D%表:超時空体との関係表
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ここからはPCが超時空体からの加護を受けたきっかけのようなものの例が挙げられています。これはプレイヤーがPCを作成した際に用いるのも良いでしょうし、マスターが「そういえば君のキャラクターはこんな経験をした」と提示しても良いでしょう。後者の場合はキャラクターは既に経験をしていたが、今まで気に留めないでいたか、忘れていたのだといえます。
また、この表はマスターのためのインスピレーションの源としても作用するかもしれません。99種類の例はそれぞれ広がりを持った一つのシナリオの導入部分にもなっています。参考になれば幸いです。
01
誰かが君のことを見ている。遠くから近くから、その視線は絶える事なく君のことを注視している。その視線は感情を持っておらず、透明な視線だ。だがもしその視線に感情が幾分かでも混じったなら、君は困惑し、動揺し、挙げ句大声で叫び出すことだろう。
02
君はある日道端に落ちていた人形を拾う。人形は所々ほころび、汚れている。君が持ち主が探しているだろうと塀の上に置いてきたはずなのに、家に帰ってみると上着のポケットからその人形が顔を出している。それ以来、君がどこに行こうとも、その人形は付いてくる。確かに机の引出に入れ、鍵を掛けたはずなのに、その人形は君の荷物に紛れ込んでいる。
03
夜遅く、君が家路を急いでいると、背後から黒く巨大な馬車が君を追い抜いていく。馬車は君を追い越し、暫く進むと闇に紛れ込むようにして消えてしまう。その日以来、夕方以降一人で街を歩く度、必ずその馬車が君を追い越していく。そして目の前で消える。
04
君の右手が光を放っている。他人にはそうは感じないようだが、右手から暖かい光が溢れている。これは神からの加護を示すものなのかもしれない。
05
妖精が飛んできて君の右肩に止まった。それ以来時折妖精を見る。彼女(と呼んで良いものか)等は人々の合間をすり抜けるように薄い羽根をはばたかせながら飛ぶ。それは不思議な景色だ。
06
涙型の水晶がポケットから出てきた。君は今までそれを手に入れた記憶はない。さらにその水晶を目に当てて、透かして見ると視界には今までに見たことの無い景色が広がっているのが見える。が、その景色が見えるのは君以外にはないらしい。友人数人に見せても首をかしげるばかりだった。
07
君には神の加護が為されていると直感する。間違いない、聖書の12信徒も同じ経験を味わったに違いないのだ。しかし、その経験を他人に言うための言葉が見当たらない。もどかしい気持ちでいっぱいである。
08
河に映る景色が奇妙な形に見える。人の顔のようだ。不思議な事に君はそれを怪しいとは思わず、じっと見つめていた。他人にそのことを言っても信じてもらえない。
09
君は夢を見た。その夢は君の未来の事を饒舌に語っていたように感じるが、今となっては記憶は脳からこぼれ、再びあの時を取り戻すのは不可能である。もしかしたらこの先思い出す事があるのかもしれないが。
10
君の手のひらに十字架が浮かび出る。しかしそれは他人には見えないらしい。君が感情的になるとその十字架が燃えるように熱くなる。
11
朝起きるとまぶたが開かない。濡れたタオルで拭ってみると固まった血が付いている。君が寝ている間に血涙を流したとでもいうのだろうか? しかし不思議な事にその血の痕は時間が経つとすうと消えてしまった。それ以来誰かが君の事を遠くから見守っていてくれているような、そんな気分だ。
12
ふと気がつくと君の足元に影が無い。そんなばかなと思い、もう一度確かめようとするとちゃんと影が伸びている。そんな経験が何度も繰り返されている。ひょっとしたらノイローゼなのだろうか?
13
寝ている最中に皮膚に虫が這っているようなそんなもぞもぞとかゆいような感じを経験していた。ベッドに何か居るのかもしれないと思い、いろいろと対策をしてみたが改善されなかった。最近は寝不足でいらいらしていたが街で会った占師がそのことを指摘した夜から安眠できるようになった。あの経験は何だったのだろう?
