第4章 社会構成主義の地平
社会構成主義は、実証研究を批判的には捉えていません。しかしながら、実証研究が事実を明らかにするという考え方には否定的な捉え方をしています。第4章の前半では、過度な実証主義的な見方への疑問を提示し、社会構成主義がどのように考えるのかについて著者は解説しています。
その上で本章の後半では、社会構成主義が何をもたらすのかについて著者は丹念に説明をしています。
社会構成主義は自省と解放を目指す
著者は、社会構成主義は自省と解放を目指すと端的に述べています。私たちが生きている世界ってなんとなくこんな感じだよね、と思っている認識のあり方を自ら反省し、自己のとらわれた認識を解放することが社会構成主義が目指すものというわけです。
自省と解放が目指されるのは、私たちの自己のあり方に対する意識への反省が前提としてあります。では、自己は他者や社会とどこまで別のものなのでしょうか。社会構成主義では、自己の感覚は社会的なものであるとしています。
ある感覚を他者に共感してもらえるためには、表情や言葉といったものが共通のコードとなっているからであり、共通のコードとは社会的な存在に他なりません。新しい言葉が理解できるのは、既存の言葉と緩やかなつながりがあるからであり、過去と断絶した「ljgajsdogijaksda」という言葉を私が発しても他の人は理解できないでしょう。
こうして自己は社会と相互作用する社会の一部であるという考え方が成り立ちます。このように考えると、自己を理解しようとするためには他者を理解することで可能となるという考え方もわかるのではないでしょうか。