072-20161101 チェックリスト 今そこにある安全網(1)
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最近、いろいろな場面で「タスク管理」について考えることが増えてきました。そこで、まずこの本を読み返すことから始めてみました。
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原題は"Checklist Manifesto"、チェックリスト宣言。チェックリスト自体を主題にした本はあまりないと思います。2011年に出版されて、私の持っているのは翌年発行の4刷。日本ではあまり目立っていませんが、アメリカでは大ヒットしたそうです。
で、久しぶりに読んでみて、買って読んだ時にはほとんど気づかなかったキーワードが、今回浮かび上がってきました。
人間の記憶力や注意力には限界があるので、見逃しやミスはどうしても起きてしまう。チェックリストはそのような失敗を防いでくれる安全網なのだ。
そう、安全網。
一見ディフェンシブな感じのするこの言葉の意味するところを深く考えたとき、タスクを整理し、チェックリストにまとめる意義の深さに思い至りました。
とはいえ、誰でも思うわけです。チェックリストなんて、いらない。そんなのあたりまえで、言われなくてもわかってる、と。
この本は、本業が外科医である著者が、WHOと協力して「手術を安全に行うためのチェックリスト」を作る話をメインに進行します。苦心してチェックリストを作り、全世界的なテストにおいてこのリストが効果をあげたことが証明されます。ところが、
正直に白状すると、チェックリストなんて意味がないと思っていた。他の人ならともかく、私の手術にそんなものが必要なわけないじゃないかと。
だが、私は間違っていた。(略)つい先週も、五回の手術で三回助けられた。
200ページを超えるこの本のわずか数ページしかない最後の章、その冒頭の一節です。この章の日本語版のタイトルは「助かった!」(原題はThe Save)。実際に「助かった」例がこの一節の後、いくつか出てきます。
安全網って、普段は意識されません。それどころか面倒くさいもの、あるいは邪魔なものと認識されかねないものです。チェックリストのベストセラーを書いた著者自身でさえこうなのです。いかに意識するのが難しいかがわかります。
しかし、チェックリストの有効性は、命がかかる手術の現場で、ビルの建築現場で、飛行機の操縦席で、証明されています(あの「ハドソン川の奇跡」の話がこの本にも登場します)。命がかかるとまでは言わないけれど、普段の生活でも、子育てでも、大いに役立つような気がしています。
この項、続きます。