14
君がふらりと入り込んだ古道具屋には、君が子供のころに見覚えがあったおもちゃや絵本、ぬいぐるみが思い出そのそのままの姿で売られていた。君が店主を見ると、店主は君のために用意された特別な品物だ、どれでも好きなものを持って行きたまえと言って微笑んだ。君がそこにある品物のうち一つを手にとった瞬間、店は消え君は倫敦の雑踏の中に一人たたずんでいた。
15
暗がりでマッチをすり、獣脂ろうそくに火をつけると、炎の中に小さい人間のような生き物(?)が踊っていた。目をこらして良く見ると、その生き物は炎に溶けてしまい君の目にはすでに見えなくなった。しかし、それ以来君がろうそくに火をつける度にその生き物は姿を見せる。君に気付いているのかはわからない。ただ炎の中で踊り狂うだけなのだ。
16
烏に鳴かれた。不吉なので君は股の下から石を投げた。烏に当たればその呪は解けるという言い伝えがあるからだ。しかし烏には当たらなかった。いや、烏に当たったかに見えたが、烏はその嘴で投げた石をくわえ、大きくひと鳴きすると大空にはばたいた。それ以来、君の行く先々で烏と出会う。この不吉な鳥に憑かれてしまったようだ。
17
君が夜寝るときに必ず閉めているはずの鎧戸は、時折朝になるとなぜか開いている。最初はただの立て付けの悪い扉だと思っていただけだが、ふと思い返すと、ある異性の夢を見た晩に限ってのことである。その異性はとても魅力的であるということは覚えているのだが、細かい点まではどうしても思い出せない。
18
耳鳴り。君の耳の底にへばりついて離れないその音に耳を傾けると、何事かをつぶやいている声にも聞こえる。はっきりと聞き取ることはできないが、今はもう使われることのない文法で何事かを訴えているようにも聞こえていた。その声は日増しに明瞭な声となって聞こえ、最後に言葉を残して跡絶えた。その言葉は『君は選ばれた』だった。
19
君が良く通る路地にある、打ち捨てられた古い屋敷の入り口に、古色蒼然とした背の高い振り子時計が立てかけられていた。気になるのは君が通りすぎると止まっていたはずの振り子が必ず動き出すのだ。無論長く動いている訳ではないのだが、君が通った後にだけゆっくりと振り子が左右に揺れる。気になっていたが、先日その時計は雨の路上に機械部品を蒔き散らして生き絶えていた。
20
機械式のタイプライタを手に入れた翌朝のことだ。君が寝ぼけ眼を擦りながらそのぴかぴかの機械を見ると、半分ほどカールされた紙が打ち出されていた。君は昨晩きちんと片付けてから寝たはずだといぶかしむ。全てを打ち出してふと手にとると何か文字が刻印されている。紙の中央に、真新しい活字で『You have Chosen』と記されてあった。
21
寝ぼけ眼を擦りながら、顔を洗おうと洗面台の前にいって鏡に映った自分を見る、と、鏡には自分の姿は映っていない。まだ寝ぼけているのかと背後を振り返り、再び鏡に向かうと、もうそこには見慣れた自分の顔。
22
君が翌日までに仕上げなくてはならない仕事の真っ最中のことだ。ひどい睡魔に襲われ、もうだめだと半ば諦めながらベッドに入った。翌朝痛む胃を押さえながら仕事場に行くと、昨晩は確かに残っていたはずの仕事がすっかり終わっており、あまつさえ掃除まで済んでいた。窓辺の妖精か赤帽子の小人の仕業だろうか?
23
高い塔から街を見下ろすと、街全体が暗く低い旋律に包まれている気がした。塔から降りて石造りの街を行く。すれ違う人々との空間に、低い音が形となって挟まっているような、そんな疎外感を君は味わう。街が陰気な歌を謳っているようだ。あたかも街が絶望を味わったかのように。
24
君が子供の時分に亡くなった祖母が夢に現われ、君にやさしい顔で語りかけてきた。その言葉は子供の頃に聞いた祖母の懐かしい声だ。祖母は君が大きくなったこと、こちらは元気でやっているから心配しなくて良いことなどを優しい言葉で告げ、最後に指にはめていた指輪を外して君に預けた。翌朝、握り締めた手の中には祖母の懐かしい指輪が残されていた。
25
革装丁の分厚い本が路上に転がっていた。タイトルも何もなく、見てみると乱雑な走り書きが大部分のページを埋めていた。興味を覚えてその読みづらい字面を追いかけると、あたかも狂人の戯言とも思えるような奇妙な内容であった。新聞社に広告を出し、拾い主を探したが一向に出てくる気配もない。君の本棚にその本は今でもあるが、不思議なのはいつ読んでも以前の内容とちょっとずつ異なっているような気がすることだ。
