SFプロトタイピング
デザイナーがやっていた「プロトタイピング」という概念のSF版です。
SFプロトタイピングは、SF的な思考で未来を考え、実際にSF作品を創作して企業のビジネスに活用することです。
創造への投資手段として使えそうって感じかsta.icon
僕の考えでは、小岩井乳業に限らず大企業に共通している課題として、SDGsやESG投資の存在が大きいのではないかと思います。企業はSDGsを本気で考えないといけない時代に来ています。でも、多くの企業は今までSDGsといった「資本至上主義の外側」について考えたことがなく、それが大きな悩みの種になっています。まったく新しいことを考えないといけない状況のなかで、SFプロトタイピングのようなまったく新しい考え方や手法も試してみよう、というのがSFプロトタイピングに向けられる一番のニーズではないかと考えています。
僕のように出来る奴は新しい概念をつくって「これ試そうぜ」とかできる(まあ僕に試す力がなくて人任せなのだが人には通じないので何も出来ないのだが)が、一般人はそうではない
SFをつくる、だと小説を書くという比較的身近な営為なので一般人でも理解しやすい、実践しやすい
手法として使いやすい
今、多くの人がPowerPointで企画書や報告資料を書いていますが、そのうち「SFを書いて見せる」という選択肢が普通になる世界が、バズワードとしてのはやりが終わった後に来ると思います。
面白いやんsta.icon
企画2.0も所詮はエンタメだし普通にアリだと思う!sta.icon*2 企画書に突然フィクションが出て来ても、誰からも怪訝(けげん)な顔をされないこと。SFプロトタイピングが目指すべき直近のゴールはそこなのかもしれない、と最近は考えます。
つくることが目的になりやすい
つくって遊ぶことが目的になりやすい
コンサルの検討資料みたいなもん
そうですね。どちらかといえば表に出さない方がいいと思います。SFプロトタイピングのアウトプットは、作品として完成されているとはいえないものが多い気がするので。というか、そもそも作品として完成されている必要もないと思うので、品質を高める目的や作家性といった権威付けをする目的でSF作家に依頼する必要性もないと思います。
そのあたりの考え方は一般的なコンサルティングと近いです。コンサルは1つのプロジェクトで大量の資料を作るのですが、それは検討のための資料であって、最終的なアウトプットではありません。だからそれらの資料が表に出ることもありません。検討資料というのは思考を深めたり、議論を深めたり、ステークホルダーに情報を共有するといった用途で使う、プロジェクトを前に進めるためのツールでしかありません。SFプロトタイピングもプロトタイピングですから、検討素材の位置づけであって、それ自体が完成品ではありません。だから、これを鑑賞してくださいというのは、ちょっと違うのかなと個人的には思っています。
読むことを目的にするな、書くためにやれって感じかなsta.icon
SF小説の面白さは、読むことで能動的にその世界に入り込み、読者の現実が書き換わることです。でも、SFプロトタイピングで書かれるSF小説ではそれがなかなかできない。SFプロトタイピングのアウトプットは面白味のないものになる可能性が高いんです。SFプロトタイピングの主眼は読むことではなく、書きながら議論することだと思うので、読み手としてどうというより、書き手として、プロジェクトに関わる者としてどうということだと思うのです。
誰が書くか、特にSF作家に任せるかという議論がある
ああ、そうか、「俺たちが書けば良くね」とはならないのか。そもそも小説は誰でも書けることじゃないsta.icon
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僕はSF作家ではないので、コーデイネートするだけで、実際に書くのはSF作家にお願いています。樋口さんはSFプロトタイピングに関わる時、書き手で行くのか、コーディネーターで行くのか。どちらの部分で関わって行くのですか。それとも両方でやって行く?
