「実証部門」の直接的応用
実践理論の開発研究には、互いに関連し合う大きく二つの方法があると考えられる。
一つは、「実証部門」の研究知見を、それが量的/質的研究をベースに、あるいは両者の補完を通して、得られた研究知見を状況相関的な実践理論として一般化する方法である。
・・・(中略)・・・西條は、悲劇(東日本大震災「大川小学校の悲劇」)が起こった根本条件(本質)を構造化し、それを"反転“させることで、同じようなことを二度と起こさないための実践理論(今後の予測と制御につなげる再発防止案)を開発した。
従来、事例研究は、「その知見は本当に一般化できるのか」という批判にさらされてきた。しかしこの問題は、もはや言うまでもないだろうが、先に見た「科学性担保の理路」によって克服することが可能である。繰り返せば、「実証部門」の「科学性」は、「欲望ー関心ー目的相関的」に立ち現れた現象を、共通了解可能な仕方で説明(予測・制御)できるよう、「構造化に至る諸条件」を明示し構造化することで担保される。 このように「構造化」された理論は、科学性が担保されていると同時に、また別の同類性の高い現象において、その現象に対する予測・制御可能性を持っていると言うことがdけいる。したがってわたしは、それがどのような「欲望ー関心ー目的」において同型性の高い現象と言いうるかを明示することができれば、既存の理論を別の現象(現場)に応用することが原理的に不可能ではなくなるのである。(pp.181-182)