26
借りる前から君の寝ている部屋には『出る』という噂がまことしやかに囁かれていた。『出る』って、『出る』のである。カップはテーブルから1インチは飛び上がり、鍵をかけておいた扉はきいきいと音を立てて開き、ベッドの位置は夜毎に変わる。しかも夜中を過ぎると白い影が部屋の中を歩きまわるのだ。しかし、最近は事情が変わってきた。パブや仕事場でも時折カップが浮かび上がる。書類が踊る。さらに誰かが君のことを見つめている気がするのだ。
27
君の部屋の窓辺に見慣れない鳥が止まった。その鳥は金色で、全身に渡って数本の赤や緑、そして青の線が入っていた。その鳥はしばらくの間、君の方を気にしているように見えたが、やがて飛び去った。鳥のいた辺りを何の気なしに見てみると、小さなスカラベの石細工が置いてあった。その石細工を持ち歩くようになってから、気のせいか運が向いて来た気がする。
28
君の元に電報が届く。差出人は君の知らない人物で、君はいったい何の関係だったろうか? と思いながら文面を読む。その文面を一目見て君は首をかしげた。一体なぜ君の元にハムレットのあの台詞が届かなくてはならないのだろう? 「To be or not to be...that is the question..」
29
その少女は他の子供達と交じって遊ぼうともせず、じっと君の方を見つめていた。深く美しい色をした碧の瞳に、薄くパールがかった唇で、君のことを少女は確かに見つめていた。その時、ひときわ大きな声で子供達が笑ったので、君は一瞬そちらに気を取られた。再び少女の方に目をやると、すでに彼女は姿を消していた。君の脳裏に謎めいた印象を残し、少女はかき消えるようにしていなくなってしまったのだ。しかし、君は今でも彼女の視線を感じ続けている。その視線が彼女のものであることも確信できる。
30
君が裏通りを歩いていると、もう使えないくらいにがたの来た家具に交じって、何体かのぬいぐるみが捨てられていた。通りに風が吹き、その中の一体である片目の取れた熊のぬいぐるみが君の足元に転がってきた。君はそれを拾い上げ、再び壊れた家具の上に置こうと思ったが、不思議な事に指がぬいぐるみを離そうとしないのだった。仕方なしに家に持って帰ったが、それ以来誰かが君の事を守ってくれている様だ。職場で事故が起きても君だけは怪我を追わずに済み、なくしたとばかり思っていた手帳も見つかった。不思議な事もあったものだ。
31
ごみを回収する荷馬車に山と積まれた廃物の中に、少女の姿をした人形が転がっていた。見れば傷一つ無い。普段であればそんな事はないのだが、何故か今回だけはその人形が気になる。気がつくと手の中にその人形があり、荷馬車は歩み去っていた。不思議な事にその人形を身に付けていると、ちょっとした幸運を呼ぶようだ。
32
君が風邪をひいて寝込んでいると、枕元に素敵な異性が座り、君の事を看病してくれるという夢を見た。目覚めてみて不思議だったのは、動かした覚えの無い椅子が枕元にあり、冷たく濡れたタオルが君の頭に乗せられていたという点だ。
33
衣装戸棚の裏側にコインが入って行ってしまったので、仕方無しに掃除を兼ねて戸棚を動かした。長年の埃も凄かったが、それよりも驚いたのは戸棚の裏の壁に埋め込まれている大理石の表面に、巨大なオウム貝の化石が浮かび上がっていた事だ。ただ一つ気になる点は、それを見てからというもの足元が船の甲板に立っているように揺れいているような経験を良くするのだ。
34
毎朝髪をとかす度、驚くほど大量の毛が抜け落ちる。このままのペースで行けば一月もしないうちにすべての髪の毛が抜け落ちるのではないかと思われる程だ。しかし今のところそのような気配は全く見られない。いや、以前よりも髪の毛が伸びるのが早くなっている気さえする。
35
痩せて不機嫌そうな黒犬が君の方に向かって歩いて来たかと思うと、目の前で止まり、口の端を歪ませてにたりと笑った。呆然とする君を残して黒犬はそのまま歩み去り、路地を曲がると姿を消した。
36
夜、街を歩いていると、暗い路地から獰猛そうな獣のうなり声が聞こえる。急いで部屋に帰り、怖い思いをした、やれやれと思っていると、またどこからともなく獣のうなり声が。今度は窓か、扉の外か、それとも暖炉の内側か。不可思議なうなり声は君の行く先々で君に襲いかかる。しかし先日ふいに聞こえなくなって以来、ずっと穏やかな日々が続いている。あれは一体何だったのだろうか?
