再生可能エネルギーによる電力供給最適化モデル
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Optimization Model of Electrical Energy Supply System by Renewable Energy
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図 電気エネルギーの流れ (バッテリは以下では蓄電装置と記述している)
使用する変数・定数 / Variables and Constants
まず,ここで使用する変数や定数を下にまとめる。$ (i)が付いているものは時間帯や季節(月)数の分だけ変数があることを示す。ここでは,1日を$ Nの時間帯に分けるが,季節や月による変化等を考慮しない(変数を増やせば考慮はできる)。よって,$ i=1,2,\cdots,Nである。 $ P_{cb} kW : 契約電力の大きさ
$ P_{cp} kW : 太陽光発電の設備容量(定格発電量) $ P_{cw} kW : 風力発電の設備容量(定格発電量) $ Q_{c} kWh :蓄電装置の設備容量(定格貯蔵量) $ C_{p} 円/kW : 太陽光の単位容量あたり設備コスト
$ C_{w} 円/kW : 風力の単位容量あたり設備コスト
$ C_{q} 円/kWh : 蓄電装置の単位容量あたり設備コスト
$ P_{b}(i) kWh/h : 電力会社から購入する電力量(1時間平均)
$ P_{s}(i) kWh/h : 電力会社に売る電力量(1時間平均)
$ C_{e}(i) 円/kWh : 電力会社の買電料金
$ C_{es}(i) 円/kWh : 電力会社の売電料金
$ P_{d}(i) kWh/h : 電力需要(1時間平均)
$ P_{p}(i) kWh/h : 太陽光で発電した電力量(1時間平均)
$ P_{w}(i) kWh/h : 風力で発電した電力量(1時間平均)
$ P_{i}(i) kWh/h : 蓄電装置に充電された電力量(1時間平均)
$ P_{o}(i) kWh/h : 蓄電装置が放電した電力量(1時間平均)
$ Q(i) kWh : 蓄電装置が蓄えている電力量
$ \kappa_{p}(i) : 太陽光発電の時間帯ごとの出力を定格で割った比(天候や設置条件に依存した定数)
$ \kappa_{w}(i) : 風力発電の時間帯ごとの出力を定格で割った比(天候や設置条件に依存した定数)
$ \alpha : 1時間後の蓄電装置残量比
$ \gamma : 蓄電装置充放電時の最大Cレート
$ \eta : 蓄電装置充放電用コンバータ効率
$ N : 1日の時間帯数
$ T=24/N h : 1時間帯分の時間
$ Y year : 使用年数
$ I_{\max}円 : 初期投資額の上限
ここでは,時間帯により電気料金が異なることを想定している。なお,kWh/hという単位は,1つの時間帯の電力量を$ Tで割って1時間あたりにしたものを意味し,実質的には平均電力と同じである。
制約条件式 / Equations of Constraints
需要と供給のエネルギーバランス / Energy Balance between Demand and Supply
電力の供給量は需要量以上でなくてはならない。左辺を供給,右辺を需要として,次式の関係が得られる。なお,本来は等式であるべきだが,等式より不等式の方が拘束が緩く,問題として解きやすいのであえてこうしている。(以下同様)
$ P_{b}(i) - P_{s}(i) + P_{p}(i) + P_{w}(i) - P_{i}(i) + P_{o}(i) \geq P_{d}(i)
再生可能エネルギー / Renewable Energy Sources
太陽光の発電量に関しては,設備量,則ち定格出力に対して時間帯ごとに日射量や設置条件から予め決められた割合$ \kappa_{p}(i)で発電するものとする。$ \kappa_{p}(i)は1より小さい定数で,昼間は大きく,夜には0となるであろう。このとき,次式の関係が得られる。
$ P_{p}(i) \leq \kappa_{p}(i) P_{cp}\\
風力の発電量に関しても,設備量,則ち定格出力に対して時間帯ごとに風況や設置条件から予め決められた割合$ \kappa_{w}(i)で発電するものとする。$ \kappa_{w}(i)は1より小さい定数である。このとき,次式の関係が得られる。
