Harropの補題
主張
論理式の有限集合$ \Sigmaとする
正規様相論理$ \mathbf{K}\Sigmaが有限フレーム性を持つなら,$ \mathbf{K}\Sigmaは決定可能. 定義
正規様相論理$ \Lambda
Kripkeフレーム$ \mathcal{F} = \lang W, R \rangに対し$ Wが有限集合なら$ \mathcal{F}を有限フレームという. $ \Lambdaが有限フレームのクラス$ \mathbb{F}に対して有限フレーム性を持つとは, $ \Lambdaが$ \mathbb{F}に対して健全かつ弱完全
すなわち,
$ \mathbb{F} \models \Lambda(健全性)
任意の論理式$ \varphiに対し$ \vdash_\Lambda \varphiなら$ \mathbb{F} \models \varphi
任意の論理式$ \varphiに対し$ \mathbb{F} \models \varphi \implies \vdash_\Lambda \varphi(弱完全性)
ある有限フレームのクラス$ \mathbb{F}が存在し,$ \Lambdaが$ \mathbb{F}に対して有限フレーム性を持つことである.
$ \Lambdaの任意の論理式$ \varphiに対し,$ \vdash_\Lambda \varphiならYesを,$ \not\vdash_\Lambda \varphiならNoを出力する実効的な(有限時間で計算可能な)手続き$ Pが存在することである.
解説
すなわち,正規様相論理が有限公理化可能であるなら,その決定可能性は有限フレーム性に還元される.
証明
1.
「与えられた論理式が$ \Sigmaに含まれるか?」判定手続きは実効的に構成可能.($ \Sigmaが有限だから)
よって「$ \vdash_{\mathbf{K}\Sigma} \varphiか?」を判定する手続き$ Pも実効的に構成可能
2.
「$ \not\vdash_{\mathbf{K}\Sigma} \varphiか?」を判定する手続き$ Qを以下のように構成する.
$ Q_1: 有限フレームをすべて枚挙する手続き
$ Q_2: 有限フレーム$ \mathcal{F}と入力の論理式$ \psiに対し「$ \mathcal{F}で$ \psiが妥当か?($ \mathcal{F} \models \psi?)」を判定する手続き
$ Q_1,Q_2は実効的に存在する.ここから$ Q_3を実効的に構成する.
$ Q_3: $ Q_1で列挙されるフレームに対し$ \bigwedge\Sigmaが妥当になるかを$ Q_2で判定することでフィルターする.
すなわち,$ Q_3は$ \Sigmaを妥当にするフレームをすべて枚挙する.
$ \not\vdash_{\mathbf{K}\Sigma} \varphiであるとき,$ \Sigmaを妥当にするフレーム$ \mathcal{F}で$ \varphiが非妥当になる.
したがって
$ Q: $ Q_3で列挙されるフレームを$ \varphiを$ Q_2に入れていき,Noを出力したときYesを出力するように反転させた手続き
3. あとは,$ P,Qを並列に走らせれば決定可能となる.
系
任意の有限集合$ \Sigma \sube \{\mathsf{T,B,4,D}\}に対し$ \mathbf{K}\Sigmaは有限フレーム性を持つ.
したがって,$ \bf K,KT,S4,S5などはすべて決定可能である.
参考文献