下書き_ストーリーでわかる ファシリテーター入門――輝く現場をつくろう! by 森時彦
「やり甲斐」と「効力感」が
「これがゴール
ワークショップを成功させられるかどうかは、ファシリテーターが何を、いつ、どう問いかけるかにかかって
商品、アクセス、サービス、顧客体験の四つしかない。そこに 思考スペースを限定することで、集中した議論が
実行可能な具体的な案、それが毎日のように話しあわれるようにならなければダメ
こういう活動は一度行ったら終わりではなく、くり返し行う必要がある。 メンバー一人ひとりが「自分のチーム」という意識を持って自ら考え、与えられた環境に適応していく。そういう習慣を持つきっかけづくりになったかどう
実際には、チームが外からのインプットを必要とする場面がある。そのときに発想を刺激するような話ができると、議論が大きく進むものだ。それがファシリテーターの価値を大きく左右するし、チームのアウトプットにも大きな違いが
インプットの時間は短くとどめて 考える空間を残す。長く詳しくインプットすると、もっと教えてくれとなって「正解」を教えてもらおうとする依存体質を助長
沈黙の中で「思考回路」はつくら
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ただ人が集まってワークショップをやるだけじゃ、こんなものなのかもしれ
そう思いながら簡単にリキャップ——復習を始め
「『一言
「最近の研究では、ポジティブとネガティブの比率が3:1以上である職場が、モチベーションも高いし、業績もいいということがわかってきた」という話を心理学の授業で習ったばかりだった。その3:1という比率を見出した研究者の名前を取ってロサダラインとも呼ばれて
面倒でもいったん書いた方が話しやすく、短時間で意見の共有が
感情的になる前に思いきって割りこむのがファシリテーションの
「締め切りのないものは仕事じゃない」マリコが大学を出てはじめて就職したときの上司の口癖だった。いまつくろうとしている3W(What、 Who、 When)をまとめたアクション
のは「 お互いにやっていることを意識的に見せながら仕事を進めることでチームワークが良くなる」と大学の授業で習ったからだ。 「透明化効果」と教授が話していた。店員のみんなにも、隠れてコソコソせずに、自分がやっていることを堂々と他人に見えるように進めてほしいと思った。 他人の眼を意識するだけで仕事の質は変わる。
「良いアイデアはワークショップの後で出てくることが
気づき
当たり前のこと、地味なこと、それをくり返しながらPDCAを回す。継続。その中でオペレーション力が磨かれていく。それしか方法はない。しかし、はじめは大きなはずみ車のように重く、がっかりするほどゆっくりとしか動かない。 マリコは、スマホのメモを開き、書きとめてあったジェームズ・C・コリンズの『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則』の長い一節を読み返し
それとなく
「数字があるのとないのでは、インパクトが違うと思いません
「なるほど。『特徴』は主語不明だが、『選ばれる理由』なら主語も目的語もはっきりして
「残念なことにこの上下のコミュニケーションができない会社が多いが、最初は、南里君が今回気づいた『主語の違い』のような微妙な差から来ているのが普通だ」 自分たちの使う言葉がどう伝わっているのか、注意深くくり返しチェックする必要がある。チェックのコツは行動を見ることだ。言葉にはごまかされることがあるが、行動にウソは
今日は仕事を減らすワークをします。やる意味があるのか疑問を感じている仕事を遠慮なく書きだしていって
これムダだな」とか、「何のためにやっているのかな?」と思う仕事を考えてきてほしいと連絡してあっ
提案である必要はありません。『これ何のためにやってるのかな?』と疑問を感じることがあれば遠慮なく書きだして
同じものを縦に、違うものは横に並べて
マインドフルネスのテクニックだ。 頭は自分の意志とは関係なく、勝手に思考し判断する。自分の考えとはいえ、それをコントロールすることはできない。否定しようとするとますます考えてしまう。そこで「そういう考えもあるね」と第三者的に眺めるような姿勢を保つ。そうして眺めていると、その考えに囚われることを防ぐことができる。もっといいプロセスのヒントが得られることも
マリコは、店舗スタッフが〈ムダな仕事〉を貼りだしている間に、その横の壁に五つのゾーンをつくっていた。それぞれの上に、 〈10〜 12 時〉〈 12〜 14 時〉〈 14〜 17 時〉〈 17〜 21 時〉〈閉店後〉 と大書した付箋が貼られている。この五つの時間帯にムダな仕事を書きだした付箋を振り分けてみる、というワークがこの場でマリコが思いついたこと