37
君の隣室からバイオリンの音がする。不思議な事に隣人にバイオリンを嗜む者はいないはずだ。しかも決まって隣人達が留守の夜に限る。腕前はかなりのもので、別段困ったことがあるわけではないのだが、何となく気味が悪い。しかしそのバイオリンの音も最近は聞かれなくなって久しい。
38
奇妙な荷物が届く。宛先は確かに君の住所だが、送り主の名は書いておらず、君には荷物の届く心当たりもない。中味を開けて見ると薄い紙に何重にも包まれた木彫りの仮面だ。決して稚拙な作りではなく、むしろ巧みな技を駆使して作られたに違いない。が、そのデザインは世界中のどこの文化に属するものだかわからない。奇妙な飾り紋などからアフリカのものだろうかと想像される程度である。その仮面はまだ君の部屋にあるが、その仮面が来てからなぜか体調が良い気がする。
39
朝だ。目覚めてみると変なものが目に入って来た。君の寝台のある反対側の壁に、縦方向に壁を横切る様にして足跡が付いているのだ。足跡の大きさは子供の足程度で、もう何年もそこにあったかのようにかすれている。君がこの部屋に住みはじめたのはそんなに最近の事ではない。どうして今までこんなに奇妙なものを見落としていたのだろうか? その足跡は今でも壁に浮かんでいる。
40
君が店でお釣としてもらった銀貨を弄んでいると、突然銀貨は二つに割れて中から紙切れが出てきた。紙は細い字で、この銀貨の謎を解いたものに幸いあれと記されていた。どうやらはっきりとはしないがお守りのようなものらしい。君はそのコインを財布にいつも入れている。どうやら目だった厄災もないのでとりあえず効いているのかもしれないと思う。
41
君の手の甲に奇妙な痣が浮き出ている。それは他人には見ることは出来ず、君にも滅多に見ることは出来ない。その痣は視界のはしにあるときにだけあるように見えるが、それ以外の時には見えないのだ。
42
君は先日夢を見た。それは巨大な飛行船が君のことを追いかけてくるというものだ。君は言い様のない恐怖を感じ、全力で逃げるがそれは叶わない。飛行船にはいわくありげな紋章が記されていた。その紋章の細部は思い出すことができない。ただ気になるのは、その日以来背後に何者かの気配を感じるのだ。この何日かは特にひどく、誰もいないとわかっていても振り返ってしまう程だ。
43
妙な寒気で目が覚めた。風の渡る音、暗い中でも自分のベッドの上で無い事は確かだ。固い石畳。何ということだ、草の生い茂る墓地ではないか。まだ夢の中かと疑うが、冷たい足元、不気味な梟の声にその考えも消える。周囲は闇だ。その深い闇の中から、誰かがじっと見つめている。その恐怖に負けて走り出した瞬間に、自分のベッドの上でうなされていた事に気付く。しかし、朝になってもあの恐怖は消えず、また誰かに見られているような感じは消えなかった。
44
寒い夜、街でまだ10歳前後の少女がマッチを売っていた。その声はもうかすれ切っており、着ているものは寒さをしのげるとも思われない薄着、吐く息は白く、手足は赤くしもやけで腫れている。あまりに哀れを誘う姿に君はマッチを一箱購入する。長らくそのマッチを使う機会もなかったが、先日それを使って見ると、暖かいオレンジの光に包まれて天使の姿が映し出された。天使は件の少女と瓜二つで、にこりと笑うと消えてしまった。君の手には燃えた後のマッチの軸が残っているだけだった。
45
君が夜遅く部屋に帰ると、ドアに白いチョークで丸く印が付けられていた。君は悪戯だと思い、その印を濡れ雑巾でこすり落として眠りについた。翌朝部屋を出ようとドアに鍵をかけようとしてふと見ると、昨日確かに消しておいたはずの印が再び描かれていた。時間が無いのでその日はそのままにして出た。不思議な事に夜に帰った時にはもうその印は跡形もなく消えていた。
46
君の部屋の机の上に白い羽毛が点々と落ちていた。辺りを見回したが、鳥が入って来そうな隙間もなければ、羽毛の布団もない。とりあえずはそれらは捨てたが、それ以来時々、羽毛が机や床に落ちている。ある時などは鞄の中に羽毛が散乱していた。それもいつも同じ純白のダウンだ。
