半径数メートルから問いを発する「わたしたちのための民俗学」――『生きづらさの民俗学』書評
掲載媒体:じんぶん堂
少し大げさにいえば、私のための問いを、外から持ち込んで別の誰かについての問いにすり替えてしまうことは、暴力的なものになる可能性すらはらんでいる。特にそれがある種のシリアスな日常であるならばなおさらだ。
言及
もちろん、民俗学の方法の一つであるフィールドワークを選択する場合には、人文系諸学問において表象の権力性をめぐって議論が積み重ねられてきたように、自己や大多数の人びとの経験と、フィールドの人びとの個別の経験とを、単純に同一化することは注意が必要である。(p.39)
塚原は「私たち」と「人びと」を同一化することの危険性を指摘し、「私たち」が想像さえできない「シリアスな日常」を送るマイノリティへのエスのグラフィックなフィールドワークの必要性を指摘する。(p40)