自己エスノグラフィー・個人的語り・再帰性――研究対象としての研究者
著者:Carilyn Ellis, Arthur Bochner
掲載誌:『質的研究ハンドブック 第3巻』, 129-164
入手方法:近大図書館
Current:読了
トリン・T・ミンハ(Trinh, 1989, 1992)、アンザルドゥーア(Anzaldua, 1987)、ベーハー(Behar, 1993, 1996)といった境界横断(boundary-crossing)の観点に立つ文学批評家は、経験の内省に基づいた自叙伝であるものの、けっして無謬でないテクストの存在を擁護しながら、人種・階級・セクシュアリティ・障害・エスニシティといった偶然に満ちた要素が、具体的な個人の生きられた経験へと、どのように編み上げられていくかを明らかにする必要性に耳目を開かせてくれた(p.131)
自己エスノグラフィーという用語を用いる社会科学者の中には、自己の意識に照らして、自ら内省的に、自己という多面的なものを探求している自叙伝に関心のあるものがいる。彼らは、文芸批評・文化批評をとおして、言語・歴史・エスのグラフィックな説明によって媒介される文化記述の存在という者に、気づいている(Deck, 1990 ; Lionnet, 1989 ; Pratt, 1994参照)。たとえばリオネット(Lionnet, 1989)とデック(Deck, 1990)は、2人とも、ハーストン(Hurston, 1942/1991)の回想録を、自己エスノグラフィーと見なして検討している。
2024-04-28 読了