から目標値を引いた結果から、以下の表を用いて、どの程度の成功だったかを判断します。
table:成功レベル
成功レベル 状態
-12~ 事態はとても酷い状態に陥る。
-8~-11 事態はひどい状態に陥る。
-4~-7 事態は悪化し、困った状態になる。
-1~-3 目標達成にやや不足。再挑戦可能。
0 最低限の目標を達成。通常の2倍の時間を必要とする。
+1~+3 必要十分なレベルの達成。
+4~+7 目標を完全に達成する。通常の3/4の時間で作業が完了する。
+8~+11 当初の目標を超えた結果を達成。通常の1/2の時間で作業が完了する。
+12~ 目標を完全に達成し、期待を大幅に超えた結果を達成。作業を通常の1/4の時間で終える。
また、行為が失敗した時に、達成値に4ポイント以上たりなかった場合には、『困った状態』になります。また8ポイント以上足りなかった時には『ひどい状態』に、12ポイント以上であれば『とてもひどい状態』になってしまいます。
例:通常の成功判定(シドニーの疾走その2)
結局、シドニー・ジョンソンは、馬車から飛び降り、その際の2つのサイコロの目の合計は『8』でした。(彼は『熱い魂』を使わなかったのです。)『8』と、彼の『運動』の値を足して『13』ポイント。目標値の『22』ポイントには、まだあと9ポイントも足りません! マスターは、シドニーは、『とても酷い状態』になったと考え、こう告げました。
「シドニーは馬車から身を踊らせると、まず人の中につっこみ、何人かをまきぞえにしながら店先を襲った。彼は全治1ヶ月の怪我を負い、さらに犠牲となった人々に賠償金を払っていかねばならない」
例:熱い魂を用いた成功判定
上記のシドニーの例を用いますと、もし彼が『熱い魂』を3ポイント持っていたとして、さらにそれを全て用いていたとするならば、彼は総計5個ものサイコロを振ることができたのです。この場合のサイコロの出目の期待値は17.5。これに基本値である【運動】の5ポイントを加えても22.5ポイント。どんなに肉体が劣っていたとしても、ちょっと運が良ければ、彼は馬車から上手く飛び降り、無事に家までたどり着けたかもしれないのです。
対抗ロール
キャラクター同士が能力を競うような場面は、TRPGを楽しんでいる最中には、よく登場するものです。『対抗ロール』は、そのような場面を処理するためのルールです。対抗ロールは、キャラクターの成功判定の結果同士を比較することで処理されます。その際に、キャラクターは『能動側』と『受動側』に分けられます。もしも分けられない場合には、『同格』として処理されます。『基本値』の求め方は、通常の成功判定と同様にして行います。キャラクターは互いにサイコロを振り合います。その時には『熱い魂』を用いることも認められます。これが『対抗ロール』の基本になります。対抗ロールの手続きは以下の通りです。
『能動側』のキャラクターと『受動側』のキャラクターの存在する対抗ロールでは、能動側のキャラクターが先に成功判定を行います。マスターの決定した目標値を基準として、行為が失敗しなかったかどうかを求めます。そもそも能動側が行為を成功していない限り、対抗ロールを行うことは出来ません。能動側が行為判定を成功させた場合には、受動側はその達成値を目標値として成功判定を行います。受動側の達成値と能動側の達成値の差を求め、その差を『成功レベル』として判断することになります。
『同格』の対抗ロールでは、通常の成功判定と同様の手続きで達成値と成功レベルを求めます。複数名による『同格』の対抗ロールでも、その手続きは同様です。この対抗ロールの結果から勝者を求めます。また、『同格』の対抗ロールによって勝者の順番を出す場合は、成功レベルの高い順となります。
対抗ロールにおける修正
キャラクター同士の競争などを判定する際に、修正が与えられる場面が存在します。修正は常に有利な側に与えられます。これをボーナスと呼びます。ボーナスは、判定の前にマスターによって与えられます。
修正はキャラクターの能力や技術に関係の無い状況そのものに対して与えられます。修正の目安は以下の対抗ロール修正表に示すようになります。また、行為によっては専用の対抗ロール修正表が与えられるものもあります。それらについては各場面別ルールに記載されています。
table:対抗ロール修正表
修正値 評価
+1~+3 有利
+4~+7 とても有利
+8~+11 ひどく有利
+12~ 状況を覆せない程に有利
参考:技能評価と成功の目安
実際のプレイにおいては、『技能レベル+能力値+2D6(魂未使用時)』がキャラクター側の成功判定の際のダイスの目になります。対して『難易度修正+2D6の値』がマスターの振る値になります。この場合の成功率を%表記してみます。キャラクターの『技能レベル+能力値』と、マスターの『難易度修正+要求する成功レベル』を比較した場合、前者が後者をどの程度上回った時に、成功の確率がどう変化するかを記したものです。
成功率の目安
上回った値 成功%
-1 00.00
0 05.48
1 15.97
2 30.56
3 47.84
4 65.97
5 82.64
6 92.28
7 97.22
8 99.31
9 99.92
10 100.00
上記の表を読み取ることで、キャラクターの技能レベルと能力値の合計の値(-4のペナルティーがある場合を除けば最低値は6になります)で、どの程度の難易度の行為をどの程度巧くやってのけるかが推測されます。易しい行為(難易度=0)であれば普通の成功(成功レベル3)を得るために、能力値が5である場合で、約48%の確率になります。勿論能力値によってかなり幅が出てきます。能力値が6の場合には66%、7で83%、8で92%程度になります。
ではもう一つ例を出しますと、平均的な能力を持つキャラクターが「普通」の難しさの行為(難易度=6)を普通に(成功レベル=3)そつなくこなすには、どの程度の技能習熟度が必要となるかです。能力値は6だとして考えてみましょう。そつなくこなすという表現を、だいたい80%成功するとしてみましょう。この場合には、技能と能力値の合計が、難易度修正と要求される成功レベルの合計を5だけ上回る必要があります。下式の各項目に値を代入していきましょう。
『技能レベル+能力値』-『難易度修正+要求する成功レベル』=5
技能レベルを変数Xとした場合に、(X+6)-(6+3)=5ですから、x=8になります。つまり、その程度の技能を持つキャラクターは8レベルであるだろうと推測される訳です。このレベルのキャラクターは『その分野で他人を教育できる。多くのプロ』です。勿論能力値が1上昇すれば、必要なレベルは1下がります。能力値が8であれば、技能は6レベルでも問題ないということになるでしょう。
NPCの設計と技能評価
技能評価を適切に用いることで、NPCを設計する際の指針が明らかになったと考えられます。NPCが社会的にどの程度の能力を持っているかが明らかになるからです。一般的なプロフェッショナルは主要技能及び職業に関連する技能が5〜8レベルに収まるでしょう。また、余り技能に習熟していないキャラクターについては4レベルを上限として設計すれば良いでしょう。それぞれNPCの能力値はPCと同様に決定して良いものとします。
ここでは、NPCのための年齢と技能の関係の目安を導くためのルールを紹介します。
まず、キャラクターの年齢を決定します。そして、その年齢を4で除算し、端数を切り捨てます。これをキャラクターの修得できる技能Lvの上限とします。
このルールは、祁答院 一葉さんが以前提案されたものをそのまま用いています。目安として用いるには、なるほど使い易いため採用しました。注意点としては、この式によって求められる値は、『上限』であるという事です。80歳だから20レベルが妥当という訳ではありません。ほとんどのNPCの技能の上限は10レベル程度でしょう(10レベルから20レベルへ上げるためには15,500点の経験点を消費する必要がある点にも注意して下さい)。