『天にひびき』コミックス
https://gyazo.com/a12d1a6747b22ae14c0231c4774b56d2
著者が(あとがきで)自ら「現在進行形の化物タイトル」と言っているにもかかわらず、わざわざ同ジャンルで連載を始めたからには、のだめにない「なにか」を提供したい、かつ、それができると考えたから。
それはなにか。
著者の作風でもあるのだが、妙に生々しい生活感を描くことが多い。
友人同士で集まっての鍋会だの、風呂場を掃除しろだの、もちろん音楽家だって普通に生活しているのだし、そういう場面も含めて描きたかったことは理解する。
ここは単に、私の好みに合わなかったというだけ。正直な感想は、「イラッとくる」というもの。
しかし、なぜイラッとくるか考えたとき、思い当たることがあった。
私もほんのすこし音楽をかじっているが、音楽に没頭したくても仕事やら生活やらで思うように時間がとれず歯がゆい思いをすることも多い。
(じゃあブログなんてやってないで音楽やれよ、と思われるかもしれないが、このブログは音楽のためになると思ってやっています。それは長くなるのでまたの機会に。)
で、本作から私が受けた「イラッとくる」感情ですが、あらためて見つめ直してみたときに、この歯がゆい思いと似た感覚であることに気づきました。
どういうことかというと。作中で主人公たちは音楽に対して研鑽の日々を続けますが、まだ音楽大学の学生の身であれば思うように進まないのが当然です。 たとえ前述の鍋会のシーンは、「はやく(演奏が)上手くならなくちゃ」と焦る主人公を見かねた友人たちが、リラックスさせるために開催したものです。演奏の腕前なんてそれこそ一朝一夕でうまくなるわけがなく、焦ったところで急激に変わるわけでもない。もちろん集中的に練習をすることは必要であるが、それを継続的に長期的に行わないといけない。それに気づかせる意味が含まれていました。
わたしがイラッとしたのは、(自分の音楽に対してではなく)作中で余計なエピソードを入れていないで本編を進めてほしいという気持ちから来たものですが、ある意味で知らずに主人公たちの気持ちに感情移入させられていたというわけです。もちろん著者が読者にそこまでの思考を辿らせる意図があったかどうかわかりません。しかし、作品の内容というより、読書体験からくる感情移入という点において、なかなか珍しものでしたので、書いておきたかったのです。 華やかなだけやただ聴いていて耳障りがいいだけなんて…
何も考えずに得られるだけの"楽しさ"なんて
何の刺激も高揚もない!!
『天にひびき』第3巻