47
ある時期君は危険が近づくと頭痛がするという状態が続いていた。その体験は便利なものであったが、ただの偏頭痛を危険の前兆とみなす危険もあるのだった。その不思議な頭痛は君が通りでそのことを奇妙な占い師に指摘されたとたんに二度と起きなくなった。
48
君が開放的な広場の中心辺りに立つと、足元がコールタールのように溶けるような感覚に襲われる。君の足は大地を踏みしめることなく、ずぶずぶと地面に吸い込まれて行くようだ。立てない。君はバランスを崩しよろめく。するとそこは緩い泥のような地面では有り得ず、石畳で覆われた普段の広場だ。
49
君が気分良く夜の街を自宅に向かって帰る途中の、煌々と月の照る道なり。ふと空を見上げると月の表面に髑髏が浮かんでいるのが見える。その虚ろな瞳は確かに君のことをじっと見据え、君の瞳を捕えて離さない。が、視界が揺れ、月からちょっと目が離れた隙に月はいつもの青白いただの月に戻ってしまった。
50
朝起きた瞬間から君は不機嫌だった。原因は夢にあったらしいが、もう既に夢は大方記憶からこぼれ、不機嫌の訳も君には分からない。そんな君の脳裏に声が響く。それは不吉な声で、君のことを蔑むような響きを帯びていた。内容はこうだ。「You have FORGOTTEN...humm??」
51
熱いっ。君は反射的に持っているものを取り落とすと、指の腹にふくらみつつある水膨れを見た。大丈夫、傷になりそうなものではない。しばらく水で冷やせばすぐに治るさ。しかし現実はそんなに甘くはなかった。君の指の水膨れは日増しに濁った黄色い膿で膨らんできた。緑色に変色した傷跡はじくじくと痛む。しかしある日医者と名乗る男がやってきて、どこで知ったのか君の火傷を治すという。疑いながらも傷を見せると男は大丈夫、包帯をしておきなさいと言うと君の指に白い包帯を巻いた。男はなにも請求することなく君の部屋から去った。翌朝不思議なことにあれほど酷かった火傷は跡形もなく治っていた。
52
君が道端に店を出していた古道具屋を冷やかしていたところ、その店の親父にいたく気に入られたらしい。彼は小型金庫から何やら古ぼけたペンダントを取り出し、君に運が向くからといって手渡した。そのペンダントは銀のチェーンに金色のメダル型のトップが下がっている地味なものだった。別に身に付けるでもなく持っているが、今のところあまり運が向いてきた気はしない。
53
ひりひりとする痛みは薄い紙で切ったものだろう。本を読んでいる時に内容に夢中で傷がついたことにも気付かなかったらしい。さて、どの本で切ったのだろう? 君が思い出せるのは暇つぶしに立ち寄った小汚い狭い古本屋のことだ。そこまでは思い出せるのだがさて一体その店はどこに建っていたのだろう? そこで予想とは反して夢中で立読みをしてしまったのだ。しかしもうそこへ行くための道筋を思い出すことができない。
54
夜寝るときに薄れ行く意識のなかで、毎晩君のことを怯えさせるものがある。何か水分を含んだ雑巾かモップの頭のようなものを交互に床にうちつける様な音が廊下の端のほうから近づいてきて君の部屋の前で止まり、また去って行くのだ。それは君の夢のなかでの出来事だろう。君以外のだれもそんな音を聞いてはいないのだから。
55
君が子供の頃から大事にしているオルゴールがある。それは大切にしまわれていたが、先日久しぶりにネジを巻き、その美しく響く音を聞こうと耳を傾けた。しかし、澄んだ音色は響くことなく、何かごそごそと音がした。君が不審に思ってオルゴールを開けたところ、なかから手紙が出てきた。そこには幼い頃の君の字でこう書かれていた。『君の事を守ってあげよう』と。
56
街で君に声をかけてきた人は、はっと気付いたような顔をすると一言謝り、首をかしげなから去って行った。一回だけならそれも笑い話で済む。が、君はそれを一日に何度も経験した。一体君が誰に間違えられているというのだろうか?
