139-20190820 必要なのは「前向き」でなくて「好奇心」
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なぜ、人は前向きでならなければならないのだろうか。そもそも、前向きって、どっち向き?
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前回書いたように、しばらく精神状態が不安定な状態がしばらく続いたので、このようなちょっと変わったタイトルの本に惹かれました。
この本は、おそらく自己啓発本の中に置かれると思う。
けど、「前向きで、戦略的で、たゆまぬ努力をし、実行力があり、夢があり、人に感謝する」系の自己啓発本を蹴散らす本なのだ。
と前書きで書いてある通り、普通の本ではありません。それどころか12章あるタイトルすべてに「ばかばかしい」がついているので、それこそ「常識」に凝り固まった「心」に対し、別の面から光を当てるような内容になっています。
私が12ある章の中でも特に惹かれたのが、「失敗」と「子育て」に関する項目でした。
「失敗を未然に防ぐなんてばかばかしい」という章では、失敗はピンチではなくチャンスであると説き、脳科学の観点から、失敗が脳に与えるいい影響について述べています。
失敗すれば、その晩、脳が進化するのだ。同じ失敗を繰り返さない脳に。失敗を重ねれば重ねるほど、私たちの脳は、失敗しにくい脳に変わる。失敗に「し損」はない。
ただ、「失敗」に対する捉え方には注意が必要で、失敗を他人のせいにしないこと(でないと脳が認知できない)、あるいは失敗を悔やみすぎないこと(ネガティブ信号が強すぎてうまく進化できない)、といったポイントがある。実はこれは結構難しいような気がする(つまり、つい悔やみすぎてしまう)のですが、これは私がどうというより日本人の失敗に対する「弱さ」に起因するようです。
失敗すると、ついそこで終わり、と思ってしまう。そこで少し好奇心を発揮して「経験が増えた」と捉えるようになると、別の展開が待っているような気がします。
さらに「できのいい子どもなんてばかばかしい」という章では、全方位万能な脳なんて存在しない、という考え方から説き始めます。
脳は、何かが得意なら、何かがお留守になる、そういう装置だからだ。
脳は、大きな方向性を持って生まれてきて、日々の経験から、徐々に方向性が狭まってくる。
そして、誰もが納得する回答を素早く出すのはAIがやるから、そのようなエリート脳は必要ない。AI時代の子育てに必要なのは、何でもコンプリートすることではなく、好奇心を持った「マニア脳」である、と説きます。しかも
好奇心は、育てることはできない。これは、脳が生まれつき、強烈に持っている能力なのだ。育てる必要がないのである。ただし、好奇心を失わせる行為があるのだ。親は、そこだけは気をつけてあげてほしい。
何かを作り出すのではない。もともと持っている何かを、うまく浮かび上がらせてあげること。その元となるのが「好奇心」であるとしたら、何でもかんでも与えるよりは、よく子どもを観察してその子どもが求めるものにフォーカスする、いやその子どもの求める行為に対する「好奇心」を持ち続けることこそポイントなのかもしれません。
この本の序盤に書いてあった冒頭の一節に呼応すると思われる表現が、あとがきにありました。
私には「上」も「前」もなく、ただ好奇心の対象があるだけ。
テストの点数や、給与の額のようなガチガチに比べたりマウンティングするのは、もう、今の時代には合わない。そんなところに目を向けてしんどい思いをするのではなく、自分だけが持つ「好奇心」に目を向ければ、もっとラクに自分自身を捉えることができる。そう筆者は言っているように思いました。