『超芸術トマソン (ちくま文庫)』
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都市に“トマソン”という幽霊が出る!?街歩きに新しい楽しみを、表現の世界に新しい衝撃を与えた“超芸術トマソン”の全貌が、いまここに明らかにされる。多くの反響を呼んだ話題の本に、その後の「路上観察学」への発展のプロセスと、新発見の珍物件を大幅に増補した決定版。
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課題図書その①。著者のことも知らなかったしタイトルが意味不明で何を題材とした本なのか事前に一切わからなかったけど、読んでみると話題の射程が予想外に広くて良かった。
本書における主要な概念をまとめると以下のようになる。
超芸術トマソンとは
超芸術=不動産に付着して美しく保存されている無用の長物
トマソン=ジャイアンツの四番打席にたち、三振を積み重ねるゲーリー・トマソンのこと。世の中の役に立つ機能がないのに、ジャイアンツが金をかけて保存している。
→世界を二分する「有用なるもの」と「ゴミ」のどちらの陣営にも属さない物件であり、生産性を追求する社会において日々失われていく運命にあるトマソン物件を探し出して紹介していくというのが本書の趣旨。
トマソン物件の類型
純粋階段
空中ドア
無用庇
純粋トンネル
など
参考:Wikipedia「トマソン」の項にのっている純粋トンネル
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/thumb/3/3c/Kaifu-eki03.JPG/480px-Kaifu-eki03.JPG
遺跡とトマソン物件の違い
歴史性の有無
→万里の長城は美しく保存されている無用の長物の典型例であるが、歴史性を帯びたために価値を生んでおり、トマソン物件とは言えない。トマソン物件と非トマソン物件の違いについて考えることは、歴史とは何かという問いにもつながる。
トマソン物件はなぜ生まれるのか
貧乏性のため
日本は地球上で貧乏性が生まれる一等地である。本書でもパリや中国など世界各地のトマソン物件が報告されていて、地域性を反映して国ごとに異なる様相を見せていたが、筆者も述べているとおり、日本のトマソンが最も美しい佇まいをしていると思った。
表現にしろ、本当にすごいものというのは、いつも馬鹿と紙一重の力なのです。(p.116)
トマソンの発見に気が狂った執念を燃やす飯村くんに関する筆者の表現。世界に新しい概念や発見をもたらすのはいつも常軌を逸したガッツをもつ人間である。