2022年採用作品/城下シロソウスキー
なまはげのように一旦見えたけどエクアドルの消防車の切手
〈2022.11 ダ・ヴィンチ2022年12月号「短歌ください」 テーマ:切手〉
もう死んだ人の悪口言うことも誰かに怒られたら嫌なので
人生における色んな局面があって福満しげゆきの絵で
電車の床、それも整備のとき開ける丸い鉄蓋を踏む少女
夜の川を怖いと思う幼さを取り戻しつつ時間が進む
まだ一九九四年っぽい感じがある。うなぎを出前で取るような感じの
〈短歌研究 2022.7月号 短歌研究新人賞 佳作〉
夕立ちはビニールシートを叩きつつ叩きつつ降りリズムあふれる
〈2022.5.21 NHKラジオ第1「文芸選評」佐佐木頼綱 選 テーマ:リズム〉
いちごのようにAirPods Proをもぎとってもぎとってこの世の換気扇
急に坂、遺伝している人格をぶら下げながら坂をのぼった
バーカウンターに座った常連のように堤防から川を見る
八月のスワンボートが耳鳴りのなかに係留されて光った
公園の池に子ガモが泳いでる 公共施設は貼り紙ばかり
同世代の異性を好きになりながら生きていくときの地平線
三人は別れる前に手を振って全員皇太子妃雅子さま
死ぬまでに魔が差すことを避けつづけ避けつづけたい 加害者意識
熱のあるとき見る夢の雰囲気のポルノアニメのひどい演出
銭湯で股間を隠す 隠したら股間を隠すタイプの自分
〈ねむらない樹 vol.8 第四回笹井宏之賞 最終選考候補作〉