071-20161018 「拠って立つ処」のためのメインテナンス(3)
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前回の続きです。
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前回、ハマってしまったストレスからの脱却法として、受動的コーピングと、能動的コーピングがある、と申し上げました。今回は、後者。
能動的コーピングは、実際に行動を起こし、原因となっていることや周囲に働きかけることによって問題を解決し、ストレスを減らそうとする。自分の主張や考えをはっきり伝えることも大切な能動的コーピングであるし、人に相談したり専門家に助けを求めることも能動的コーピングの方法である。
能動的コーピングはこの本の最後の章で述べられていますが、私が印象に残ったのは「まず、言葉ありき」。
人が変化するとき、それに先立って変化しようとする意思を語るようになるということだ。言葉が変わると、行動も変わる。依存症とか引きこもりの人たちの治療をしていると、このことがよくわかる。
これは私自身の経験からも大いに賛同できる点です。妻が不調から回復するときには、必ずと言っていいほど「○○したい」という言葉が出てきます。言っている時点では不調が継続しているにも関わらず、です。私はこれまで1年以上ブログをやっている最中にも精神的にきつい時期がいくつかありましたが、「ブログを書きたい」と思ったらその不調の原因が消えたりもしました。
ただ、単に待っているだけでは変化を示す言葉は出てきません。やはり何らかの「きっかけ」が必要です。何かのイベント、気候の変化(暖かくなる)、生活環境の変化(子供が何か新しいことを始めたり、家族が緊急的なサポートをやったり)といったものです。
そのきっかけとの一つして筆者が指摘しているのが「仮定の質問」です。何らかの困難な点がもし消え去ったと仮定して、何がしたいですか? あるいは、何らかの困難な点がもし消え去ったとしたら、何が変わったからだと思いますか? と聞いてみて、そこを糸口にする方法です。
これはストレスからの脱却「前」に行うものとして述べられており、ハマれば非常に効果的かと思いますが、私の経験から申し上げると、脱却「後」に聞いてみるのも効果的なのではないかと思います。体調悪化の時期を何とかやり過ごした後に「何が変わったと思う?」と聞いてみるのです。もちろん回答は一つではなく、いくつか出てくるでしょう。
私も妻も、体調が良くなったり悪くなったりを繰り返すので、その時に自分が話した言葉を一部でも覚えていてくれれば、次の体調悪化時に役に立つかもしれない。回復したら「ああ良かった」で終わるのではない。振り返って、何が起こったかを自分の言葉で言ってみる。メモしたりすればなお効果的かもしれませんが、まず言葉で表現することで、メモをしなくても自分の脳に何らかのインプットが残るような気がします。
ささいな言葉の変化をとらえ、より良い方向に持って行く。そのためにはやはり日頃の感度を高めるメインテナンスが重要なのかもしれません。毎日何かをメモして日記に書きつける、というのも有効でしょう。でも、そう簡単にはできない。無理する必要もない。ただ、どこかにそんなメモを書き付けるスペースを物理的にも精神的にも持っておくだけで、何かが良い方向に変わるような気がします。