証明可能性論理における難民のフォークロア
ここで述べられているが,この話がそもそも誰に由来するのかはわからないらしい.
以下引用.
地球の何処かに定住国を求める難民$ xがいる.
地球の国の数は有限である.
それぞれの国には渡航できる国は決まっているとする.
$ xは次のルールに沿って,母国から移住していく.
R1. 既に訪れた国には二度と戻れない.(非反射性)
R2. $ Aから渡航可能な国$ A'から渡航可能な国$ Bには,$ Aからでも渡航可能.(推移性)
R3. 今いる国から渡航可能な国には,「その国に定住しないこと」を証明したなら必ず移動する.
このとき,$ xは最終的にどうなるのか?
L1. $ xの定住国は必ずどこかに一国だけある.
R1と国の有限性より.
L2. 定住国が母国でない$ Aなら,「$ Aに定住しない」ことを証明しているはず.
R3より.
SnO2WMaN.icon「定住しない」と証明しておいて定住するってどういうことだよとは思うが,一旦受け入れる
L3. 定住国が$ Aで,$ Bが$ Aに渡航可能であるなら,「$ Bに定住しない」ことは証明できない.
もし証明出来たならR3より$ Bに移動しなければならない.ところが$ Aに定住しているのでそれはない.
L4. $ xが$ Aにいずれ渡航するが$ Aが定住国でない場合,$ Aから渡航可能などこかの国が定住国でなければならない.
R2より.
定住国となった場合$ xが幸せになれる国とそうでない国があるとする.$ xは自分が幸せになれることをなんとか証明したいとする.
母国でない$ Aが定住国とする.
H1. $ Aから渡航可能な国が全部幸せになれる国だったとする.
L2より,「$ Aには定住しない」ことは証明しているはず.
L4より,「$ A国から渡航可能などこかの国は定住可能である」ことが証明される.
仮定より,そのような国は全部幸せになれる国であることがわかっている.
結果,「$ xは幸せになれる」ことが証明できる.
H2. $ Aから渡航可能な国に幸せになれない国$ Bがある場合
仮に「$ xは幸せになれる」と証明できたとする.
このとき,「$ Bには定住しない」ということが証明されなければならない.
ところがそれはL3に反する.
なので「$ xは幸せになれる」ことは証明できない.
$ xは自分が証明した通りに動いて定住するとすると,結局母国からは一度も動くことは出来ない.
そのような$ xは一度移動すると延々に移動しなければならないが,国は有限だからそれは出来ない.
ここまでを纏めると
国$ Aを定住国とすれば$ xが幸せになれることを$ A \vDash Hと表す.
$ Aから移動可能な全ての国で幸せになれることは$ A \vDash \Box Hと表せる.
remark:$ A \vDash \Box H$ \iff$ A \rightsquigarrow A'な任意の$ A'で$ A' \vDash H
$ xが$ Aを定住国とすることを$ \beta_Aとする.
とすると
H1は$ \beta_Aかつ$ A \vDash \Box Hならば$ \mathrm{Pr}(H)
H2は$ \beta_Aかつ$ A \vDash \lnot\Box Hならば$ \lnot \mathrm{Pr}(H)
よって$ \Boxと$ \mathrm{Pr}が上手く対応する.