工学におけるニーズとシーズ
工学におけるニーズとシーズ
中島尚正編「工学は何をめざすのか 東京大学工学部は考える」東京大学出版会、2000年、第1章 p.25-26
本節の担当は、原島博先生
《もともと工学には、二つの顔があった。その一つは「生活の智慧としての工学」、いま一つは「応用理学としての工学」である。有史以来、技術は生活の智慧として発展してきた。それが応用理学としての顔をもつようになったのが近代科学技術の特徴である。そして、それは多くの技術革新を生み出してきた。》
《「生活の智慧としての工学」は、どちらかといえばニーズ指向の工学である。これに対して「応用理学としての工学」は、シーズ指向の工学であるともいえる。》
工学部のスコープは、この両方の指向の工学におよぶ
ニーズ指向
「地球環境と共生し、文明の持続的発展を可能とする工学」
「社会と人の活動を支え、文化とともに歩む工学」
「世界の共生をめざして、国際的に貢献する工学」
シーズ指向
「技術革新に挑戦し、新たな産業と文明を拓く工学」
「知能・情報技術の革新により、産業と社会の新たな展開をめざす工学」
「知と技を総合化して、工学の新たなパラダイムを構築する工学」
目の前に見えている問題を解決するのがニーズ指向の工学、まだ誰も見たことのないものを作ることによって誰も気づいていなかった大事なことを顕在化してみせる(と、西田先生の言葉をお借りすれば)のがシーズ指向の工学。