樋口
ケースバイケースですね。「自分が書きたい」と思ったときや、議論が盛り上がりすぎて「これは自分の脳内にしかない」となったら自分で書きます。
ただし、僕の能力としては、コーディネーターの方が高いと思うので、そちらの方にウエイトを置くことが多くなるかもしれません。というのは、世の中的にはSFとビジネスの両輪でプロジェクトをコーデイネートができる人が少ない印象があるからです。社会的にはそちらの方が求められている気がするので、僕はそちらをやった方がいいと思っています。
SF作家の知り合いは多いので、執筆はSF作家に任せることが多くなると思います。
定義はわかったが……
SF読んだことたぶんないので読んでみないと理解浅そうだなぁsta.icon
コミュニケーションツールとして使えるsta.icon
特にSFを通じて「俺たちの役割はここだな」を認識させる
大橋:SFプロトタイピングの評価は重要ですが、SFプロトタイピングのゴールがイノベーションを起こすことなら、評価できるのは早くても数年先になります。そこも難しいですね。
大澤 SFプロトタイピングで新規事業の創出を目的とした場合、長期的な評価は正直難しいです。ただしSFプロトタイピングは新規イノベーションの創出だけでなく、人材育成の役割も大きいと思います。
出てきたアイデアが事業に使えなくても、いろいろな分野の人たちがお互いに意見を交換すればネットワークができます。そこでお互いを知れるのは大きなメリットでしょう。
従って、SFプロトタイピングは社内の部署間の交流にも向いていると考えています。「弊社は部署間のコミュニケーションは取れています」というのなら問題はありません。でも、企業の規模が大きくなると、他の部署が何をやっているかよく分からない。すると従業員は、企業が向かうべきビジョンや自身の役割に迷ってしまうでしょう。部署をまたいでSFプロトタイピングをすると、ビジョンに対する部署の位置付けや役割などが見えてくるはずです。
数時間くらいでサクッとやってみればいい
内部で「SFプロトタイピングをやってみようか」と数時間でやってみる。それはとても効果が高いはずです。その時、難しく考えずにコミュニケーション手段の一つだと思ってザックリとやるのが大事です。
一般的な社内会議では立場が弱い若い人や少数派の女性は意見が言いにくく、上司の意見を直接否定しづらい状況が多々あります。でも間に物語を挟むと、「物語の問題点」「キャラクターの心情」という形で意見を言いやすくなります。言われた相手も「これはSFだから」と考えれば、異なる意見を受け入れやすくなる。両者にとってSFが触媒になる面があります。
直接言えない人も盛り込みやすい
方法論はまだ整備ちうちう.icon
いまはSFプロトタイピングの方法論がまだ明確に決まっていないので、さまざまな場所で、多彩なやり方が試されている状態です。スペキュラティブデザイン(問題解決ではなく問題提起のためのアートデザイン)やシナリオプランニング(将来起こるかもしれない複数のシナリオを描いた上で、想定した出来事への対処法を導きだす手法)のように、アートやビジネスの分野で類似の試みが行われています。アメリカ以外にもスウェーデンやフランス、中国でも取り組んでいると聞きます。私は22年の夏にドイツから人を招いてSFプロトタイピングのワークショップを行う予定です。
ただ、あれもこれもSFプロトタイピング、というほど単純ではなさそう
SFプロトタイピングが徐々に広がったことで、何でもかんでもSFプロトタイピングと解釈されてしまっている点は少し気になっています。私自身としては、それぞれの活用方法にどういった効果があるのかを研究を通じて示すことで、そうした課題の解決に貢献したいと思っています。
瞬発的じゃない作家でもできる。やり方次第やsta.icon
作家の中でもSFプロトタイピングに向き不向きがあると思います。どのような作家なら向いていると思いますか?
大澤
SFプロトタイピングでは、物語を作る上でのコミュニケーションの側面が重視されます。そのため、まず、コミュニケーションが得意な作家の方には向いています。またディスカッションすることで発想が広がる作家の方にもいいでしょう。
逆に、ディスカッションが負担になるタイプの作家の方もいます。しかし「コミュニケーションが下手だから」「ディスカッションが苦手だから」といってSFプロトタイピングができないわけではありません。例えば短いワークショップでアイデアが出るタイプもいれば、じっくり考えるタイプもいます。後者の場合には、ワークショップの間隔を空けるのもいいですし、コミュニケーションを仲介する人の役割も重要になってくるでしょう。つまりSFプロトタイピングの設計次第だといえます。
著作権の問題もある
共同にするのが良さそうですねぇsta.icon
雇われた作家はハブられがちだが、そうすると成果としてアピールできないのでそこは厳しくいけsta.icon
すると僕も「こういうSFプロトタイピングを行いました」といえなくなってしまう。そこで、映画の製作委員会方式のように僕も関係者として表明できるようにすべきだと常に考えています。ここはシビアにやって行かないと、後々かなり大変なことになると思っています。
小説形式にすることで伝えたいメッセージはなにか、未来はどうあるべきかという視点が構造的に組み込まれてる感じがした
そこでクリエイティビティを発揮することができた
AIがさらにそれをアシストしていた
読みやすさも挙げているsta.icon
中学生でも書けるし読める手段ってことだなsta.icon
すげえなSFP
世界情勢の大きな変化を経たいま、SF的想像力が持つ可能性に、実社会やビジネスの分野でもスポットライトが当たっています。いわゆるSFプロトタイピングは大きな広がりを見せ、SF作家に企業から声がかかることは珍しくありません。SF作家という職業も、「小説を書いて雑誌に発表し、書籍にまとめる 」という仕事だけでなく、さまざまな可能性が広がりつつあります。