ブラフィリア
Braphilia――それは呪われた性愛。
ブラフィリアの判断基準は至ってシンプルだ
Q1: 兄または弟が一人だけいる
Q2: その者とセックスしたい
Q3: その者との子どもが欲しい
y, y, nとなるのがブラフィリアである
ブラフィリアは性的指向――つまりは生来から確定する仕様である
兄のフェロモンにやられるとか、弟と同じ空間にいるとくらくらするとかいった表現がよくなされる。ブラフィリアは、兄弟との遺伝子の相性が場違いに最高になる現象と呼ぶこともできる。
ブラフィリアは幼少期にもなれば治療が始まる。といっても完治はできないし、薬もない。自分と、医者と、両親とが協力して、間違いを犯さないように立ち回るだけだ。
私は高校生になった。兄とはニ年と百三十三日ほど離れている。
ここまで尽くしてくれた両親には感謝している。けれど、ブラフィリアは、私は、止まることなどできない。兄は覚醒剤のようなものだ。私はもう、とうに、本当にとうの昔から、兄なしでは生きていけない。兄を私のものにしなくてはならない。そのためには両親さえも騙さなくてはならない――そのことに、私は齢十歳にして気付き、十二歳の頃には問題無い生活パターンを確立できたかのように見せることに成功した。
私は水面下で兄を摂取し続けていた。それだけで足りることを祈りながら。
無論、現実は甘くない。私は、