「それじゃ、この中で午前中に移せる仕事はありませんか?」 それまで下を見て死んだように動かなかった眼が、この言葉に反応した。壁に貼られている〈ムダ仕事〉の上を 20 本の視線が縦横に動きはじめる。 マリコは、スマホを取りだし、いまの付箋の位置をいったん写真に撮ると、 「立ち上がって、付箋の位置を変えてください」と行動をうながした。 As Is To Beというファシリテーションの手法の応用だ。まず現状(As Is)を書きだしてみる。その上で、あるべき姿(To Be)を描く。スマホにマリコが残したのは、As Is。これから、それがどう変わっていくのか、その変化を残すため
出尽くしたところで、マリコは新しい模造紙を貼るとその中央に日の丸より大きな丸印を赤いフェルトペンで描いた。 「では…、いま書いてもらった黄色とピンクの付箋の中から、これはどうしても来店客の少ない朝にやりたいと思うものをこの赤丸の中に貼ってください。やらなくていいものは丸の外に、お願いします」 全員がゆっくりと立ち上がって付箋と模造紙が貼られている一角を囲ん
ビジネススクールの授業では、「マイナス面だけということはない。どんなことにも必ずプラス面がある」「もっとほかに見方はないか?」と視点を変えることをくり返しうながされてき
数年前に店長マニュアルが作成され、その中に店長がやるべき数値管理については記述されているという。それを使って店長研修もやったという。 「でも、実際にそれをやっている店長はいないんでしょ?」 久保は黙って頷いた。 興味のない人に教えても実行されない。マリコは、これまでやってきたワークショップの手法を使えば、数字を見ながら店舗運営をすることに興味が持てるようになると確信してい
問題解決とは「差」を解消すること ——このワークショップの手順はほかにも使えるかもしれない……。 マリコは家に帰ってノートを見返しながらニンマリし
① 重要な「差」を見つける ② その「差」の原因を考える。考える手順は、まず構成要素に分解して「差」がどの要素から来ているのかを見る ③ 要素は大きなものから順に並べ、その順に解決策を考える ④ 以上をくり返して、最終的にSKUレベルまで見て対策を
差の原因を「なぜ?」と問うのではなく「どこで?」と問う方が具体的な思考に
コミュニケーションとは伝えたことではなく、伝わったこと。同じ言葉が立場によって違う意味に解釈されることから生まれるコミュニケーションギャップをこれまでに何度も見てきた。社長の言葉や、会社の方針がうまく響かないのもたぶん同じ原因なの
「原因を見つける基本は、要素に分解してみること
ファシリテーションには 状況依存性 があり、かつ 状況固有性 が
そういう意味で、ファシリテーションはスポーツや舞台芸能と似ていて、相手や客の反応、想定外の突発的な事態に臨機応変に対応することがファシリテーターには求められます。それが難しさですが、面白さであり、醍醐味でもあります。 その一方で、スポーツや舞台芸能にルールや筋書きがあるように、ファシリテーションにも、こういう展開で話しあいを進めようというシナリオがあります。 ファシリテーターは、そのシナリオを事前に用意しますが、状況に応じて臨機応変にシナリオを書き換え、柔軟に対応していく ことが、限られた時間の中で、納得感があり、かつ合理性のある話しあいを導くためには不可欠
最近は、身体も思考に影響することが科学的に証明されるようになりました。歩きながら考えることを好む哲学者、立って原稿を書く作家、黒板を愛用する数学者など、私たちは経験的にそのことを知っていますが、軽作業をしながら考える方が脳の血流が活発になることが認められるようになってきたのです。 ファシリテーションは、関係者を集め、話しやすい場を提供し、口だけではなく、立ち上がり、手を動かして描いたり、壁に貼って並べ替えたりと身体を動かしながら話を進めます。休憩も重要視します。それは単に頭を休める時間ではなく、違う見方、新しい発見をする機会として重視しているのです。そういう意味では、 脳と身体、感覚器のすべてを動員した全脳的な知的生産の技術 だと言っていい
ファシリテーターに求められる思考の
技術 ① ゴールを常に意識
問題解決には、細部にまで深く突っこんだ議論が不可欠ですが、そのために大きな流れを見失うと答えが得られません。そうならないように、ファシリテーターは細部の議論を意識しながらも常に全体を俯瞰し、ゴールへの流れをガイドするという役割を果たすの
技術 ② 話しやすい状況を維持する 自己主張が強い、しゃべりたい人が多いアメリカなどでは、ファシリテーターの苦労の一つは、いかにおしゃべりをコントロールしてゴールに向かわせるかですが、日本ではその逆で、いかに口を開いてもらうかが大きな仕事です。 この両方の場合に威力を発揮する便利な方法があります。それは「グランドルール」と「話す前に書く」というやり方
