121-20180918 民、信なくば立たず...
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空目した、と思っていたのが、ある意味「あたり」でした。
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この本は、名著 「フラット化する世界」 の同じ著者による続編です。ところが、私はこの本を買ってしばらく読み進めるまでその意識がありませんでした。この意外なネーミングから「(人の)発達障害とか適応障害に関する本か?」と空目したほどです。 今の世界を描いた本でなぜこんな題名か?というのは第1章に書いてあります。このめまぐるしく変化する世界の中では「立ち止まって考える時間」が必要であり、その時間をくれてありがとう、と著者は言っています。
そして今の世界におけるめまぐるしい変化、特にテクノロジー、気候、社会の変化の様子が紹介され、その変化に適応できなくなった国の様子が紹介されます。アフリカ、中東、そしてアメリカ。今のトランプのアメリカは、まさに国としての「適応障害」を示しています。
それでも、この変化に抵抗することはできないし、なんとか変化に適応していくしかない、と筆者は力説し、「トップダウン的な適応」ではなく「ボトムアップ的な適応」が必要だ、と主張します。本書では前者における成功例として、日本の明治維新があげられているのはわかりやすいのですが、その日本が後者を成し遂げられるか、といえばはなはだ心許ない。ただ、アメリカも後者ができているわけではない。
その「ボトムアップ的な適応」を成し遂げるためのキーワードとして、筆者は二つ上げています。一つは「コミュニティ」、もう一つは「信頼」です。これなら、個人レベルでコントロールが可能かもしれません。(人の)適応障害を克服するためにも身近な「コミュニティ」における立ち位置を定めることはとても重要ですし、「信頼」をおける人を少しでも確保する(多数はいらない)ことも大事です。
筆者はもう一つのキーワードである「母なる自然」をお手本にしてこれからの政治の理想をまとめ上げ、具体的な政策群まで書いているのですが、国としての適応障害をお手本(?)にして、人としての適応障害を克服できるかもしれない、という読み方ができるとは思ってもみませんでした(こういう読み方をする人もあまりいないとは思いますが)。
もう一つ、個人的に大事だなと思ったポイントは「失敗を許容する心がまえ」でした。筆者自身が生まれ育ったコミュニティの例が、本書後半でかなり詳しく描かれます。うまくいっている例として描かれるのですが、ただ、理想郷ではないし、当然失敗もする。実際にある政策が失敗に終わった実例が出てきます。だた、それを後ろ向きに責めてばかりでは何も生まれない。そこである人がコメントしたように
「次はなにをするのですか?」
と聞いて、前を向くことが「信頼」を積み上げる第一歩であり、国として、あるいは人としての「適応障害」の克服に向けた第一歩なのでしょう。
この変化の激しい時代に、定着するのに時間がかかる「信頼」を最も重視するというのも困難な話なのですが、それでこそ、「遅刻」をしてでも立ち止まって考えることが必要なのかもしれません。