2021年採用作品/城下シロソウスキー
24時またぐ列車はグミを食う人が意外といていいにおい
〈2021.11.6 NHKラジオ第1「文芸選評」永井祐選 テーマ:またぐ〉
遠くからこっそり遊びに来たひとをもてなしている鍋が煮え立つ
気持ちいいところはとうに過ぎていてあとは酔い続けるだけのゲーム
体温の低さを指摘されながらいつか忘れる春のまんなか
屈託のなさをだんだん許せなくなってしばらくは海を見る
京王のバス車庫以外ない場所も誰かの地元だし、いる子供
(短歌研究 2021.9月号 短歌研究新人賞 佳作)
郊外のでかいすき家で明けてくる空に起動音がある感じ
〈2021.8 ダ・ヴィンチ2021年9月号「短歌ください」 テーマ:牛丼〉
ストリートビューで見せあう故郷は夏のひかりに満たされていた
〈2021.4 小説野性時代2021年5月号「野性歌壇」テーマ:スマホアプリ〉
新月の夜を歩いた チューハイをチェンジアップの握りで持って
孤独なままで生きていけると思ってるわけじゃないから月を見ている
〈2021.3 小説野性時代2021.4月号「野性歌壇」テーマ:月〉
長いめの散歩をすると満たされる狩猟本能 石鹸を買う
〈2021.2 ねむらない樹vol.6 読者投稿 花山周子選佳作 テーマ「長」〉
モヒカンにしていた時期に知り合った人と今では交流がない
〈2021.1 小説野性時代2月号「野性歌壇」テーマ:髪型〉
作品は見たことがない声優の深夜ラジオを聞く日曜日
〈2021.1.16 NHKラジオ第1「文芸選評」俵万智選 テーマ:声〉