$ P_{w}(i) \leq \kappa_{w}(i) P_{cw}
蓄電装置 / Energy Storage Device
蓄電装置の貯蔵量は,設備容量を超えてはならないので,次式の関係が成り立つ。
$ Q(i) \leq Q_{c}
蓄電装置の貯蔵量を1日単位で周期的とし,自己放電と充放電効率を考慮すると,入出力との間には次式の関係がある。これは,充放電電力を積分したものが貯蔵量であるという関係を,後退オイラー法で離散化した式に相当する。
$ Q(i) \leq \alpha^{T} Q(i-1)+T\{\eta P_{i}(i) - \frac{1}{\eta} P_{o}(i)\}
ただし,1日単位での周期的な運用を仮定しているため,上式において$ i=1のときは$ Q(0)=Q(N)となる。また,自己放電は十分に緩やかと仮定し,$ \alpha^{T}を$ T時間での残存エネルギーの割合とする。
蓄電装置は急速充放電は不可能であり,入出力エネルギーには容量に比例した大きさの上限がある。$ \gammaを最大のCレートとすると,次式の関係が得られる。充電と放電の最大Cレートは同じとする。
$ P_{i}(i) \leq \gamma Q_{c}
$ P_{o}(i) \leq \gamma Q_{c}
売電量の制約 / Constraints in Selling Electricity
売電量は,再生可能エネルギー発電量を超えないものとする。この制約を付けないと,大量の蓄電装置を購入して,電気料金の安い夜に電気を大量に買って,昼に電力会社に大量の電力を売る,という状況が発生する場合がある。よって,次式の関係が得られる。
$ P_{s}(i) \leq P_{p}(i) + P_{w}(i)
また,契約電力 $ P_{pc} 以上の売買電もできないものとする。これを追加しないと,大量の再生可能エネルギー装置を用意して,それを大量に電力会社に売るような解が出る。
$ P_{b}(i) \leq P_{cb}
$ P_{s}(i) \leq P_{cb}
初期投資額の制約 / Constraints in Initial Investment
最初の手持ちの資金に制限がある場合,それを超えた投資ができないとする。
$ C_{p}P_{cp} + C_{w}P_{cw} + C_{q}Q_{c} \leq I_{\max}
変数そのものの制約 / Non-negative Constraints of All Variables
全変数は非負であるので,次式が成り立つ。
$ (全変数) \geq 0
目的関数 / Objective Function
全設備を$ Y年間使用するとし,設備コスト(太陽光,風力,蓄電装置は$ Y年間の最初に買い取るとした時の購入代金)と$ Y年間の運用コスト($ Y年間の電気料金)の和を最小化する。目的関数は次式の通りとなる。年間の平均コストは $ E / Y で求められる。
$ E=\underbrace{C_{p}P_{cp} + C_{w}P_{cw} + C_{q}Q_{c}}_{設備コスト} + \underbrace{ T \cdot 365 \cdot Y\cdot\sum_{i=1}^{N} \left\{ C_{e}(i) P_{b}(i) - C_{es}(i)P_{s}(i) \right\}}_{運用コスト}
ただし,日本は超低金利のため,資本回収係数は考慮しないものとした。(今と$ Y年後の貨幣価値が金利によって変わることは考慮しない) なお,売電単価が買電単価よりも高い場合,$ P_{b}(i)-P_{s}(i) さえ同じなら $ P_{b}(i), P_{s}(i) の値自体は何でもよいため,買電と売電とを同時にして儲けようとしてしまう(実際は売電の上限に引っかかる)。非負変数を使うとこのような表現になってしまうのだが,買電と売電は同じ配電線によって合計して$ P_{b}(i)-P_{s}(i)分だけなされるため,物理的にはナンセンスである。 このため,$ P_{b}(i), P_{s}(i)はどちらかが 0 であるべきであり,例えば$ P_{b}(i)P_{s}(i)=0の制約を入れるなどしてそれを防いだ方が良い。ただし,この式は非線形であるため,非線形最適化問題となり,途端にシンプレックス法で解けなくなってしまう。 Excelソルバーの利用 / Utilization of the Excel Solver
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2023/06/09