と、グランドルールには同じようなものが多く、次の七つで 90 パーセント程度をカバーすることができるように思います。 ●否定しない(よく聴く) ●全員参加(必ず話す) ●楽しく(笑う) ●忖度しない(遠慮しない、言うべきことを言う) ●ほかの人のアイデアに乗っかる ●プラス思考(未来志向) ●「難しい」「できない」と言わ
いったん書いてもらい、共有してから話を進めるというアプローチでは、ほぼ全員が何かを書いてくれます。集団心理が働くのでしょうか、ほかの人が書いていると、自分も書かなきゃという気持ちになるようです。 それを書きっぱなしにせずに、他の付箋も見て同じか違うかという単純な基準で縦横に整理してもらうことで、ほかの人と話しあい理解が進みます。このように参加者が自分たちで付箋を貼り直すというのは重要な作業で、 これによって脳が活性化し、活発な全員参加をうながせる というのが、この方法の一つ目の効用です。 二つ目の効用は、 いったん全体像が見えるので大局を見失わずにゴールに向かって議論を進めやすくなることです。縦横に並んだ付箋をよく見ると、間違って整理されていることがよくあります。議論に誤解はつきものですからある意味で当然です。 細かい違いや分類にこだわると、大きな流れを見失います。細かな違いを気にするより、共通点を重視し、ゴールに向かって進む というのが、ファシリテーションをするときの私の流儀です。 そして三つ目に、以上のように議論を進めると、参加したという満足感が高まります。納得感があり、コミットメントも高まるの
技術 ③ 時短型アイスブレークとしての「思い
そこで、南里マリコが最初のワークショップで行った、「『良い店』と聞いて、具体的にどこを思いだしますか?」という質問をアイスブレークとしてよく使います。これを「思いだし」アイスブレークと呼んでいます。 自分にとっての「良い店」には、正解とか間違いはありません。また思いだすという行為は、店を良くする方法を考えるよりはるかに簡単です。そういう気軽な話題について話しあうことが、アイスブレークとなって場をなごませる働きをしてくれます。 そして同時に、これが次の「良い店の特徴」「良い店とは何か」という 難しい命題を考える頭の準備運動にもなっています。一石二鳥になるので、「思いだし」ワークは、時短型のアイスブレーク なの
多くの創造的な活動の原点にアナロジー発想があります。「それを自分の場合に当てはめるとどうなるだろう?」という発想
技術 ④ 具体論と抽象論の
具体的な良い店を思いだす。そして、その店の何が自分にそう思わせているのか? と抽象度を上げて考えてみる。その抽象思考で得られた答えを、今度は具体的に自分の店ではどうするのかと具体論に落とす。こういう具体論と抽象論の往復が、思考をうながす上で重要だと考えてい
誰でも考えられる具体論からスタートする。そこから抽象論に展開して思考を飛躍させる。その抽象論から、自分たちの場合にどうするのかという具体案を絞りだす。また抽象化して考えてみる。この 具体思考と抽象思考をくり返すことを意識してワークショップをデザインしてみてください。ファシリテーターとして何を問えばいいか、どの順に問えばいいか、そこではどんなフレームワークが役立ちそうか、そういうことを考える上で大変役に立ち
ワークショップが行き詰まったときにもこの指針に従って考えてみると、何を問えばいいか気づくことが
技術 ⑤ 良いアイデアが出ないときの原因と対処
もしワークショップをしたが、ろくな考えが出てこなかったとしたら、参加者を罵る前に、 考え・話しあうために必要な情報や条件が揃っていなかったのではないかと、まず反省すべきです。 それでも、成果が出ないワークショップになってしまったときには、どうすればいいでしょうか? 私も何度かそういう場面に出会ったことがありますが、その私の結論は、面倒でも、 観察 → 記録 → 分析 → アイデア(仮説) → 検証というプロセスを踏む、ということです。そうすることで参加者が考える材料を手に入れ、考えはじめ
技術 ⑥ 収束の
否定的な発言をせずに、優先順位をつけて絞りこむのに役に立つのが、この物語にくり返し出てきたペイオフ・マトリックスです。私が好きな簡単で強力なツールです。 縦軸に効果の大きさ、横軸にコストや実現可能性の大小をとる。要するに広い意味での費用対効果で分類した四つのゾーンに、アイデアを自分たちの手で分けてもらうのです。立ち上がって手を動かしながら、このペイオフ・マトリックスの貼られた壁に向かって話しあうのは意外と効率的な作業です。このような作業には、 脳を活発に動かす作用 があることも、いろいろな研究からわかっ
私は、チームにやる気があるときにはBを優先します。難しいが、効果は大きいというアイデアです。しかし、弱気になっていて、少しでも早く元気になる結果がほしい場面ではCゾーンに着目するように勧め