57
一人で君が部屋にいると誰かがドアを叩く。「どうぞ」君が答えても返事はない。ドアを開け周りを見回すが誰もいない。最近になってそんな体験が重なっている。
58
君が暗い道を月光を頼りに歩いていると、月明りに照らされてきらりと光るものがある。何だと思い拾い上げると銀色に輝く弾丸だ。これは不思議なものを拾ったと思いながら部屋に帰り調べてみると銀むくである。その夜から犬の遠吠えが耳につく。近くにそんなに犬がいたかと思われる程の遠吠えだが、近所の知人はそんなものは聞こえないという。
59
君あてに届いた古い手紙を整理していた時の事だ。何気なく手にとった一通を読み返そうと開いてみると、封筒の内側に助けを求める文面が記されていた。誰からだろうと差出人の名を読もうとするが、雨でインクが濡れて読めない。文面を良く見ると署名の日付が普通ではない。その手紙の日付は来年のものだったのだ。
60
最近、君は動物に敬遠されているような気がしてならない。隣人が飼っていた猫も以前のように君の側に寄ってこない。道を歩いていても、野良犬が君を避けるようにすれ違っていく。
61
最近、君の周りにやたらと動物が寄ってくるような気がする。公園のベンチに腰を掛けていても、気がつくと周りに小動物がちらちらと寄ってくるようだ。
62
気分を変えてみようかと街を目的なくふらつき、なかば自主的に迷子になると、いつも不思議に思うことが起きる。君が街のどこから散歩を開始しようとも、最終的にはある橋の上に立ち、河の水面を見つめている自分に気付くのだ。そこにたどり着くまでの記憶はあいまいで、実際に急いでそこまで歩くのにかかる時間よりも短い時間で橋にたどり着いてしまっているようなのだ。
63
突然雷が落ちた。近くを歩いていた君の意識は一瞬にして遠のき、次に気がついたときには君は道端に倒れていた。その時から君の体に起きた変化は興味深いものだ。指をかざすと方位磁針がくるくる回り、南北を正確にいい当てることができるようになった。それ以来夢のなかで見知らぬ世界を旅する経験をするようになった。
64
暗い緑色の蔦が絡む墓地の鉄柵の隙間から、偶然不思議な光景を見かけてしまった。黒いフードを目深にかぶった人々があやしげな儀式を執り行っているのだ。それ以来君の背後を黒いフードをかぶった人々がつけ回している気がする。
65
ある朝起きてみたら香水の香りがする。どうやらその源は君自身で、君の体に染みついているものらしい。香りはいやなものではない。だが異性が寄ってくる機会が多くなった気がする。
66
君が雑踏のなかに紛れるようにして歩いていると、突然君の服の裾を強く引っぱる者がいる。何だと思い振り返ると、君よりもだいぶ背の低い老人が君の顔を見上げるようにして立っていた。その老人は君に話したいことがあるというと、君を道の端に引っぱって行き、君の顔に凶相が出ているから気をつけなさいと言い、さらにこのお守りを持っていなさいと告げると、君に石のかけらを渡してくれた。石のかけらには東洋風の象形文字が記されていた。
67
朝からうっとうしいと感じ続けている君の懸念は、頭の周囲をひどく小さい虫のようなものが飛んでいる気がすることだ。つい先日気がついたのだが、それ以来気になって仕方がない。掴んでやろうと手を延ばすが、宙を空振りするばかりだ。
68
君が何気なく読んでいた新聞に君の名前が載っている。同姓同名の別人だろうと思いながら興味を持って記事を読み進むと、どうやらそれは君自身の事を書いた記事らしい。書かれている場面は確かに君が体験した事ばかりだし、人物関係も君の友人にそっくりだ。これはと思って同じ新聞を求めると、そんな記事はどこにも載っていない。君の持っている新聞にだけその記事が書かれているのだ。不思議に感じて新聞社に問い合わせても、そんな記事は覚えが無いといわれてしまった。
69
息苦しい。夜中に寝汗にまみれつつ目が覚めた。何やら重い。胸の上に何かがいる! 君が布団を剥ごうとすると、それもできそうにない。恐怖におののきながら闇に目が慣れるのを待ち、首だけ起こして胸の上を見ると、小型の犬ほどもある黒猫が、じっと君の方を見つめながら伏せている。君はその猫と目が合うと、落ちて行くように意識を失った。翌朝目が覚めてみると、不思議なことに猫は忽然と消えていた。
70
夜歩く君の行く手に光る星が急に地平線に引きずられるように流星と化し、続いて全天の星々も流れ落ちる夜を経験する。
71
君が友人と話している間に無意識に筆を走らせた落書きを、その友人が帰った後に再び覗き込んで見ると、ところどころに見慣れぬ筆跡で文章のようなものが書かれていた。その一つは特にはっきりした文字で、「I'm Forgotten」と記されていた。
72
ぶつぶつとつぶやき続ける老婆を街で見かけた。その日以来、時折その老婆を見かけるが、その度に同じ文句をつぶやいている。
73
ここはかつて来たことがある。確かこの風景には見覚えがある。この階段は上ったことがある。この手紙は既に受けとっている。この体験は確かに何度も味わったことがある。君はこんなひどい既視感に襲われることがある。しかしそんな経験もしたことは論理的にはありえない。最近は特にそんな経験をすることが多く、疲れているのかなと思う。また一方で自分がどこか別な場所で同じ経験をしているのではないかというオカルトがかった考え方もしてしまう。
74
