写真部 柊陽翔 ストーリー
タイトル: わたしが撮りたいもの
描きたいもの
未だ空虚なままであることの肯定。
嘘のモチベーションなど持つべきではない。
あらすじ
入部してすぐのころ。
まずは今週末に撮影したものを並べて互いに講評する会がセッティングされる。
テーマは「あなたが撮りたいもの」
陽翔は自分の撮りたいものはなんだろう?と考える。
そこでいろいろな先輩に写真を教えてもらいに行脚する。
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月曜日。
まずは部長に聞きにいく。
誠先輩は「なにも特別なことはなくて。君が撮りたいものを撮ればいいんだよ。たとえばほら僕を撮ってごらん。それでいいんだよ。」とはぐらかされた。撮りたいもの?なんてわからないし。ていうかそれで来てるんだし...。
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誠先輩を撮るが変に畏まってしまって、下手な証明写真みたいになってしまった。
「ははー、そうなるかあ」って言われた。予想できたのかよ。
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火曜日。
つぎは写真のことをいろいろ知ってそうな涼先輩の元へ。
涼先輩にはたくさんの知識を教えてもらった。
「標準レンズは人間の視界に近いからまずはそれで撮ってみると良い。広角レンズは広いからラフに撮りたい時に便利。望遠レンズは寄るからどこか注目したいところがある時とかスポーツに便利。」
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望遠レンズがでかくてかっこよかったのでカメラを借りて撮ってみる。いつもと世界の見え方が違って楽しい。だけれどもいざ仕上がった写真を見てもなんだかピンとこない。
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水曜日。
蓮太郎先輩には写真が視覚芸術においてどのような立ち位置を経てきたかを教えてもらう。あと「陽翔にはこの写真家を参考にしてみるのがいいと思う。まあパッと...これぐらい?」って20人ぐらいのリストを渡された。カバンの下の方でくしゃくしゃになってしまった。読めない。
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中でも「たとえば森山大道はこんなふうにやってた。まずはやってみろよ」
撮ってみる。難しかった。よくわかんない。ブラせばいいのかな?って思って森山大道みたいなブレブレの写真を撮ってみるが、自分ではしっくりこない。蓮太郎先輩にも「しっくりこないならやらなくていいよ」と言われる。ショックー。
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木曜日。
駿くんには、「インスタやるといいよ!いいねきて嬉しいから!」と言われる。
→駿くんおすすめのインスタグラマーの真似して撮ってみる。真似したけれどももとのインスタの方がうまかった気がする。僕が撮っても仕方ないよなあ。
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木曜日。帰り道。
結局4人それぞれに行脚したけれども「あなたが撮りたいもの」なんてあるのかなあ...。
写真部に入った理由も消去法なところはあるし...。他の4人に比べて何もない気がするんだよな...。
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金曜日。今日が提出&講評の日。何もできてない〜。
もし最後までいいのが撮れなかったら、家の犬の写真を提出しよう。かわいいし。
昼休み。やべー何撮ろうって廊下でカメラもったままぽけ〜っとしてたら
駿とすれ違った。そしたら駿がちょっかいをかけてきた。
「やめて〜〜笑」と言いながら、やりかえしてやろうとシャッターを切る。
駿は「あーだめだめ!四限目、体育で髪崩れちゃってるから」と撮られるのを避けようとする。
やりかえしなのでそんなのお構いなしに撮りにいく。
いろいろな写真が撮れた。
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放課後、いざ講評。
といっても部員5人でお互いの写真をあーだこーだ言い合う会。
一応撮ったからと、昼休みに撮影した駿の写真を一枚印刷して提出する。どれもブレブレだったけど。撮ってて楽しかったし。
涼は建物の写真。得意げ。
誠は水曜日に部室で蓮太郎に写真を教えてもらっている陽翔の写真。
蓮太郎は写真を...どうやったんだろう?な写真
駿は海岸線でジャンプしている自撮り写真。昨日放課後に出かけたらしい。
互いに感想を言い合う時間。
涼:楽しそうだと思った。それが伝わっているのはいいね。ぶれてるから、シャッタースピードとか調整すればいいと思った。
誠:撮るのが楽しかったならそれがいいんじゃないかなって思うよ。
駿:いじわる!やめてよ〜〜!!!
蓮太郎:あーいいじゃん。陽翔しか撮れないものが撮れているなって感じがします。5人の中で一番いいと思う。
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勢いまかせで出してしまった写真。
涼先輩からは下手って言われたけど、逆に蓮太郎先輩からは一番いいって褒められた。
自分から見たら他の人の写真の方が絶対に上手いのに、自分の写真を一番いいって言ってくれる人がいるなんて不思議だ。
結局、テーマで与えられた「あなたが撮りたいもの」が何かはわからなかった。
だけれども、「撮るのが楽しい時は楽しい」ということはせめてわかったような気がする。