柳田國男と山人
柳田国男の「山人論」とは、日本の山中には先住民族の末裔が今も生存しており、その先住民の姿を山人や山姥・天狗などと見誤って成立したものだという仮説である」と大塚英志は記している(大塚英志・編『柳田国男 山人論集成』[角川ソフィア文庫、2013年]「あとがき」)。後年の柳田の「常民」論に対しては、「国民国家」的同質性を成り立たせるイデオロギーだという批判もあるが、少なくともこの時点での「山人」論には国内に抱えた「多民族性」を可視化するレトリックとして作用する余地もあったと言えるだろうか。