酒瓶に映る風景はここではないどこかである。君はそこに夢の中で何度も訪れているが、確かにそこは現実の世界ではない。
75
夜、時折君は天井あたりから、寝ている自分の姿を見下ろすことができる。君は安らかに眠っているように見える。君はその肉体を離れ、自由に空を飛ぶことができる。街を田園を、河を塔を森を抜け、はるか高みで人々を見下ろす青い月にまで足を伸ばせるのではないかと考えてしまう程だ。君はわずらわしい肉体を夜中にだけ捨て去り、自由になれる。しかし、そんな体験をした翌朝は妙に体がだるい。
76
君が着替えをしていると、背中に鋭い痛みが走り、何かと思って合わせ鏡で背中を覗いて見た。すると、おびただしい血液が背中を覆っている。ぎょっとして背中に手をやると明らかにぬるっとした感触がして、指先は赤黒く染まった。医者に行って傷を見てもらうと、十字に切り傷がついているという。手当をしてもらうが、その傷跡は今でも残っている。
77
君が街や建物の中を歩く時に足音が消えることがある。今までこつこつと音を立てていた靴底が、突如音を立てなくなるのだ。それは何かが靴底に張り付いているからだろうか。しかし、いくら靴底を眺めてみても、そんなものは付いていない。そして突如としてまた足音が響くのだ。
78
君が急いでいる時のことだ。ちょうど駅に着いたコーチ馬車に飛び乗ると、不思議なことにいつもごった返している車内は、君以外の客は見あたらなかった。御者は陰気な男で、黒い帽子を目深にかぶり、手綱を妙に堅く握っていた。しかし、馬車は君の降りる駅に近づこうとも速度を落とさず、抗議する君を後目に速度を上げるばかりだ。君がいい加減疲れはてた頃、馬車は止まった。が、その駅は君がその馬車に乗ったその駅だったのだ。馬車は速度を上げ、視界から消えた。が、君がふと時計を見ると、先ほど馬車に乗った時間から、まだほとんど時間が経過していないのだった。
79
窓から街を見おろすと、おかしな人物が目に飛び込んできた。それは三角帽子に白いひげ、灰色のローブをまとった、あたかもおとぎ話に登場する魔法使いだ。だが、この急ぎ歩きの街では、そんな酔狂な人物さえ無視されてしまうらしい。人々はその老人に気づかない様子でその脇を通りすぎていく。と、老人が窓辺の君に気づいたらしい。大振りな木の杖を振ると、そこから光の玉を君めがけて撃った。視界が光に包まれた。次に視力を取り戻すと、その老人は忽然と姿を消していた。
80
友人と一つの部屋で寝る事になった。朝になって友人が言うには、君は寝言を言っていたらしい。しかもだいぶはっきりとした寝言で、友人は面白がって書き留めておいたのだという。その内容を見ると、他愛も無い事で、二人で笑い飛ばして部屋を出た。だが、その日が過ぎつつある午後、君とその友人はしばしば顔を見合わせる事になった。なぜなら、君の寝言の通りに出来事が起きるのである。そのメモはまだ取ってあるが、その不思議な寝言がその夜だけだったのか、それとも君はいつでもそんな寝言を言っているのか、自分では判断できない。
81
ベッドから立ち上がろうとして上半身を起こそうとしたが、あろう事か筋肉に力が入らない。しびれているのとも違う、全く力が入らないのだ。力を入れるタイミングと、力のかけ具合を体が忘れてしまったかのように、君は起き上がる事ができず、困惑する。だが、君が聖書の文句を暗唱しているうちに、その状態を脱することができた。
82
楽しむべく行き付けのパブのドアを開いたとたんに、場内は水を打ったように静まり返った。次の瞬間今度は会話の嵐が君を打った。どうやら君のことを恐ろしげなものと考えているらしい。理由を尋ねてみて分かったのは、君はこのパブではすでに死んだことになっていて、今いる君は幽霊かなにかなのではというのだ。君は一笑に付し、彼らを納得させるべく奮闘努力し、その成果は上がったが、いったい誰がそんな話をばらまいたのか気になるところだ。
83
水売りから買った水が赤く染まっているように見える。いや、これは水ではないワインだ。そう考え、思い切って飲んでみたらやっぱりワインの味がした。ただ、どうやら他の人にとってはただの水らしい。
84
道ばたに何枚もの白い紙切れが落ちている。風に吹かれ君の服に引っかかったそれを手にすると、それは人型に切り抜いてある不思議なものだ。文字が書いてあるので、読むと、君は何とも不思議な気分になる。そこには君の名前が書いてあったのだ。その瞬間ひときわ強く風が吹き、人型の紙切れが君の回りを渦を描くように舞う。
85
不思議な人形劇を見た。その人形劇で上演されていたのはどうやら君の人生らしい。途中で席を立った君は、その劇を最後まで見るべきかそれともそのまま家路につくべきかを悩む羽目になる。
86
雲間から君をめざして降りてくる光がある。それは優しく慈愛に富んだ暖かい光だ。それ以来、夢に天使が現れ、君のことを祝福してくれる。
87
君の歩くいつも一歩後ろを足音がついてきていた。ただし、振り返ると誰もいない。そんな不思議な経験が続いていたのだが、君がある日路地で迷った時に、その足音は君を残してさっさと歩いていってしまった。
88
目が腫れるほど眠り続けてしまった。しかし、時間は進んでいない。君は夢をいくつも見て、確かに疲れもとれている。だが、君がたっぷりと寝た時間は、実際にはほんのわずかな時間にすぎなかったらしい。
89
