ルービックキューブの群
基本操作が生成する群
回転操作の内, もっとも基本的なものとして次の6つがある.
$ \langle U,D,F,B,R,L \rangle
この6つが生成する群をルービックキューブの群 $ \mathcal G と定める.
単位元としては $ \epsilon を追加しておく. これは「何もしない」操作である.
合成
群 $ \mathcal G の演算として合成 $ \ast を定義する.
2つの操作 $ X,Y があるときに $ X \ast Y とは, 「操作 $ X をした後に $ Y をすること」という操作である.
例えば $ U \ast F は $ U したあとに $ F することを意味する. この意味を考えれば当然, 一般には
$ X \ast Y \ne Y \ast X
である. ここで 一般には といったのは, 例外的に $ = になるケースもあるからだ. 例えば $ U \ast D = D \ast U.
でもほとんど大抵の場合には $ \ne である. これを非可換であるという.
次の性質がある.
$ \epsilon \ast X = X \ast \epsilon = X
$ (X \ast Y) \ast Z = X \ast (Y \ast Z)
さて普通はこの $ \ast という記号は省略して,
$ XY と書いて $ X \ast Y を意味する
$ XYZ と書いて $ (X \ast Y) \ast Z を意味する
ちょうど代数学で $ 2x と書けば掛け算 $ 2 \times x を意味するのと同様.
逆元
基本操作は面を 90 度時計回りする操作だった. この逆再生, すなわち 90 度 反時計回り することでちょうど打ち消す操作になる. このように元の操作を打ち消す操作のことを 逆元 という. 操作 $ X \in \mathcal G の逆元を, プライム記号 ($ ') を用いて, $ X' と書いて表す.
$ X \in \mathcal G に対して$ X'とは,
$ X \ast X' = X' \ast X = \epsilon
になるような操作のこと.
組み合わせの操作については次のように逆元が定まる
$ (X \ast Y)' = Y' \ast X'
例えば $ UF という操作の逆元は $ (UF)' = F'U' である. 次のように確かめることができる.
$ (UF) \ast (UF)' = (UF) \ast (F'U') = U (FF')U' = U \epsilon U' = UU' = \epsilon
3つ以上の組み合わせであっても,
$ (XYZ)' = ((XY) \ast Z)' = Z' (XY)' = Z'Y'X'
といったように「各操作の逆元を逆順に並べたもの」になる.
ルービックキューブの性質
ルービックキューブ特有の事情として次の性質がある.
$ U' = U U U
$ UUUU = \epsilon
基本操作であればすべてこれが成り立つ.
べき乗
操作 $ X を $ n 回($ n は自然数)繰り返すことを,
$ X_n = X \ast X \ast \cdots \ast X
と書くことにする. 例えば $ U_3 = U' である.
他の操作
さてここまでは基本操作についてのみ言ったが, 他の操作は全てこれらの組み合わせで成り立つことを見ておこう.
$ U_2 = U \ast U
$ U_2 は U2 などとも書いて, 180 度回転を表す
$ x = RM'L'
キューブ全体をただ持ち替える操作
ルービックキューブの群
というわけで
$ \langle U,F,D,B,R,L \rangle
ここに $ \epsilon, 逆元 ($ X'), 合成 ($ X \ast Y ) という構造を入れることで, ルービックキューブのあらゆる全ての操作が表現できる.
これを ルービックキューブの群 $ \mathcal{G} と呼ぶ.
「ある操作 $ X があって」といったときこれは $ X \in \mathcal{G} を取ってくるという意味.
ところでスライス操作は入れてないのでセンターキューブは動かない動きだけを考えてる.