小さな瓶が君の鞄の中から出てきた。その瓶はガラスを切り出して作ったらしく、いくつもの面から構成される美しいものだ。中には黄色い砂のようなものが入っている。封緘がなされた瓶の口を、君は好奇心から開けてみた。すると、光の粒がその入り口から飛び出し、周囲は光に包まれ、そして光が消えた時にその瓶の中の砂も消えてしまった。
90
夜、不思議な明るさを感じ、目を覚ました君は、不思議な光景を目にすることとなる。目を開けると君の肌が青白く燐光を発しているのだ。その経験はその晩だけにとどまらず、何度か繰り返して経験している。
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タバコの煙をみると、あのときの経験を思い出す。それは君の記憶にはっきりと刻み込まれた不可思議な記憶だ。つまり、君にとってタバコの煙とは怪物の吐く白い息のようなものなのだ。信じられないだろうが、巨大な竜の首が、何もない空間から現れ、君のことを一睨みすると、鼻から白い煙を吐いた。その記憶が、タバコの煙が渦を巻くのを見る度にフラッシュバックするのだ。
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君の机の上においてある写真立ての中に、特別な写真が納められている。君と友人数人が写った写真なのだが、ある朝何気なく見てみると、色鮮やかに着色されている風なのだ。どうしてそんな変色が起きたのかは分からないが、確かにその写真が写された時の記憶そのままだ。
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その坂道は君にとってはとても不思議な場所だ。君がその坂の上に立って街を見おろすと、夕暮れ時のある一瞬だけ、いつもの見慣れた街ではないどこかを見ることができるのだ。そしてその別の世界から何者かが君のことを見つめている、そんな不思議な被視感を感じるのだ。
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その路地は君がいつも通う道筋にぽっかりと口を開けていた。普段歩いているのに気がつかなかったその道に、君は興味を覚え、気づいたときには歩みを進めていた。道は長く両脇に見慣れぬ家々を並べながら曲がりくねって延びている。途中に人影はなく、見れば痩せこけた犬が地面をなめるように頭を垂れて歩いていく。と、その時君の背中を無言で叩く者がいた。それは老婆で、君の視線のだいぶ下に頭があった。彼女は、この路地は選ばれた人しか入ってはいけないことを告げ、目を閉じるようにいった。君は不思議と素直にその忠告に従い、目を閉じた。再び目を開けた時には、確かにあったはずの路地はなく、君は壁の前に一人でたたずむだけだった。
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朝、テーブルの上のワイングラスの中に、乳白色の液体が満たされている。それは夢の中で何者かが用意しておくと予言したものに違いない。それだけでも不思議な話だが、夢の中での話だと君の魂の一部を取り戻したものだという。
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君の机の上に紙が乗っている。その紙には君に対して書かれたのであろう手紙が残されている。その内容は一読信じられないものであった。それは君のことを天使が守ってくれているという内容で、その手紙には君しか知らないはずの君の過去の経験までもが記されていた。しかし、大いなる問題は、君以外に君の部屋に入る手段を持つ人間はいないという点だ。
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天井に大きなシミが浮き出ている。その姿は日増しに蜥蜴のような姿に見えるように広がり、ついに鱗の形まで判別できるようになった。夜、君がふと目を覚ますと、不思議なことにその蜥蜴は天井に見えなかった。君がきょろきょろと首を巡らすと、君のベッドの横の壁に蜥蜴のシミが移動しているではないか! 君はそのまま気を失った。朝、天井にもどこにもそのシミはなくなっていた。
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古道具屋で格安で手に入れたランプの手入れをしていると、何も入っていなかったはずのそれから、巨大なネズミが飛び出してきた。ネズミはしばらく君のことを観察するような素振りを見せると、壁の隅に沿うようにして走り去った。だが、それ以来君の部屋にそのネズミは住み着いているようだが、別段被害はないようだ。
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道ばたにきらりと光るものが落ちている。近づいてみると、それは琥珀色の大振りな宝石だ。君はその輝きに負けてそれをポケット押し込んでしまう。が、それ以来君の身辺におかしなことが起こっている。読んだことのない本が机に積んであったり、使ったはずのない食器がテーブルに出ている、そして気がつかない間に家具の位置がずれている。
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マスターの決定による
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